女であること、人と話していてもやること
男性と話していると
「女の人は子どもができたらタバコも酒もスパッとやめる。すごいよ」
と言われた。
だけどわたし、子どもを産んだこともないし婚歴もない。そしてもう子ども
を産むことはできない。ついでにタバコも一切吸わない。お酒は少し。
感嘆しつつ男性がそう何度か繰り返すのを、どう聞いていいかわからない。
「女の人は」という言葉が主語なので、それで私も「女の人」なので、
すごいですねーと完全に他人事として切りはなして聞けない。といって、い
えいえみんなやってることですからとかも言えない訳で、、、
しょうがないから
「わたしは産んだことないので…」と居心地の悪さをちょっと言葉に変換し
て訴える。
そうしたら男性は
「それはほら、人それぞれだから。アメリカの有名人が養子を取ったりする
ような選択肢もあるわけだから」
と気遣うようにいった。
「そうですね」
としかいえなかった。言葉にならない思いが湧いた。
男性に悪気がないのはわかる。
でも
「子どもを持とうとすることはすべての人にとって当然であり善である」前
提で話している、と思った。子どもを持っている男性が、子どもを持
っていない、もう持つこともできない女性であるわたしに「子どもを持とう
とすることはすべての人にとって当然であり善である」前提で話すこと。悪
気なく。
優しい微笑みを浮かべながら、袈裟懸けに切られたような、顔に墨で大きく
バッテン書かれたような、、、
子どもがほしくて持てなかったとか、そもそも持つつもりがなかったとか、
わたしはそのいずれにもはっきりと入っていない。子どもを持つことは何に
も変え難い大きな幸せだろうと思う。子どもができたらタバコも酒もスパッ
とやめる女の人をえらいとは思うけど、まあそうだろうなとも思う。正直に
そういえばよかったのだろうか。言葉にできる余裕はなかったけれど。わた
しの意見は求められていなかっただろうけれど。
「黒人さんは身体能力が高くて本当にすごいよ」と
もし目の前の人が黒人だからという理由だけで言ったとしたら
いいこといってるふうで黒人をぜんぶいっしょくたにしてる。
誰かの価値観とわたしという存在がぶつかってしまった。
以来ずっと胸の奥で軋む音がする。