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「男泣き」を初めて見た夜

先日、「狂おしいほど好きなものに出会ってしまった瞬間」という記事を書いた。その後、過去にいったライブで印象的だったことの記憶が蘇ってきた。記録に留めておきたいと思ったので、書きたいと思う。

記憶が蘇ってきたのは、エレファントカシマシコンサートツアー2014でのできごとだ。ボーカルの宮本さんが耳の病気から復活し、2年3か月ぶりの全国ツアーが始まった。

私は、エレカシのワンマンライブを堪能すべく、東京・愛知・広島・香川・大阪と遠征に向かった。宮本さんの復活を喜ぶファンたち、エレカシも気合が入ったライブが繰り広げられていた。

私が参加した中で、特に印象的だったライブが香川県高松市「高松Olive Hall」でのことだった。「高松Olive Hall」のキャパは、400人ととても狭いライブハウスだった。会場は、ステージが高く、少し後ろにいても見やすかった。

エレカシが出てきた瞬間に、どどーっと後ろからの圧で、前の方に押しつぶされた。私は、運よくボーカルの宮本さんの直線状に立つことができた。
前の人達の頭の間から、ステージが観えた。すでに、東京や愛知など何ステージか観ていたが、少しセットリストが変わるので、今日は何かとワクワクしていた。

※今、昔のセットリストを確認したが、恐ろしいほどの最高なセットリストだ。

「sky is blue」から始まり、「この世は最高」「地元のダンナ」「悲しみの果て」「甘いゆめさえ」etc 次々と繰り広げられる、名曲たち。エレカシらしく、MCもほとんどなく、宮本さん、石くん、トミ、せいちゃん達の白熱した演奏が進み、観客のボルテージも上がっていった。

そして、それは起こった。
確か「桜の花舞い上がる道を」か「俺たちの明日」だったと思う。ボーカルの宮本さんが顔をしかめ、声が震え始めた。さっきまで、宮本さんの熱い歌声がライブハウスに響き渡っていたのに、スピーカーから聴こえてくるのは、必死になにかを押さえようとしている「吐息」と「消えてしまいそうな小さな歌声」だ。宮本さんは、マイクを握りしめ、観客に向かって必死に歌い続けようとしていた。もう片方の拳も握りしめ、苦しそうな表情で目を、ぎゅっと閉じていた。滴る汗なのか、それとも涙なのか頬に流れ落ちていた。そして、完全に声が聴こえなくなった。その時、観客席から歌声が聞こえてきた。宮本さんの代わりに観客が歌いはじめた。宮本さん以外のメンバーも演奏を止めずに、そのまま弾き続ける。宮本さんは、下をむいたまま、腕で涙をぬぐって立っていた。最後まで、観客が歌い歓声が沸き起こった。「みやじー」「ありがとう」「最高」様々な掛け声が聴こえてきた。宮本さんは、メンバーの方を向いて必死に息を整えているようだった。

強烈だった。

宮本さんが観客に向かって「ごめん」と何回もいっていた。その後は、少し鼻声で歌い続け、計25曲を演奏してくれた。恐らくあそこにいた観客は、みんなこのライブのことは、忘れられないと思う。

感極まった姿に、とても圧倒された。そして、この人は天性の「歌い人」なんだと思った。歌声だけでなく、歌う姿も含め、聴く人の心を揺さぶり、熱くさせる。心の中をストレートにぶつけてくるその姿に、観にきている人達は、魅了され、その武骨な姿に、「自分たちも頑張ろう」という気持ちがでてくるのだと思った。

エレファントカシマシ





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