恒常法の世界
noteで書くような内容ではないですが,他に書くところを持っていないのでnoteで書きます.物理心理学測定法の一種である恒常法.これを研究で使う人もいると思います.現在いる研究室にて恒常法の測定経験があればその先輩に聞けばいいのですが,残念ながら先輩に経験者がいない場合自学しなければなりません.そんな時助けになればと思い自分が調べた恒常法測定方法を書きます.
恒常法とは
恒常法とは,刺激閾,弁別閾等の閾値の測定をはじめ,等価値,等比値の測定に用いられます.今回はその中でも弁別閾の測定法について説明します.弁別閾測定法は恒常法に限らず複数あります.よく恒常法以外として紹介されるのは,調整法や極限法です.これらは,本で古典的弁別閾測定法としてよく紹介されています.自分は古典的でないのはよくわからないのですが,これらであれば先行研究が多く結果の比較がたやすいのではないでしょうか.この恒常法,調整法,極限法の中で恒常法は一番信頼のおける測定法だそうです.いわく,恒常法は適応範囲が広く,結果の処理法も洗練されていて理論的にはもっともすぐれた測定法らしいです.
弁別閾とは
閾とは,物理刺激の境目を知覚する刺激量の点のことを言います.例えば,真っ暗なところから少しずつライトを明るくしていったときにはじめてライトがついたと感じるところ.これが閾でありこれを特別に絶対閾値といいます.そして明るさをもう一回だんだん明るくしていったときにさっきより明るいと明るさの違いを知覚できる刺激の最小量を弁別閾といいます.
恒常法の流れ
恒常法は,あるパラメータについて値を変えた物理刺激を何回もランダムに提示して,被験者にはいorいいえ等の2肢選択をさせます.その結果をどっちかに答えた回数を全提示回数で割った反応率(p)に変換して,結果が累積標準正規分布に則ると仮定してZ値に変換して回帰直線を引きます.その回帰直線において Z=0 (p=0.5=反応が50%)の点が弁別閾となります.
予備実験と刺激値の決定
物理刺激は通常4~7個用意します.その刺激値はpが0~1まで出る必要はなく適度に等間隔に設定されていればいいです.逆に0や1が出るとZ値変換ができないので無いほうがうれしいです.自分は予備実験を行いp=0.5の予想を立てそこを中心に刺激変化を2~3個ずつ振ることで全体の刺激量を5~7個にしています.この設定した刺激をランダムな順序で50ないし200回反復提示すると本には書かれていますが,最近の研究でそんなしんどいことをしている人はあまり見ません.僕の知る範囲では20~50回の反復が多く,最低は5回もありました(5回はどうなんだと思いますが).
弁別閾の測定
被験者に,教示をし測定します.その際刺激の変化を教えすぎないようにしてください.測定したら刺激値(S)ごとにpを算出しておきます.エクセル等でプロットしてみて正規分布らしくなっているか確認することで大丈夫かなと見積もれたりします.また,この実験は提示回数がおおく被験者負担が大きいです.適当に休憩を入れながら測定をします.
Z値変換
そもそもZ値とはなんなのかというと,標準正規分布表のzの値です.これは,統計学を履修していればわかると思いますが値の標準化を行った結果がZ値です.子細は本題ではないので避けますが,標準化をすると一般に確率が標準正規分布表からわかります.今回は測定の結果から確率がわかっています.なので,今回は確率からZ値を求めるという逆のアプローチをします.
Z値が算出されたら標準正規分布の累積分布関数の確立欄からz値に変換していくという流れなのですが,これはめんどくさいです.なんで現代ではエクセルのNORM.S.INV(p)という関数を用いてz値に変換していきます.ここでp=1 or 0はエラーとなります.
回帰直線を引く
この後行う処理法は複数存在します.データのとり方で変わってくるのですが,全部話すとめんどくさいのでいちばんそれっぽいのを書いておきます.僕は最小二乗法を用いて回帰直線を引きます.多分理系ならみんな引けると思いますが,各点と直線のとる距離が最小になるように引いた線です.これを,刺激値SとZ値の間で引きます.おすすめはエクセルで近似直線を引くのが楽です.この近似直線システムはなんとグラフ上に出すだけでなく直線の式まで出してくれるので近似直線の切片までわかっちゃいます.この切片がZ=0の点となます.この時の刺激値Sが弁別閾となります.
このZ値と刺激値でプロットしたとき直線になっていないと逆説的に標準正規分布に則った結果になっていないということです.これは刺激値の間隔が間違っていたり,測定回数が少ないと発生します.この正規性の確認には適合度検定を行って正規性があるか確認しろと本には書いてありましたがめんどくさいです.
おわりに
noteに書くようなことではないですが,恒常法に関する文献が少なすぎて困っている人向けに書きました.困っている学生のみなみなよ.頑張って恒常法を理解して卒業するのだ.
また,有識者が見て違っていたらコメントください.僕も去年独学で学んだだけなので.