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今年の春、お隣さんが亡くなって、はじめてこの集落の葬儀の手伝いをした。
山に囲まれた寺の葬儀には、会場にあふれんばかりの人たち。
春先の新緑の鳥や虫が飛びかう中きこえるお経の声。

その夜くらいから、床につくと寝息のような音が空から聞こえた。
ひゅーほー ひゅーほー この辺り一体がその音に包まれる。
亡くなったお隣さんが空の上で寝息を立てているのかな。
そう思いながら私は眠りについた。

一週間ほどで、いつの間にかその寝息は聞こえなくなっていた。

空から聞こえるその寝息は、どこか心地よく、深く眠りに誘われて、天に身体が浮いていくよう。

その寝息の正体はトラツグミという鳥の声だった。

猿の顔、狸の胴体、前後の肢は虎、尻尾は蛇の妖怪、
鵺(ぬえ)はトラツグミに似た不気味な声で鳴くそうだ。

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