フジモトマサル「終電車ならとっくに行ってしまった」
村上春樹さんのエッセイ集などのイラストを担当されていた方のエッセイ&ショート・ショート・マンガ集です。
著者は2015年に46歳という若さで病没しています。これから、というところだったのにものすごく残念です。
さて、作品の印象です。
キュートで素朴でエキセントリックなマンガに通ずるエッセイが読書をどこかありそうな異次元世界に招いてくれます。夢幻的でフワフワしていて暖かく、そのくせなんだかもの悲しくて寂しい異次元世界です。
マンガはエッセイに対する「返歌」的な内容。
主人公はナマケモノ(この作者による登場人物はどの作品も基本的に動物)。そのナマケモノの彼が奇妙な出来事に遭遇する2ページ建てのものです。
オチがあったりなかったり、ポストモダン的だったりします。
空の向こう側に青天井で仕切られた世界がある、という設定が何度か出てきます。
月はそのこに穿たれた穴だったり、そして地面の穴から青天井を抜けたりします。とても面白いのです。
おそらく、この異次元世界に僕は住みたいのだと思います。
いや、帰りたいのだと思います。
そのうち、夜中にふと目が覚めて床板を剥がすことになるかもしれません。
【追記】
猫の絵が可愛かったりします。