キイロの杯、交わし合う。in バリ島
気持ちの良い朝。
インターコンチネンタルの朝食バイキングでクロワッサンとワッフルばかり食べた。クロワッサンは小ぶりで、メロンパンみたいな色をしていた。
バリの街は朝から車通りが、いや、バイク通りが多い。小学生の2人乗りのバイクが私たちの車を追い越していく。この島では、4人乗りまでアリらしい。バイクはHONDAばかりだった。こんにちは、made in Japan。
水中。
息ができなくなった。
耳が痛い。めちゃくちゃ痛い。
自分の力だけではどうにもできない。
怖くて苦しくてとても深い。
上に上がりなさいとインストラクターの先生が促してくれたけど、水面に上がるまでの3メートルで力尽きるかと思った。
なんだよ、ダイビングってこんなに辛いのかよ。聞いてない、全然聞いてない。
おまけに水面に上がっても、
波に揺られて気持ちが悪い。
背中に背負った酸素ボンベと、ウエストにつけた重りのせいで自由に動くこともできない。
かと言って水中に潜っても、
息ができなくてつらい。
ゴーグルに海水が入ってパニックになるし、耳が痛くなるのが怖いからエンドレス耳抜き。右手で鼻を抑えて、左手で友達の手を握る。
正直海の中の魚とか海藻とかどうでも良かった。早く酸素ください。だってこの光景、何度も見たことあるよ。テレビで、雑誌で、インターネットで。酸素ボンベも重りも耳抜きもしないでもっと綺麗に見れたよ。なんで。
永遠とも思えるような時間を経て水面まで上がった。波の揺れが気持ち悪い。無理だ。私は残りの全エネルギーを振り絞って光の速さでフェリーの上まで上がった、つもりだったけどのろのろしてたと思う。
ふう、開放されたと酸素ボンベを降ろし、重りをはず、した瞬間、う、ゔぇーーーーーーきぼぢわるいぃぃぃーーゔーあーーーーやばい、あーなんだ、なんだこれ、ああ、いやーーーむりーー
胃から喉にかけて、
すごい勢いで何かが溢れてきた。
フェリーから海に向かって顔を突き出そうとする、、、あ、、こっち側はダメだ、インストラクターと友だちの頭上に向かってアレを飛ばすことになる。手で口元を抑える。うわあ、温かい。はやくはやく。反対側まで、はやく。
あ、きれい。
私の口から透けるような黄色の液体が出ていった。そのままそれはゼリーみたいな海の上に浮いて、波に流されてーーー
「うわーーーーーっっっ」
「きったねぇ!!!!!!」
「なんか、流れてきてんだけどっ!!!」
切羽詰まった状況下での私の渾身の気遣いも虚しく、私のキイロは2人の元へゆらゆら、ゆらゆら向かっていった。
友だちはともかくとしても
(していいのかな)
出会って数時間のインストラクターの先生が私のキイロを被ってるなんて、
「あははははははは!!!!!」
「あっははは!ご、ごめんなさい、、ふふふ、はは、あははは!」
とくにインストラクターの先生が一生懸命にキイロを避けていた。でもまだらな私のキイロを全て綺麗には避けきれなかったようだ。
陸に戻ったあと、
私も友だちの水中キイロを被っていたことを知った。まじか。水中で出してたんすね。
「お互い(インストラクターの先生は除く)のキイロいゲロを被りあった私たちは特別な絆で結ばれましたね」
と言ったらインストラクターは
「ふざけんな!」
って言って笑ってた。
明日の朝食バイキングでもクロワッサンとワッフル食べなきゃ、そう思ったよ。