イヴ・サンローラン
作・演:荻田浩一
どこからどこまでも、オギ―色だった。
ミュージカル(芝居)というか、ショーだと思った。”イヴ・サンローラン”というショー。
イヴは受動的存在で、イヴの恋人のピエールが主軸となって、イヴに関わった人たち、同時代に生きた人たちが、彼のことを語る。彼らが能動的。
公式HPのイントロダクションに、
「これはイヴのパートナー、ピエール・ペルジェが垣間見たイヴの人生のタペストリーであり、「能」のごとく死者が語る前世の物語である。
そして何よりも、美に囚われた「極度に神経質な、痛ましいくも素晴らしい一族」の叙事詩なのである。」
とあり、「能」で「叙事詩」かぁ、耽美というか退廃的というか、この次元には無い物というか。
この記述自身は、後日見たのだけど(笑)、確かに、舞台空間上にそういう雰囲気が。
人にもよると思うけど、お芝居を観ているときの視点は、登場人物の誰かの視点か、もしくは誰でもないけど、その場にいる、同時代を生きているような感覚で観ていると思うのだけど、これはかなり俯瞰して観ているような感覚。
登場人物が皆、「死後の世界」から前世のことを語っているから、その中を覗いているような。時間の共有性がない雰囲気。だからこそ、芝居よりもショーに近いような感覚。
観に行く前に、他の劇場で近くに座っていた人が、幕間にこのミュージカルのことを話していて、「全く理解できない面白くない、あと2回も観なきゃいけないのが苦痛」と言っていたのが聞こえて、「えっ・・・」と思い臨んだのだけど、確かに主役であるイヴ自身が、自主的に(?)この作品に参加していないから、「お芝居」として捉えると、何をどう見ていけばいいのか途方に暮れてしまう部分があるなぁと思った。それぞれの人が生きていたり、死んでしまったあと、残っている人たちの姿を見て話していたり、誰かの思い出の中だったり、それが順を追っているようでもあり、時間が行きつ戻りつしているようでもあり、どこか靄に包まれている感じで。
ただそれが、パリの雰囲気とかマラケシュの雰囲気とか(私にとって。よりもオギ―の過去作品の、かつて見た作品のそれぞれのイメージ)に則していたから、私にとっては面白かったなぁ。
ショウというか、絵画のような、というか。
そういえば、イヴとピエールも膨大な数の絵画や美術品をコレクションしていたとか。ある意味、そんなイメージの芝居でもあったかな。