スプーンは盾足り得るのか?
最推し、濱田めぐみ嬢の登板があるので、『VOICARION XIX スプーンの盾』に行ってきました。
朗読劇なので、当初はスルーするつもりだったのだけど、ビリーを夏に1回観たきりで、めぐちゃん久し振りだったので行くことに。
日替わり・公演替わりのキャストで、主に声優さんのラインナップだったので、内容的には軟派な本なのかなぁと、タイトルも「スプーンの楯」???
ってよくわかんないし、って思っていたのですが。(まったく公式サイトとか見なかったもので)
当日、開演前アナウンスで大まかなあらすじ等々が流れ、あれ?これって結構硬派なのか?と思ったら、ものすごく硬派でしたw
時は、フランス革命後、ナポレオンがエジプト遠征から帰国した時分。
バイイの一料理人だった、アントナン・カレームが、ナポレオンの側近で外交担当であったタレーランに乞われ、食卓外交の料理を請け負う。
食には一切興味がなく、戦争にのみ興味を持つナポレオンを嫌っていたカレームだったが、ナポレオンと言葉を交わすうちに意気投合する。
「お客様が、料理を食べて幸せになれるように」のタレーランの言葉を信じていたカレームだが、彼らの目論見は食によってナポレオンの味方につけ、軍事クーデターを成功させることだった。
ただ純粋に、喜ばれる料理を目指していたカレームにとって、ナポレオンらの行動は失望を禁じえず、またタレーランもナポレオンが皇帝に就く頃には袂を別っていた。
その後、ナポレオンがロシア遠征に失敗し、フランスの割譲についてウィーン会議が開かれることとなった。プロイセンをはじめ列強に祖国を分断されることを恐れたタレーランは、ここでも食卓外交を試み、その時に厨房に居たのは、カレームだった。
とりあえず、声優さんってすごいなぁって思った(平坦な感想)。
役で言うと、マリー以外は全員男性なのだけど、役者は男1女3。ナポレオン:緒方恵美さん、タレーラン:朴璐美さんって女性2名。
ナポレオンとタレーランって、なんていうか重めな役柄なんだけど、お二人とも全く女性を感じさせない、緒方さんはむしろ男性ですか?て。
緒方さんと言えば、碇シンジなんだけど、もう少しお声高いイメージ(少年)だったんだけど、あの、見事におっさん(言い方!)
ガチマジもう素敵。
朴璐美さんのタレーラン、終盤のナポレオンと袂を別つ場面の、悲痛な意志の通った叫びが秀逸すぎて、鳥肌立った。
そこに梶くんカレームのただひたすらに純粋でひたむきな声。
唯一、創作キャラのマリー役のめぐちゃん。盲目の料理人(?)で、カレームのスーシェフ的役割なのだけど、どこか達観というか狂言回し的な役どころでもあり、感情の起伏の激しい3人の男性の中で唯一安定した精神を持っている人。幕開き、マリーのセリフから始まるのだけど、発声がいつもの声と違って、「かっわいい・・・❤」でした。そういう役。
ちょっとそれぞれの人物について、ググったところ(Wikipedia)、アントナン・カレーム、正式名は ”マリー=アントワーヌ(アントナン)・カレーム(Marie-Antoine(Antonin)Carême” とあり、めぐちゃんの”マリー”という役どころは、カレーム自身の影というか良心というかの具現として、作ったのかなぁ?と思った。
料理を外交の手段に用い、人心を掌握して思いのままに操ろうとしたタレーラン、カレームが考案した保存食を手にし、補給路を持たぬ遠征を強いたナポレオン、そんな二人を「あなた方は鉄砲や剣だけでなく、なんでも戦争の道具にしてしまう。料理さえも!」と言ってなじるカレーム。そんな彼は、美味しい料理こそが、人の心を解かし争いごとを回避できる唯一の方法、スプーンこそが国を守る盾になると信じていた。
カレームの信念、お腹を満たすことが「盾」なのならば、常に戦争を欲していたナポレオンは、飢えを満たせなかったのだなと思い、タレーランは誰かを皇帝にすることで自身の飢えを満たしていたのか?と思った。
これは、飢えを満たすための物語なのか、という理解。
朗読劇なので、ある意味動きは制約された中で、声以外の表現と言えば表情のみ。ただその表情の変化以上の声での演技、のすごさ、をまざまざと。
情景・情感、お芝居以上の芝居という感じ。
それにプラスしての音楽が素晴らしかった。
アレなのよ、当日劇場に行って「プレミア朗読音楽劇」って、「音楽」ってついているのに気づくという。
ピアノ・ヴァイオリン・チェロ・フルート・パーカッションの5人で奏でる音楽。ミュージカルではないので、音楽が主役ではないのだけど、BGMというだけでない存在感。
2025年舞台初めによいものを観ました。
終盤のナポレオンとタレーランの応酬がものすごく鬼気迫ってよろしかったので、関俊彦さんのタレーラン観たいよぉぉぉと思いました。