ジャックとの出会い
20歳をビールに溺れて過ごした私は、21歳の誕生日には初めて入る酒屋で、色とりどりに煌めく酒瓶に囲まれてうっとりしていた。
お酒を飲まなくちゃ、と思った。
ビールとか、大学の友達が飲んでる酎ハイとかそんなのじゃなくて、ちゃんとしたお酒をしっかり飲むんだ、と、謎の決意で満たされていた。
最初にウィスキーを買った私は、母に見つからないように足早に部屋に駆け込んで、夜中になってこっそりと飲んでみた。
風情なんてなんにも知らない。グラスに注いだ琥珀色の液体をそのまま飲んだ私は、びっくりして目を白黒させていたと思う。
水で薄めたり、氷を入れてみたり、夜中に自分の部屋と台所をそろりそろりと行き来しながら、どれくらいの日数をかけたのか、やっとボトルが空になった。
初めての達成感。
ちょっと大人になった気分。
その後は、ジン、ウォッカ、ラム、テキーラ、日本酒、焼酎、と、大学生が買える程度のお酒を、行くたびに一本ずつ買って帰った。
どうにかしてボトルを空ける、という謎のルールを自分に課していたので、この味は苦手だから途中でやめて残す、なんてことは許されなかった。
一口目はいつだって鮮烈で、でもボトルの半分くらいになるとだんだん慣れてくるし、飲み終わる頃にはもうマブダチみたいな感覚。味を知っていくたびに、他のお酒との違いもしっかり分かるようになった。そんなふうに、長い時間をかけて、すべてのボトルを一滴も残さずに胃と舌に染み込ませていった。
暇だったのかな。
そして生真面目でもあった。
どれほどの夜を費やしたのか、一通り飲み終えた私は、これまでに飲み干した様々なお酒の味を思い出していた。
今ここで、この先死ぬまで付き合っていくパートナーを選ばなくちゃいけない、という謎の儀式だった。
あの日繋いだ手は今もずっと離さずにいる。
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