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著書『#話し方の戦略』の「はじめに」を全文公開します。

はじめに

話す才能がある人を、ずっと羨んできました。

どこにいっても明るく、脚光を浴びている人は、話がうまい人でした。
私はその存在とは対をなすように、話にきらめく器用さがない、真面目で平凡な人間でした。

面接で質問の回答が浮かばずに止まってしまったこと、角の立つ言葉でスピーチをして嫌われてしまったこと、会話の中で意見の対立を恐れ、発言を諦めてしまったこと。
自らの話す能力の低さに辟易し続けてきました。

ただまっとうに生きているだけでは得られない能力。
かつての私にとって「話す才能」はほしくてたまらないものでした。

年月が経った今、私はおもにビジネスパーソンを対象に、AI診断とトレーナーによる指導を組み合わせた「話し方トレーニング」サービスを提供するスタートアップ、株式会社カエカを経営しています。自分自身もスピーチライター・トレーナーとして経営者や政治家をクライアントに持ち、これまで5000人以上の話し方を改善してきました。

15歳から日本語のスピーチ競技・弁論を始め、全国弁論大会にて3度優勝、内閣総理大臣賞を受賞しています。新卒で入社したDeNAでは同社初となるスピーチライター・トレーナープロジェクトを立ち上げ、社長をはじめ役員や人事部・営業部などのメンバーに対して話し方を指導し、現在の会社の創業に至っています。

もともと話す才能に無縁であり、平凡な私が、自分の話し方を強みにして結果を出せただけでなく、周囲の人の話し方を改善できる仕組みまで構築できた理由。

それは、「話し方の戦略」を思考し、実践してきたからです。

はじめまして。株式会社カエカの代表を務める千葉佳織と申します。数多の選択肢から本書を手に取っていただき、ありがとうございます。

この本では、私と話し方トレーニングサービスを営むカエカが学び培ってきた経験、知見、実績をもとに、あなたの人生を劇的に変える話し方の戦略について解説します。

「話し方」という人の温かみのある営みに、「戦略」という言葉が加えられると、違和感を抱く人もいるかもしれません。

戦略という言葉からはしばしば、嘘をつく、人を心理的に追い込む、思いのままに相手を動かそうとする、といった冷たい印象が想像されるものです。
しかし、本書は決してそうした類たぐいのものではありません。

「話し方の戦略を立てる」とは、自分が伝えたいことを聞き手に届けるために、話すときの目的を定め、言葉・音声・動作を考え抜くことを指します
これは、あなた自身のキャリアアップや挑戦の道すがらにおいて「話すこと」の効果を最大化させるために、まわりを巻き込み味方につけて一緒に未来へと進んでいくために、そして、より良い世界を実現するために、とても重要なマインドセットです。

戦略とは決して冷たいものではなく、人生に熱意と活力を与えるものなのです。

話し方に「才能」なんていらない

私が話し方の戦略を初めて意識したのは、高校1年生の頃。「弁論」と出合ったのがきっかけでした。

弁論とは日本語のスピーチ競技です。

ひとりで演台に立ち、7分間にわたって自分の主張を述べます。原稿は自分で作成し、話し方の工夫もして、暗記して人前で発表します。

よく「ディベート」と混同されがちなのですが、与えられたテーマに対して賛否の立場に分かれて競い合うディベートとは異なります。聴衆に向けて一方向で「スピーチ」をし続けるのが特徴です。

人前で緊張せず、堂々と話す先輩たちのかっこいい姿に憧れて弁論部に入部したものの、特段伝えたい主張もなければ、自分の話し方にも自信がなかった私にとって、そこは衝撃的な環境でした。

競技経験や年次に関係なく、その人の話がわかりやすいか、心に残るか、それはなぜなのか、ダメならなぜダメなのか改善方法を考える、ということが活発に議論されていたのです。

基礎的な発声練習から始まり、原稿を作成し、先輩からも後輩からもダメ出しを受けては、宿題そっちのけで原稿を推敲する。

20回以上書き直し、納得できるものが仕上がってからは、その全1600文字を暗記、誰にでも情熱が伝わり、明瞭に聞こえる話し方を毎日3時間練習し続け、ようやく大会に出場する……ということの繰り返し。

そんな環境で鍛え上げられた私は、結果として、全国弁論大会での3度の優勝と、内閣総理大臣賞の受賞という成果を挙げることができました。

弁論でスピーチ競技を経験し、私は、本当に伝えたいことを相手の心に響かせたり、人を巻き込んだりするためには、戦略を持って言葉を紡いでいかなければならないと実感しました。

そして、話す力とは先天的な能力ではなく、スポーツや音楽と同様、やり方を把握し、軌道修正していくことで上達するのだと、〝原体験〟として明確に学びました。

もし私に話す才能があったなら、なにも考えず、なにも努力せずとも、思うがままに話すだけで望み通りの結果を得られたのでしょう。

そんなことは一切ありませんでした。

そして、私と同じように、ほとんどの人には話す才能はないのだと思います。

だからこそ、「戦略を持って話す」ということをマインドセットとして持つことができれば、あなたの話し方が変わり、人生を切り拓くことができるのです。

「話し方の戦略」はあらゆるシーンで活用できる
 
本書でお届けする内容は以下の通りです。

序章では、話し方の戦略にはどのような特長があるのか、「体系化」というキーワードを軸に解説します。理解の助けとなるよう、私がスピーチライター・トレーナーとして携わった近年の事例も合わせてご紹介しましょう。

実践的なマインドセットやメソッドの解説は第1部からになりますが、序章をお読みいただくと、前提を共有したうえでより深い学びを得てもらえることと思います。
その先は、大きく3部で構成されています。

第1部では、戦略を立てるうえでの「3つの原則」について解説します。すべての話し方に通ずる礎となる考え方をお伝えします。
第2部では、「言葉」の戦略を取り上げます。原則を踏まえたうえで、どんな表現を選ぶべきか、どんな順番で話すか、どんな内容を盛り込むかといった具体的な方法について触れていきます。
第3部は、「音声・動作」の戦略についてです。どのように気持ちを乗せて話すか、わかりやすく明瞭に表現するか、体をどう動かして言葉を際立たせるかといった、音声と動作の要素を一つひとつ分解し、丁寧に解説します。

戦略は良例を真似ることでも養われます。本書では、著名な経営者、政治家、芸能人、アスリートなどの話し方の実例を豊富に盛り込み、分析しています。

それらはスピーチや演説からの引用が多くを占めていますが、ここから学ぶ話し方の戦略は、日常生活におけるさまざまな場面への活用を前提としています。

ビジネスにおける取引先との商談やプレゼン、上司・部下との〝報連相〟、会議、就職や転職の面接、結婚式の祝辞まで、「話す」という行為を通じてなにかを成し遂げようとするシーンのすべてにおいて役立つものです。

状況が変われど、生身ひとつで語るという「話し方」の根本には変わりはありません

本書は、かつての私のように話すことに苦手意識があったり、過去に話し方の不備を指摘されて悔しい思いをしてきた人にこそ、ぜひ読んでいただきたいと思います。

また、話すことに自信がある人にも有用なものだと確信しています。話し方をさらなる強みへと押し上げられるはずです。

これまで自己流でやってきて理論的な理解を深めたい人や、もっとプロフェッショナルになりたいと望む人には、自分の話し方を省みる自己分析の役割も果たせるでしょう。

「話し方に戦略を立てる」という考え方やノウハウを知っていただくことができれば、人生にスポットライトをあてることができます
「話し方」というひとつのテーマを人生をかけて追い続けているひとりの人間として、余すところなく、心を込めてお届けします。

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ここまで読んでいただき、少しでも興味を持った方は、よければ書籍をお手に取りください。

書籍の出版を記念して、出版記念イベントの開催も決まっております。皆さんと直接お会いできる機会となりますので、足を運んでいただけますと幸いです。

【オフライン・オンラインハイブリッドイベント】5/31(金)19:00〜『話し方の戦略』を身につける講座1DAY

こちらのイベントでは、スピーチの実演を予定しています。スピーチを紐解きながら、そこに秘められた話し方の戦略をご紹介していきます。
天狼院書店ならではの会場を生かしたお話が出来ればと思いますので、奮ってご参加ください。
会場:天狼院書店(東京都渋谷区神宮前6丁目20−10 RAYARD MIYASHITA PARK South3F)
【こんな方におすすめ】
千葉佳織の本気スピーチに興味がある方
・ワークショップを通じて話し方の戦略の理解を深めたい方。


【オフラインイベント】6/3 (月)19:00~『話し方の戦略』(プレジデント社) 刊行記念!千葉佳織×三浦崇宏トークイベント
“GO三浦さん、話し方トレーニングに投資しませんか?”
「話し方の戦略」を実行する公開プレゼン!

青山ブックセンターの大教室を使って、三浦崇宏さんと対談イベントを実施します。広告業のみならずVC事業にも携わる三浦さんに向けて、千葉さんが自らの事業への投資を呼びかける公開プレゼンを敢行します!

プレゼン後、そのなかに含まれた「話し方の戦略」を"ネタばらし"しながら、今日から真似できる話し方のコツを解説。『言語化力』などの著書を持つ三浦さんが実践しているコミュニケーション術との共通点も教えていただきます。
会場:青山ブックセンター(東京都渋谷区神宮前5丁目53−67 コスモス青山地下 2階)
【こんな方におすすめ】
・いま求められる「話す力」とはどんなものなのか、言葉のプロ二人から聞きたい方。
・千葉佳織や三浦崇宏さんから直接話を聞きたい方。


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