星見当番が名無しの占いスキーだった頃
2019年11月22日のツイートまとめ。5年前はこんなことを書いていた。
当番さんがまだ10代とか20代で、名無しの占いスキーだった頃の話。プロ占い師の書く占いQ&Aは大体のところ「Q. 占い師志望です、どうしたらなれますか」「A. やめておおきなさい」という感じだった。
「ある程度の人生経験がなければ人様の鑑定はできません。それに占い師は他に本業を持ち、余技で奉仕としてするべきです」本を出すような大御所の占い師たちは大体そんな論調だった。若い名無しの占いスキーは素直だったので「そうかあ(´ ・ω・`)」と思った。何しろ人生経験がなかったのである。
月日は流れ、若い名無しの占いスキーは星見当番と名乗るようになっていた。占い歴は少々長くなったが、依然として人生経験はそれほど豊富ではなかった。インターネットには当番よりひと回りくらい年上の新世代プロ占い師がたくさんいて、活発に発信をしていた。
その中のどなたかがある日、発信しておられた。「朝早起きして満員電車に乗って朝9時に出社できるようなら、悪いことは言わない、そっちの仕事をした方がいい。占い師は朝9時に出社するような生活がムリだから占いを仕事にしているのだ」。当番は素直だったので「そうかあ(´ ・ω・`)」と思った。
当番、無駄に体力があったし無駄に遠距離通勤慣れしていたのであった。電車で座って眠るから半睡状態で6時55分に家を出て7時20分の電車に乗り、電車が止まった以外で9時の始業に遅れたことがない。遠距離通勤者は早め行動がデフォルトなので、却って遅刻はしないものなのである。都内住みが遅刻しても遠距離通勤者は滅多に遅刻をしない。
更に時は流れ、名無しの占いスキーが星見当番と名乗り始めてから木星が一周した。ネットには当番よりひと回りくらい年長の占い師から、当番よりひと回りくらい若い占い師までたくさんのプロがいて、活発に発信していた。
ある日、その中の誰かが言った。「占い師はフリーランスの自営業です。自営業として稼ぐということについて、現実的かつ具体的に知る必要があります」当番は「ですよねー(๑´∀`๑)」と思った。人生経験には相変わらず乏しかったが、言わんとすることが理解できる程度の年の功は重ねていたのである。
大御所占い師からの「占いが好きなだけの世間知らずのお嬢さんができる仕事ではありませんよ、悪いことは言わないからやめておおきなさい」も悔しいがわかる。9時5時仕事電車通勤ムリ民からの「この業界は我々のなけなしの居場所だからフツーに働ける奴ァ来るなよ」も、そう言いたくなる気持ちはわかる。
そして、「占い師は自営業。自営業としての現実的な感覚を持つ必要がある」も、よくよくわかる。いちばん「ですよねー」と思うのも、占い師は自営だということ。「占い師というものは」についてのこの変遷は時代の流れ世代の違いなのかなーとも思う。当番が14歳で占星術沼に落ちてから30年が経過した。
この30年で、占い好きの居場所は増えてきたと当番は感じている。占いは好きだけれど、悩みごと相談業務には全然向いていないなー、悩みごと相談業務が得意でもないし好きでもないなーと思う当番のような人間も、占いスキーが行き交うインターネット空間の片隅を居場所として15年テントを張っていられる。
「いつかプロからの怒られが発生する(主に『いい加減過ぎる』とか『間違ったことを言っている』とかによって)」という謎の恐怖感はブログ開設してから15年間、常にうっすらとあります(※プロの先生方はわざわざ当番を怒りに来るほど暇ではない。これは当番の一方的な恐怖である)。
占いの本を読み、占いを練習し、占いの講座へ行く。「ということは占い師になるの?」その素朴な質問に当番は30年間ずっと困ってきた。占い師になれなかったら占いを練習しても無駄なのか。マンガを描くのが好きな人が「マンガ家になるの?」と訊かれるようなものかもしれないけれど。
プロの先生方は口々に「好きだけではプロになれません。覚悟なき者はやめておおきなさい」と言っている。自分で練習を始めてみてしばらくすれば「プロになるのは大変だ」とわかる。そこへ、占いは好きだけど自分でするわけではない人が来て無邪気に言う。「プロにならないの?」「もったいない」
「せっかく占いができるのにそれで稼がないなんてもったいない」「稼ぎに繋がらないことをお金かけて練習するなんてもったいない」どちらの意味だか知らないけれど。自分の技量レベルを「占いができる」とも「稼げる」とも思っていない当番の心に「もったいない」はえらくカチンと来るのである。
知らない人はえらく簡単に「プロになれそう」「ならないの」「ならないなんてもったいない」と言うけど、占い好きの裾野からプロの山へはそれほど単純ストレート一本道じゃないんよ……そして全員がプロ鑑定家の山へ向かうとは限らないのよ……むしろ当番は占いで稼ぐにしても道の分岐を増やしたい。
だから、こんな表を作ってまだこの世にない新しい占い稼業を作るヒントを探してる。
まあ、多分。よく知らなくて無邪気に「プロになればいいのに」と言う人は「売れるだけの価値があると思う」くらいの軽いお世辞のつもりで言っているんじゃないかなーと思ったりもする。お菓子作っても服作っても言うんだよね。「すごい→売り物みたい→売ったら?」「お金になるのはいいことだ」発想。
それはね、お金にならないよりはなった方が当番も嬉しいよ。でもね。自分で「これはお金を取れるレベルではない」と思っているところに、よくわかっているわけではない人から「売れそうなのに売ることを考えないんですか」と言われると何とも言いがたい気持ちになって胃がグニグニするのだよ。
その、さ。相手の物差しと当番の物差しの目盛りがあまりに違い過ぎて。
【2024年11月14日追記】
更に5年の月日が流れ2024年となった。当番が足を滑らせて西洋占星術沼へ転がり落ちてから35年が経った。5年前の自分がいい歳して青臭いなと思う程度には諸々気持ちの整理がついたな、と2024年の当番は思う。
5年前との変化は、体力の減衰。もう遠距離通勤はできない。今は近距離通勤。9時17時の仕事も、15年後か20年後かにいつか無理になる日がくることを現実味のある可能性としてイメージできるようになった。占い関係で稼いだお金について息をするように帳簿をつけ粛々と事務作業をできるのは、地味な9時5時の仕事で積んだ実務経験があるから。相変わらず人様の相談に乗れるような人生経験は積んでいないけれど、事務作業が苦にならない人生経験なら積んできたことが今ならわかる。
あ、そうそう。当番の数ある前職のひとつに「本当に本当に! 営業だけで手一杯で事務作業まで手が回らない・事務作業への適性が壊滅的なまでにない自営業者・個人事業主のために経理事務作業を引き受ける会社」及び税理士事務所勤務というものがある。当番はそこで想像を絶して、本当に事務作業ダメな自営業者というのを見てきた。おかげで当番は「当番がやれるような事務作業は『誰にでもできるような業務』ではない」ということを知った。当番は学校を出て以来ずっと被雇用者の身だが、そういう職務経歴の行きがかり上自営業者の営みの一端をほんの少しだけ見せてもらっている。
今ならわかる、どんな経験も占いの肥やし。本当に文字通り、どんな経験も。当番が10代20代の頃に大御所の占い師が書いていた「世間知らずのお嬢さんにできる仕事ではない」も本当。令和の占い師が言う「占い師は自営業」も本当。当番がいま言えるのは「占いで人様からお金をもらうには、『占い以外に何ができるのか』『占い以外にあなたは何をしてきたのか』ということがとても大切」ってこと。
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