![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/123816431/rectangle_large_type_2_c381c4a6eb8371f5860611cc85301966.jpeg?width=1200)
Laugh and be fat.
2023年12月3日。その日当番は新宿駅で電車を降りました。ちょっとしたパーティー(本当に「ちょっとしたパーティー」という名称のちょっとしたパーティー)に出る予定があったのです。
山手線を降りて南口改札へ向かう階段を上がっていくと3COINSのちいさな売場があります。3COINS JR新宿駅南口店。パーティー会場へまっすぐ向かうには早すぎる時間だったので、ちょっと300円ショップを冷やかしていくことにしました。そこで見つけたのがこれ。
![](https://assets.st-note.com/img/1701901447531-v0ig7AuIDl.jpg?width=1200)
ATTRACTION FRAGRANCE アトラクションフレグランス。8種類の商品、11種類の香りのフレグランスシリーズ。シリーズ名「アトラクションフレグランス」は「遊園地のアトラクションのように、香りを選んで、香りで遊ぶ」というコンセプトから命名されたようです。3COINS公式通販サイトの中に特設ページもありました。2023年4月に第1弾発売で、現在販売中のものは第2弾である模様。知らなかった。
売場を眺めたときに当番の脳内にあったのは、noteで相互フォローしている千歳緑さんのZARA香水レビュー記事集。当番あのレビュー記事が大好きです。先日見たらマガジンにまとめてありました。
ZARAといい3COINSといい、最近はプチプラ商品のお店でオリジナルフレグランスを売るのが流行っているのかしらん、と思いながら11種類のテスターを嗅ぎくらべ、当番が選んだのは 008 BASILIC APRICOTTI なる香り。スプレー式コロンからルームフレグランスまで8種類ある品目から練香水を選びました(全品目で11種類の香りが揃うわけではなく、練香水は4種類、ハンドクリームは8種類等のバラつきがあります)。
![](https://assets.st-note.com/img/1701903575224-RG4jnVyNlc.jpg?width=1200)
008 BASILIC APRICOTTI はその名のとおりバジルとアンズが主体の香り。甘く煮たアンズの香りではなく生のアンズにナイフを入れたときのような青っぽくいきいきとした香りがします。当番の好きなフルーツ香のバラにも似ている香り(「いかにもバラの香り」というのは「ダマスク香」というのですが、そういう香りではなく桃や洋梨、杏のようなフルーティーな芳香を放つバラの品種群があるのです)。
店頭に置いてあった香調の解説では「フレッシュで感じの良い甘みのある、ユニセックスな香り」とありましたが、当番がこれを嗅ぐとき脳内に浮かぶ形容は「官能的」。確かに触れ込みどおり「フレッシュで感じの良い甘みのある香り」ではあるのだけど、その奥に人の肌のような、ちょっとグッと……「ムラッと」と表現してもいいような、いわく言いがたいなまめかしさがある。「当番の鼻はそう感じる」という話ですが。
パトリック・ジュースキントの小説『香水 ある人殺しの物語』に登場する、主人公グルヌイユが出会った「究極にいい香りのする若い娘」ってこんな香りだったんじゃないかと当番は妄想しています。宵闇のパリで、ひとり裏路地に椅子を出して籠いっぱいのアンズの実をナイフでふたつ割りにしていたあの娘。その体から立ちのぼる芳香でグルヌイユの心を奪い、彼の最初の犠牲者となったあの娘。小説のあの場面と、後に映画化された同じ場面で濡れた路地に転がる無数のアンズが当番の脳内にはっきりと浮かぶのです。
そんな薄昏いイメージを思い浮かべながらパッケージを見たら、何やら小さな文字で短い英文が印字してあります。初期老眼にはいささかつらいサイズです。
![](https://assets.st-note.com/img/1701902917068-OalzIGLc6h.jpg?width=1200)
拡大してみます。
![](https://assets.st-note.com/img/1701904855335-mY610DU22j.jpg?width=1200)
LAUGH AND BE FAT. 他の香りと見比べてみると、香りごとに違うメッセージがここに記されているようです。香りではなくメッセージで選んでプチギフトにするのもよさそうです。そして008 BASILIC APRICOTTI のメッセージは LAUGH AND BE FAT. 笑って肥えろ?
脳内からパトリック・ジュースキントも究極の挙体芳香美少女も吹っ飛んでしまう陽気なメッセージ。「笑って肥えろ」だなんてそれ何て木星感? ダークにも官能的にもなりきれないなあと笑いながら「まあいいか」と購入に至ったのでした。いい香りだし。こういうところで木星感丸出しのメッセージを引き当ててしまうのも射手座の当番らしいと思ったし。ちょっとした話のタネにもなるし。
買っていった練香水は、その後向かった「ちょっとしたパーティー」で実際にちょっとした話のタネとして披露してきました。「純粋に『好きな香り』で選んだら『笑って肥えろ』というメッセージがついてきた」という話を実際に肥えてる当番が笑いながら話すのって、とても「らしい」ので(『香水 ある人殺しの物語』の話はしなかった)。会場ではじめて顔を合わせた男性に練香水のお試しをしてもらったりもしました(練香水は初めて使うと仰ってました)。
ああ楽しかった、と帰宅した後で。ふと「ひょっとしたら LAUGH AND BE FAT. って文字通り『笑って肥えろ』という意味ではないのかもしれない」と思いました。こういう短い英文は何らかの慣用句である可能性を疑った方がいい。
検索窓に Laugh and be fat. と打ち込んだらすぐに出てきました。Laugh and get fat. あるいは Laugh and grow fat. be が get や grow に変わっても意味は同じです。SVCの第二構文の命令形。笑って肥えろ。慣用句としての意味は「笑う門には福きたる」。
「肥っていること、肥ること」が豊かさと富と幸せの証であり、「痩せていること、痩せること」は貧しさと不幸せを意味するものだった時代にできた言い回し。がっかりして、メソメソして、不幸に身を細らせるのではなく、笑って肥ろう、豊かでしあわせになろう。笑う門には福きたる。
「『笑って肥えろ』なんて木星感に溢れているなあ」と直訳で直感したのは半分当たりでした。木星は陽気さと大らかさがウリの拡大の星です。笑って身を肥やすのは木星の仕事、泣いて身を削るのは土星の仕事。
誕生日直前に買ったので、この木星フレグランスはこの先1年のお守りコスメとして使う予定です。運命の美少女香がすっかり木星感で上書きされちゃったな。
いいなと思ったら応援しよう!
![星見当番](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/45510619/profile_83121aeecfd074be742b50e4318c6623.jpg?width=600&crop=1:1,smart)