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ソロ活占い師と尻叩き妖精と生成AI

【前回までのあらすじ】

むかしむかしあるところに、かつて「尻込みちゃん」と呼ばれたソロ活占い師志望者がいたんだとさ。2023年の自分に3人の尻叩き妖精を送り込まれ、尻を叩かれながらもいっぱしのソロ活占い師にはなったものの、なったらなったで別の悩みが出てきたんだとさ。

2025年1月。ブログの原稿で行き詰まったソロ活占い師はうっかり尻叩き妖精のひとり「発信の妖精」を呼び出してしまったんだとさ。「先輩占い師や先輩占いブロガーが上手い解説をたくさん書いているのに、私も解説を書く意味ってあるのかな」とボヤくソロ活占い師に、発信の妖精は「いつまでもあると思うなウェブサイト。君のブログに最後まで残るものは君が自前で書いた解説だけだ。上手い先輩が書いた解説記事へのリンクではない」とマジレスしたんだとさ。

「よーし、では書け!」「書きますけどぉ……」ソロ活占い師は頭を抱えて言った。「大変なんですよねぇ……」「大変ではない、とは言えないな」発信の妖精も頷いた。「助言は?」「ない。精進しろ。伴走ならしてやる」ソロ活占い師はその日何度目かの深い溜息をついた。「助言なしかあ。じゃあ、こっちから質問していい?」「うむ、何だ」

「解説記事書くのにさあ、生成AIって使っていいと思う?」

「何だと?」

『既に他の人が上手い解説を書いているのに、私が書く意味ってあるのかな』

【生成AIだと?】
「生成AIを使っていいか、だと?」発信の妖精は目を剥き、大声で繰り返した。「あっ……すいませんやっぱりダメですかね」ソロ活占い師は慌てて言った。発信の妖精の機嫌を損ねてしまったかもしれない。「いや、いや、いや待て。待て待て待て。俺は怒ってなどいない」と発信の妖精は両手をあげて「待て」の仕草をした。「俺が言いたいのはだな。『君はそれを俺に訊くのか』ってことだ」「へ? 訊いちゃダメな質問でした?」「ダメではない。だが君が訊いて、俺が答えたとしてだ。その答えが君の役に立つかと言えば、まあ十中八九役には立たん。今のはそういう質問なのだ」「『解説記事に生成AIを使っていいと思うか』が?」「そうだ」「発信の妖精さんにも答えられない質問ってあるんだ」「答えられないとは言ってないだろうが。答えられたとしても役には立たんのだ」「わけわかんない。それって他の尻叩き妖精だったら答えられたりします?」「いや、他の尻叩き妖精でも俺と同じことを言うだろうよ」「呼んで確かめてもいいですか?」「おう、やってみろ」

呼び出されてやってきた残りの尻叩き妖精ふたりは、発信の妖精と同じように目を剥き、異口同音に「発信の妖精の言うとおりだ」と繰り返した。「あたしらが『いい』とか『よくない』とか言ったって、そりゃァ何の役にも立たないよ」とひっつめ髪のおばちゃん妖精「優先順位の妖精」が首を振り振り言った。「『質問の相手を間違えてる』ってやつだね」その隣で紺色の制服を着た「お膳立ての妖精」も小さな頭を揺らしてうなずく。「ソロ活占い師さん、『解説記事に生成AIを使っていいか』は私たち尻叩き妖精が賛成するかしないかの問題じゃないんです」お膳立ての妖精は言った。「『妖精に頼らず、私がひとりで決める問題だ』という意味?」「そういう意味でもありません」お膳立ての妖精がかぶりを振ると、おかっぱの髪がゆらゆらと揺れた。「ソロ活占い師さんが解説記事に生成AIを使っていいか悪いか決めるのは、私たち尻叩き妖精ではないし、ソロ活占い師さんご自身でもありません。決めるのはソロ活占い師さんのお客様なんです」

「つまるところ、俺たち尻叩き妖精は君の客ではない。俺たちは君に金を払って占いをしてもらわない。君に金を払って雑誌やウェブサイトに寄稿してくれと依頼する編集者でもない。君が生成AIを使おうが使うまいが、俺たちは損も得もしない」発信の妖精がお膳立ての妖精の発言を引き継いだ。「君の客は違う。君が生成AIを使うか使わないかによって客は得もすれば損もする。損か得かで客は行動を変えるし、それは畢竟、君の損得に大いに関わる。事は『俺たちがどう思うか』ではなく『君がどう思うか』でもない。『客がどう思うか』だ」

「お客さんかあ」ソロ活占い師は頭を抱えた。「じゃあ、お客さんに訊けば……いやいやいやいや、訊けないわそんなこと!」尻叩き妖精たちは三者三様に「そうでしょう(だろう)ねえ」と頷いた。「あんた自身はどう思うかね」と優先順位の妖精がソロ活占い師に訊ねた。「我ら尻叩き妖精とあんた、この四人の中で『占い師の客になった経験がある者』はあんただけだ。色々な場合を自分事として考えてみようじゃないか」

「ひとつめ。あんたが金を払って鑑定を受けた占い師が生成AIを使っていたと後から知ったら、あんたはどう感じる?」

「うーん、対面とかオンラインとかで占い師さんがその場で喋るなら、あまり気にならないかな?」

「そうかい。じゃあ、ふたつめ。金を払って受け取ったメール鑑定の鑑定文が生成AIで作ったものだと後からわかったら?」

「うーーん、ちょっとショックかもしれない、でも、内容が当たっているなら……」

「ふむ、ではみっつめ。また別のことで悩んだとき、同じ占い師に同じ金額で、返ってくるのが生成AIの鑑定文だと承知の上で再び占いを依頼したいかね?」

「うーーーん……」

優先順位の妖精さん、ちょっとイジワルじゃないですか? そんなのすぐに答えられないですよとソロ活占い師が文句を言うと「あたしゃ『ありそうな例』を挙げているだけだよ」と彼女は肩を竦めた。「私からもひとつ、よろしいでしょうか」とお膳立ての妖精が片手をあげた。「もう何でもありですよ、どうぞ」ありがとうございます、とお膳立ての妖精は頭を下げた。

「優先順位の妖精が質問したことへのソロ活占い師さんの答えがどんなものであるにしろ、です。はたしてソロ活占い師さんのお客様も同じ答えを出すでしょうか?」

「それは……そんなこと、わかるわけがない」

「わかるわけがないのは、なぜですか?」とお膳立ての妖精は問いかけた。「だって、お客さんはみんな違うから」生成AIの、何をどこまで受け入れて何はイヤだと思うかなんて、お客さんごとに違うんだからわかるわけがない。「そうですよね」とお膳立ての妖精は頷いた。

︎︎︎︎︎︎︎︎︎「今は過渡期です。生成AIが今のスマホと同じくらい普及してしまえばまた別かもしれませんが、今は生成AIの受けとめかたが人によってあまりにもまちまちです。生成AIを使うにせよ使わないにせよ、ソロ活占い師さんは今のこの過渡期の中でお客様を獲得していくわけです」

「優先順位の妖精とお膳立ての妖精が来る前に話していたことだがな」と発信の妖精も横合いから口を挟んだ。「事は『自分より上手い解説記事を書く者がいるのに自分が書く意味があるのか』と根がだいたい同じなのだ。君の客……に将来なるかもしれん読者はだ、どこぞのすごでき先輩の紹介ではなく君の考えを知って客になるかどうか決めるために君のブログに来る」うん、とソロ活占い師は頷いた。「ブログに載せる解説記事に生成AIを使うとしてだ、それを読者が『君の考え』と受け取るか、『君が生成AI先輩を紹介しているだけ』と受け取るか、どちらになるかという話だ」「ぐえっ」「そうだな、『ぐえっ』だな」

「まあ、2025年1月現在、生成AIくんにはそこまで“使える” 占いの記事を生成できるほどの賢さはない」発信の妖精は指で空中にクイクイと引用符を描いた。「将来はわからんけどな」「あんたがソロ活占い師として仕事を得ていくには『あんたに』頼みたい、『あんたの』出す答えに魅力があるとお客さんに思ってもらう必要がある」と優先順位の妖精がその後を引き取った。「生成AIを使うにしても、あんたがカシラで生成AIが手足だ。カシラより手足が目立つようじゃァ順位がおかしい」

「ソロ活占い師さんを主人、生成AIをその家来と位置づけるなら、『答えを出す』はソロ活占い師さんがやって、生成AIにはそれ以外をさせるという方法もあります」お膳立ての妖精が言った。「それ以外」「たとえば、ソロ活占い師さんが回答するための質問を作らせるとかです。記事のお題をリストアップさせるとか。AIにジェネリックお膳立ての妖精役をさせるのもいいかもしれません」「ジェネリックて。お膳立ての妖精さんはそれでいいんですか?」「尻叩き妖精にも働きかた改革が必要ですもの」

「よし、ソロ活占い師よ。ひとつ生成AIに質問を出させてみろ」発信の妖精が言った。「どうやって」「たとえばだ、生成AIに『お前は西洋占星術の初心者で、自分は西洋占星術師だ。初心者として自分にききたい質問を3つしろ』と命じてみろ」「うん……えーと」ソロ活占い師は生成AIを起動し、入力欄へ以下のように打ち込んだ。

『あなたは西洋占星術を学び始めたばかりの初心者です。私は西洋占星術歴〇年の占い師です。西洋占星術の初心者が聞きたい初歩的な質問を3つ挙げてください』

ソロ活占い師と3人の尻叩き妖精、4つの頭が画面を覗き込む中、AIからの応答が表示された。

もちろんです。西洋占星術を始めたばかりの初心者がよく聞く質問を3つ挙げますね:

星座とサインの違いは何ですか?

初心者は、星座(Constellation)とサイン(Sign)の違いについてよく分からないことが多いです。星座は天体の位置を表すもので、サインは太陽がどの範囲に位置しているかを示すものです。

ホロスコープ(出生図)はどうやって作るのですか?

ホロスコープを作成する方法について知りたいと思うでしょう。出生日時と出生場所が必要であり、特定のソフトウェアや計算方法を使って天体の配置を図示します。

太陽星座以外に、どんな要素が重要ですか?

多くの人が自分の太陽星座だけを知っていますが、月星座や上昇星座(アセンダント)、そして他のプラネット(惑星)の位置も性格や人生に大いに影響を与えます。これらの基本的な要素についても知りたがるでしょう。

これらの質問は、西洋占星術の基本的な理解を深めるために役立つでしょう。

とある生成AIの回答

「……どう思う?」ソロ活占い師は声をひそめてきいた。「あたしたちよりもあんたがどう思うか、だよ」と優先順位の妖精が囁き返した。「記事のお題に使えそうかね」「お題には使えそう……な気がする」とソロ活占い師は言った。「だけど……」「うむ、何だ」「返事の初っ端から、間違えてる」ここ! とソロ活占い師が指さす先を3人の尻叩き妖精は追って、それから顔を見合わせて頷いた。

「確かに間違えていますね」お膳立ての妖精がニコリとした。「ご主人様としてきっちり正してあげなくては。ソロ活占い師さんならばどのように訂正なさいますか?」

【追記】
生成AIが出してきた3つの質問は星見当番が実際に生成AIを使って出したものです。使用したのはGrokです。回答は原文ママです、きっちりがっつり間違っています。さて、どこがおかしいでしょう。

なお、作中に登場するソロ活占い師は当番本人ではありません。この物語はフィクションであり登場人物の設定が実在の誰かに似ているように見えてもそれは気のせいです。当番自身の立場は「画像は自前で描けないから他人様の手を借りるし、その延長で生成AIの力も借りるけれど、文章まで生成AIを使うんじゃ当番が何のために占いアカウントやってるんだかわからん。当番はAIの作文を赤ペン先生したいんじゃなくて、当番が語りたいことを好き放題書きたくて当番やってんのよ」です。いちばん楽しい「作文」パーツをAIに譲るつもりは毛頭ないです。

これまでの尻叩き妖精シリーズ


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