見出し画像

「本気のラジオ体操」を教えてくれた先生の話

昨日、当番TLでラジオ体操の話題が出ていたので。

先日、この記事で歴代体育教師への信頼感がまるでなかった話をしたのですが。

小学校から高校まで12年間で出会ったうち、唯一感謝している体育科の先生がいたことを思い出しました。中学時代、女子体操部の顧問を兼任していた女性の先生です。今日はその思い出話をします。

当番が通った公立中学校には体育専任の教師がふたりいました。片方は何かと言えば「駆け足!」と怒鳴るタイプのガタイがよくてコワモテの男性。もう片方が女子体操部顧問を兼任する小柄な女性。どちらの先生が自分のクラスを受け持つかは確か、奇数偶数で分かれていたと記憶しています。

学生時代は自身も体操の選手だったというその先生は、現役引退して教師になった当時もバレリーナみたいな体型を維持していました。小柄で華奢で、でも一分の隙もなく筋肉がついていて、コワモテ先生とはまた別種の怖さ、あるいは威厳のある先生でした。「厳しいレッスンを課す、規律を重んじるバレエ教師」的な威厳です。

その先生が中学1年生の最初の体育で当番たちへ教えたのが「本気のラジオ体操」でした。50分間の授業丸々、ラジオ体操。50分かけてひとつひとつの動きを解説し、どこの筋肉を伸ばすための動きなのかを教え、正しく筋肉に効かせるための正しいフォームを教え、全員が正しいフォームでラジオ体操ができるようになるまでひたすら練習をさせたのです。

体力があり余っているはずの中学1年生が、終わる頃にはヘトヘト。狙った筋肉にきっちり効くように正しいフォームでラジオ体操をすると、3回通しでやったらもう汗まみれです。「元体操選手・現体操部顧問が教える本気のラジオ体操」は本当にすごかった。

今でも思い出すのがラジオ体操第一の二種類目の運動(腕を水平に振りながら踵を上げ膝を開き、カエル脚で屈伸運動をする)。あのカエル脚運動で女子たちが恥ずかしがって膝を開こうとせず、膝を閉じたままただ上下に軽くバウンドするだけの動きで誤魔化そうとするのを止めて、膝を開き腰を深く落とすことでどこの筋肉に刺激が入るか、そこへ刺激が入ることでどこが引き締まるかを叩き込んだのです。

膝をくっつけたままただ上下にバウンドしたって体はどこもほぐれない。「この動きは何を目的にしているのか」を知って、その目的を果たすために正しいフォームを覚えなさい。爪先は外へ向け、かかとはつける。かかとを上げ、膝を開いて腰を落とし、かかとでリズムをとりながら屈伸運動をする。上体が前のめりにならないように腕を振ってバランスをとる。お尻のほっぺた、内腿の筋肉、ふくらはぎに効く。この動きを丁寧にやると股関節と足首の関節が柔らかくなり、体のバランスをとるのが上手くなる。転んで足首を捻る危険が減る。続けてやっていれば脚とお尻が引き締まる。

当番がそれを教わって四半世紀後。「おとなのラジオ体操」ブームが起きました。DVD付きの本が発売されベストセラーになり、テレビ番組でもラジオ体操特集が組まれました。「ラジオ体操を3回やると、1日の最低限な運動量を満たせる」と言われていました。今からちょうど12年前、2012年の話です。

当時、運動不足の家族が「やってみたい」と言ったのでDVD付き「おとなのラジオ体操」を買いました。家族に付き合って視聴してみたら、中学時代にあの体育の先生にビシバシ叩き込んでもらった「本気のラジオ体操」と同じ内容でした。出てくる解説出てくる解説、みんな「知ってる。中学のとき習った」でした。

あの先生が教えてくれた「本気のラジオ体操」は、正真正銘「本気のラジオ体操」だったんだ。

あのとき、元体操選手の先生にみっちり教えてもらったおかげで、何十年経った今も当番は「ものすごくお尻と内腿の筋肉に響く、本気のラジオ体操」ができます。「できる」だけであって肝心の「毎日欠かさずやる習慣」の方は身についていないからお尻が引き締まっているかいないかで言えば、引き締まってはいないのですが。それでも今この場で音楽が流れて「本気のラジオ体操をやれ」と言われたら先生仕込みの正しいフォームでひととおり体操をやりきることができるくらいには身についています。

体育の授業が大嫌いで体育教師に信頼感をまるで持っていなかった当番の、数少ない「よい思い出」のひとつがこれです。ラジオ体操をやるたびに、「本気のラジオ体操」を教えてくれたあの先生を思い出します。

いいなと思ったら応援しよう!

星見当番
お気が向いたらサポートをお願いします!サポートは当番の紅茶代となり、ひいては明日への活力となります