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フォロワーさんと『青春ウォルダム』を観ています

本日は雨。相変わらず半袖シャツ1枚に用心のためカーディガンを持ち歩き。でも蒸し暑いから持っているだけです。週末のお天気が心配。

Twitter(自称X)で長くお付き合いしているフォロワーさんにお誘いをいただいて、ときどき映画やドラマのオンライン同時視聴会に参加しています。以前はAmazonプライムのウォッチパーティ機能を利用していたのですが、今はもうないサービスなので各自ただ同じ時刻にそれぞれ使いやすい媒体で同じ映像作品を再生してワイワイと感想を呟きながら観るだけです。感想はdiscordへ投下したり、ハッシュタグを付けてSNSへ投下したりします。

当番にとっては自分ひとりでは観ることを思いつかないような未知の作品を教えてもらえ、同時視聴企画を立ててお誘いくださるフォロワーさんにとっては当番からいわゆる「初見の悲鳴」を収穫することができる。win-winというものです。現在ご一緒しているのは韓国時代劇『青春ウォルダム』です。きのう3話目を観て、今夜は4話目を観ます。以下、3話目まで視聴した時点までの当番の感想(軽めのネタバレを含みます。ネタバレダメ絶対のひとはここまでで読むのを止めてください)。

ジャンルとしては「李氏朝鮮時代の王宮を主な舞台とするラブサスペンス時代劇」です。「親兄弟に毒を盛り、全員殺害した」と無実の嫌疑をかけられた地方貴族の令嬢ミン・ジェイ。賢く勇敢なチェイ(ミン・ジェイ。「ふとん」が「かけぶとん」、「かさ」が「あまがさ」になるように、名前は「チェイ」だが「ミンさんちのチェイさん」は「ミン・ジェイ」と連濁する)は、家族の死には父の元教え子である世子(セジャ・王太子)からの密書が関係していると知り、世子を訪ねて真実を突き止めるため出奔する。身を守るため偽名をつかい、男装して接近した世子は「兄を殺害して世継の座を奪った。そのような徳の低い行いをしたため、呪われて体に障害を負っており未来の王に相応しくない」と噂され、誰も信用しようとしない孤独な男だった。

――と、導入部はかなり王宮陰謀サスペンスドラマなのですが。2話目、3話目と観ていくにつれ「あれ、だいぶラブコメだな?」「いや、『こういう乙女ゲームがあったし、これはその実写化である』という『ない記憶』が甦ってくるな??」と思うようになってきました。向かうところは政敵ばかりの王宮で、世子を陥れようとする者が誰だかわからない上にヒロイン一家惨殺事件の謎もあるのに、所々でものすごくコメディ。キャラの立った青年が4人、若い娘さんも「男装したお嬢様」「そのお嬢様の忠実なる侍女(彼女も主に倣って男装)」「世子様の妹であるかわいい公主様」とそれぞれ違った魅力を持つ3人が登場して、まあ邦題のとおり青春でございます。わっちゃわちゃしております。かわいいねえ。

なお原題は「青春」がつかないただの「ウォルダム」である模様。「ウォルダム」は「壁を乗り越える」的な意味だそうです。ドラマ3話目で「お前は何が得意だ」と問われたカラム(チャン・ガラム。上記ミン・ジェイお嬢様の忠実なる侍女)が「私は塀を乗り越えるのが得意です!」と答え、続く回想場面で男装したカラム(侍女)とチェイ(お嬢様)が屋敷の塀を乗り越えているのが映ったとき、当番声をあげて笑ってしまいました。なるほどこんな風に塀を乗り越えていくヒロインたちのドラマなのね、了解。

とにかくヒロインが強い。物理で強い。兵士数人を相手にひとり剣で応戦して押し負けないくらい腕っ節が強い。侍女とふたりで男装して街へ出て、数々の未解決事件を推理(と腕っ節)で解決してきたほど頭もいい。男装するのは、「男の姿でないと自分の声は届かないから」とヒロインは言う。自分の声・意見・才能に「壁を乗り越えさせる」には男になりすます必要があるとわかっているし、そのことに腹を立ててもいるミン・ジェイは賢い。賢い以上にあまりにも腕っ節が強く行動力があって、気付けば同時視聴仲間がみんな愛称として「女傑」と呼ぶようになってしまいました。女傑つよい。女傑本当につよい。いいぞもっとやれ女傑。

王宮に渦巻く策謀と統治者の継嗣問題を扱うドラマでもあるので、観ていると日本の王宮物ドラマである『光る君へ』及び『源氏物語』への解像度もちょっぴり上がります。「世継の王子様が呪われていて肩や脚に麻痺が出ている」と「世継の器ではない」と謗られてしまうことの背景だとか。

現代ならば直球の障害者/病人差別ですが、昔の日本でも中国でも李氏朝鮮でも、「そもそも病や障害は悪行に対する『天罰』であるとみなされていた」わけです。そして「『皇帝や天子や王様は徳でもって国を治める存在』であり、そういう存在が徳を喪えば国土に飢饉や疫病や災害が広がる」という世界観があったわけです。小野不由美『十二国記』とかもそうですよね、王が失道すれば麒麟は病んでしまい、国土は荒れる。王や天子を縛るものが「法」ではなく「天意」である、徳を喪えば天意に背いたことになり、王でいられなくなるという世界観なんです。

「脚や腕が萎えるなんて、どんな悪いことをしたんだろう。世継になりたいばかりに兄王子を殺したに違いない。それで呪われてしまったに違いない。おお、そんな王子を世継の座に据えておいてよいのだろうか」それが事実でなくても、証拠もなくても、「そのように民から噂される」だけで致命的。「実際に呪いが存在するかどうか」ではなく「あの王子は呪われている、なぜなら罪を犯したからだ。なんと忌まわしいことだろう……と後ろ指さされること」で王子の心身を追い詰める、そういう「呪い」が存在する世界。そこへ切り込んでいくのが「幽霊は存在しない。呪いもない。これらはみな、人間がやっていることだ。犯人は必ず私がつきとめる」と説く我らが女傑ミン・ジェイお嬢様というわけです。

日本の平安時代物でもお馴染み「王の後宮へ一族の娘を輿入れさせて、一族の血を引く王子を産ませ、王の外戚として権勢を振るいたい貴族のおじさんたち」もたんまり登場します。人数が多すぎて誰がいちばんの敵かわからないあたり、たいそう藤原氏めいています。そして「呪われている王子」である世子様はこの有力貴族おじさんたちにウケがよろしくありません。世子様の父王が卑しい雑用係の女に手をつけて生まれたのがこの世子様で、この世子様が世継である限り有力貴族のおじさんたちは誰も外戚として権勢を振るえないからです。

この辺りの描写で「ああ、光源氏の解像度が上がっちゃうなあ」と当番思いました。光源氏の母・桐壺の更衣も(貴族のお姫様ではあるものの)身分が低いんですよね。こういう時代の「女性の身分が低い」っていうのはつまるところ、女性の父親の地位が低いか、父親がいない(桐壺の更衣は父親を早くになくし、実家には母親しかいない)。左大臣を父親に持つ弘徽殿の女御に比べたら後ろ楯などないに等しい。だけど、なぜ桐壺帝や『青春ウォルダム』の王様が身分の低い桐壺の更衣や卑しい雑用係を寵愛したのかといえば、位の高い「いいとこのお姫様」であるような弘徽殿の女御や中殿(チュンジョン。日本で言う「中宮」)のバックにいる有力貴族のオッサンが鬱陶しかったから……というのはあると思うんですよ当番は。ラクだよねえバックにえらいオッサンがついていない、しがらみのない「身分が低い女」を愛するの。

だけど、そういう後ろ楯のない女性を寵愛してラクで楽しいのは帝/王様だけであって、有力な父を持たない女性から生まれた皇子/王子はすなわち「有力な外祖父を持たない皇子/王子」になる。「有力な父を持つ正妻から生まれ、有力な外祖父にバックアップを受ける皇子/王子」と違い、そういう「母の出自が低いプリンス」はプリンスに生まれついても帝や王様にはなれない。よほどのことがない限り、なれない。そういう立場なわけです。だから光源氏は臣籍にくだされた。ハンサムで賢くて、正妻の息子よりもあらゆる面で勝っていると言われたのに絶対に帝にはなれない。もう女にだらしない生活をしているくらいしかやることがないんですよ、シャイニング源氏くんには。第二王子はつらいよ(ついでに某イステッド・ワンダーランドの獅子の君への解像度も上がっちゃいましたね。上に世継の兄がいて絶対に王様にはなれないと決まっていたら、そりゃあ獅子の君もダラダラするほかやることがないのも仕方ない)。

『青春ウォルダム』の世子様は、母親の身分から言っても世継に立てられる目は本来なかったはずが兄の死により大番狂わせがあって世継に立った、有力貴族からはまったく味方してもらえない王子です。親友でさえ有力貴族の嫡子であるので完全には信用できない、腹心の部下である護衛がひとりいるくらい。そういう孤独な世子様の「最初の民になる」と言ってくれたのが、我らが女傑ミン・ジェイ――ということでこの先がものすごく楽しみです。

以降は、だいぶ与太話になります。「もしも『青春ウォルダム』がマルチエンディング乙女ゲームだったら、誰ルート(※誰とくっつくストーリー)を観たいか」という話です。覚悟してください、きわめて与太話です。昨晩から今朝までに勢いでツイートしたことのまとめになります。あと、登場人物についてわかっていないとかなり意味不明かもしれません。

第3話終了。愛称としてすっかり「女傑」が定着してしまったヒロイン、本日も女傑。そして女傑の忠実なる侍女もまた女傑。新登場公主様(世子様の妹姫)たいへんかわいい。

そして隠れた努力家世子様・不憫な婚約者世郎くん・純情元ヤン武官くん・変人師匠と男子キャラも四種四様。

だいぶ乙女ゲーみがある。当番は女傑と侍女ちゃんの主従百合エンドを強く希望するけれど、男子だったら大型犬みのある武官くんルートがいいですなあ。元ヤンなのに(元ヤンだから?)「お前は俺の金的を蹴った」を「お前は俺の」までしか言えない含羞がかわいいじゃないですか。

「出会い頭に金的を蹴り上げたヒロインと恋愛フラグが立つか」についてはですね、「武官くんは女傑を男性だと思っている」がポイントなんですよ。世子様・世郎くん・師匠と違って武官くんだけ「お前……女だったのか!」イベントがあるわけですよ。おいしいですね、おいしいですよ。

「武官くんにだけ『お前、女だったのか! イベント』があるにしても、自分の金的を躊躇なく蹴り上げたヒロインとの間にフラグが立つ余地はあるのか」については「ある」と思いますねえ当番は。女の子に石板で頭をぶっ叩かれてフラグが立つ男の子がいる物語もあるんだから。

世子様→早い段階でヒロインの素性を把握、男装ヒロインを身近に置く

世郎くん→ヒロインの婚約者だが彼女の生死を知らず胸を痛めている

師匠くん→ヒロインが女性だとは知っているし尊敬しているが面識はない。現在、侍女の保護者

武官くん側にはヒロインにフラグが立つ余地あると思うのよ

︎︎︎︎︎︎︎ ☑︎偽名で狩猟大会へ潜入した怪しい「男」だと思っている
︎︎︎︎︎︎︎ ☑︎︎世子様に気に入られる(特別扱いに嫉妬)
︎︎︎︎︎︎︎ ☑︎︎気が強い小柄な「男」だが有能さへは追々気付く

☑︎︎ストリートキッズだったところを世子様に拾われた武官くんは世子様への忠誠心が高い

︎︎︎︎︎︎︎ ☑︎︎拾ってくれた世子様への忠義の心がヒロインにあることを認識すれば「生意気だが有能で忠誠心も高く、腕も立ついい『男』だ」に評価が変わる

☑︎︎そして、どこかの時点で「お前、女だったのか」イベントが発生する

︎︎︎︎︎︎︎ ☑︎︎ヒロインの素性・世子様のところへやってきた真の理由と目的を知り、彼女の苦しみ(と武勇伝)の数々を知る

☑︎︎それまで「チビの癖に生意気、だが有能で忠義者であり、弁も腕も立つ結構いい『男』」認識だったのが「たったひとつの悲願のために己の智恵と鉄拳で単身ここまで道を開いてきた芯の強い『女』」へと認識が改まる

☑︎︎しかしながら出会いは「男装したヒロインに金的を蹴り上げられる、武官の名折れ」でファーストインプレッションは最悪である

︎︎︎︎︎︎︎ ☑︎︎不覚だし屈辱の記憶だが、素性と事情を知った後で思い返すとその最悪メモリーすら別の色合いで見えてくる

︎︎︎︎︎︎︎ ☑︎︎「最悪だ、女の身で何の躊躇もなく俺の……を狙うとは(※金的って恥ずかしくて口に出せない可愛気がある)」「しかし初手で躊躇なくそれを選ぶほどの胆力と覚悟がなくてはここへ辿り着けず途中で嬲り殺しに遭っていただろう」「親の仇を討ち己の汚名を雪ぐ決意の固さ、健気な女だ」「いやしかしゴリラだぞ」

︎︎︎︎︎︎︎ ☑︎︎「あんな乱暴者」「しかし有能」「でも女だぞ、それなのに俺を躊躇なく」「しかし健気」「いや待てやっぱりひどいぞ?」を高速で行ったり来たりしているうちに気付けばヒロインのことばかり考えている武官くん、とかがよいです。ありがちありがち

☑︎︎問題は、反発と感嘆の反復横跳びのうちに武官くん→ヒロインのフラグが立ったとしても、ヒロイン→武官くんの矢印が発生する予感がまるでなさそうなところ

︎︎︎︎︎︎︎ ☑︎︎武官くんの片想い展開もそれはそれでよきと思います

以上。まあアレでございます、当番が武官くんみたいな「大型犬みのある忠義者の武人」を好むからですね……お嬢様と侍女ちゃんの百合バディエンドの次に、武官くんとお嬢様の「もう蹴るなよ」「何を?」「俺の……いや誰のでもだ、とにかくもう蹴るなよ」「指ささないでって言ったでしょう」と言い合う喧嘩ップルエンドが観たいです(あくまで、乙女ゲームだったらの話。ドラマ本編では、どうもその目はなさそうです)。

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