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『異星の客』を読みはじめた

Grokくんが「Grokの名称はロバート・A・ハインラインのSF小説『異星の客』が由来です」と言うので地元図書館で借りてきました。当番の人生で初のハインライン作品。ついでに『夏への扉』も借りてきました。こちらも初読。『夏への扉』は竹宮惠子の『私を月まで連れてって!!』で引用されていたから名前だけは知っている状態。

『異星の客』は創元推理文庫、『夏への扉』はハヤカワ文庫。

『異星の客』、分厚い。厚み3cm強。1969年発行の文庫本で活字がものすごーくちっちゃいのに本文778ページもある……これは21世紀のもっと大きな字組に直したら1000ページ超えますね。京極堂シリーズの文庫版くらいの厚みになっていたはず。

地元図書館の書庫にしまわれていた『異星の客』は、とある利用者からの寄贈本でした。当番地元の図書館では寄贈本には「〇〇氏寄贈」というスタンプが押され、手書きで寄贈者の名前が記入されます。ありがとう、会ったことのない〇〇氏。そしてありがとう、当番すら生まれていない1969年刊の文庫本を寄贈されて蔵書として管理してくれていた地元図書館。

390円ですよ。このボリュームの文庫本が390円だった時代があったんですよ。56年前。2025年現在ならこのページ数の創元推理文庫、1800円はするでしょう! と検索してみたら1760円でした。

さっそく昨日から読みはじめています。ハインライン自身による巻頭辞「この作品に登場するすべての人物、神々、天体は空想の産物である。名前の偶然の一致があったとすれば、あいにくなことである」にフフッとなっちゃう。「あいにくなことである」は元の英語で何と言っているのか、原書が手に入ったら確認したいところです。

物語は「火星から来た男」マイケル・ヴァレンタイン・スミスにまつわるもの。火星を調査する科学者たちを載せた宇宙船が地球から出発したが、その宇宙船は火星で遭難し、乗組員は全員死んでしまう。ただひとり、乗船していた科学者同士の間に生まれた息子を除いては。その息子は火星人に育てられて生き延びた。そして「彼」は後年、地球から送り込まれた別の宇宙船クルーによって「発見」され、地球に連れ帰られた。彼、マイケル・ヴァレンタイン・スミスは今や「火星に入植した最初の地球人の生き残り」であり「地球連邦の定めた法律上では火星の『所有者』」であり、そうでなくても裕福だった亡き科学者の両親が遺した莫大な財産の唯一の相続人なのだった。

――と、『ターザン』みたいな出だしのこの小説。この「彼」が「所有している」とされる火星の利権や地球での相続財産をどうにか我がものとしたい政治家たちが策謀をめぐらせる一方で、「遺伝子上は地球人だが文化面では丸っきり火星人」であるマイケル・ヴァレンタイン・スミスには物事の捉えかたから身体的能力まで地球人とはかけ離れたところがあると徐々にわかってくるというのがこれまで読んだところまでの展開。現在、226ページまで進みました。

X社のAI「Grok」の語源となる「動詞としてのgrok」は早くも19ページから登場します。火星人の言葉で「(表面的にではなく深く意味を)知る・認識する」という動詞で、創元推理文庫版では「認識(する)」「知る」に「グロク」とルビを振るかたちで表現されています。

226ページまで読んだ時点での感想ですが、ものすごく面白いです。所々「いかにも1950~60年代のアメリカ人的だなあ」という(2025年に生きる日本人女性から見れば)ちょっと古めの描写を割り引いて読む必要があるものの、それ以外の部分でものすごく面白い。

途中で「ある有力政治家の妻が秘密裏に占星術師の助言を受ける」場面が出てきて当番、個人的に大ウケです。ナンシー・レーガンですか? とつい思ってしまうけれど、これ1961年の小説だからナンシー・レーガンを皮肉ったわけではないんですよねえ(ナンシー・レーガンが合衆国のファースト・レディの座にあり、ホワイトハウスから占星術師に相談していたのは1981年から1989年まで)。

依頼された占星術師が依頼者とその夫のホロスコープを作り、「火星から来た男」の正確な出生情報なんてどうせないだろうと思って訊いたら(宇宙船の航海日誌にばっちり記録してあったので)出生時刻も出生地点も却って正確な情報が出てきてしまい途方に暮れる……なんて場面が出てきて当番爆笑。そして占星術師はとても苦労して「火星で生まれたマイケル・ヴァレンタイン・スミスの出生図」を作成し、地球生まれではないんだから何もかも地球人用の読みかたはできないと結論づけるわけです。いや正しい、占星術的にもその理屈はまったく正しい。占星術的に正しいことがこんなにも面白い。

今は「火星から来た男」マイケル(マイク)・ヴァレンタイン・スミスの言動から徐々に「火星人」の発想や能力が明かされていく場面に来ています。この記事を公開してしまったら、休日の残りを使って続きを読みます。

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