台風「ヤギ」の話
二、三日前、西洋占星術クラスタの間で一瞬「台風『ヤギ』」が話題にのぼりました。トランジット(※「リアルタイム運行中の」というような意味)の冥王星が逆行して一時的に山羊座へ入ったタイミングで、「ヤギ」と名のつく台風が発生したからですね。偶然の一致だけれど面白い、いや、これこそ共時性(シンクロニシティ)ではないか? 等、大変賑わっておりました。
当番は台風名付けのからくりについて大体把握しているので、「ンッフフ、ナイスなアストロジョークだね」というような立位置です。台風のアジア名については、気象庁が解説してくれています。
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従来、台風にはアメリカ合衆国が英語の個別名をつけていたのですが(1947年の「キャスリーン台風」、1950年の「ジェーン台風」等ですね)、平成12年(西暦2000年)からは「台風委員会(北西太平洋または南シナ海で発生する台風防災に関する各国の政府間組織。日本を含めて14カ国等が加盟)」が加盟国それぞれから集めた「アジア名」140種を順番に命名していくことを決定しました。2000年(平成12年)最初に発生した台風のアジア名は「ダムレイ(カンボジア語で『ゾウ』)」。
以後、あらかじめ決められた順番で1番「ダムレイ」から140番「サオラー(ベトナムレイヨウ)」まで命名されてゆき、140番まで到達したら、ふたたび1番の「ダムレイ」に戻る。台風は平均で年間25件ほど発生するので、ひとめぐりにかかる年月はおよそ5~6年。2024年は2000年から数えて約四半世紀が経過しているので、この140のアジア名を少なくとも四回ほどは繰り返している計算になります。
我らが「ヤギ」は日本が台風委員会へ提出した日本語による台風名10種類のうちのひとつ。140のリスト中、通し番号は19番。日本から提案された名前は全て星座の名前です。
特定個人・法人の名称や商標名とかぶらないこと。「龍之介台風」とか「ドラえもん台風」と名付けて、その台風が未曾有の大被害をもたらしてしまったりしたら困りますものね。うっかり他国語でよくない意味になる名前も困る。日本でも「他国では『幸運のお守り』という意味だから」と言われて「ウンコ台風」と命名されたらちょっと困ってしまう。そしてアルファベットで綴ったときに長くなりすぎないこと。色々な縛りがあるものですね。そんな縛りをクリアして日本が提案した「星座から取った」名前は――
5番コイヌ、19番ヤギ、33番ウサギ、47番カジキ、61番コト、75番クジラ、89番コグマ、103番トケイ、117番トカゲ、131番ヤマネコ
読んでアレ? と思った当番。当番が記憶している台風のアジア名リストとちょっと違う。当番の記憶では「テンビン」もあったはずです。制定当時「黄道十二星座からのエントリーは『ヤギ』と『テンビン』のふたつきりか」と思ったことを強く記憶しています。
気象庁の解説によれば、「甚大な被害をもたらした台風に宛てられたアジア名は『引退』し、別の名前が補充される」そうです。当番が記憶していた台風名「5番テンビン」は平成29年(2017年)12月に発生した台風27号に宛てられ、この台風がフィリピンに甚大な被害をもたらしたため、「最後の『台風テンビン』」となりました。「5番テンビン」は以後「5番コイヌ」に取って代わられた、とのこと。
同じような事情で台風のアジア名はちょくちょく入れ替わっていて、131番に至っては初代ハト→2代目ワシ→3代目ヤマネコと二度「引退」しています。我らが「台風ヤギ」は歴代ヤギがそれほど強くなかったようで、四巡りほどを生き残っています。しかし今回のヤギ2024が大きく成長し、甚大な被害をもたらした場合、これが「最後の『台風ヤギ』」になるかもしれません。
トランジット冥王星の山羊座運行は今回の逆行が順行へ転じ、水瓶座へ出ていったらあと2世紀半ほどは発生しません。冥王星の公転周期は247年と半年ちょいくらいですからね。冥王星の山羊座再入宮と前後して発生した「2024年の台風ヤギ」が冥王星が山羊座を去るのに伴って「最後の台風ヤギ」になったらアストロジョークとしてはよくできた話になりはするのですが、「最後の台風ヤギになる」とはすなわち「2024年の台風ヤギが記録的な大災害に成長して名称引退になる」ということなので、できればならない方がいい。
でも、2024年の台風ヤギ(台風11号)、勢力を増しながら西へ西へと向かっているんですよねえ。並のヤギで済みますように。