私は電話が苦手だ。なのにクラブハウスは平気。…その理由がわかった理由
私は電話が嫌いだ。…いや、嫌いだった。
過去形にするのは、いまやほとんど「いわゆる電話」を使うことがないからだ。
「いわゆる電話」とは何かと言うと、
突然、何の用事かわからない話が降ってくる通話
相手が忙しいかもしれないところに、突然私が割り込んでいく通話
のこと。
会社にかかってくる電話は、ふつうに応対できた。なぜなら相手は「会社」にかけてくるのだったし、私はその時間帯は「会社の人」であって私個人ではないからだった。
どこかの会社に属している人に電話するのも平気だった。なぜなら相手の都合が悪ければ、今は話せませんと言われるからだった。
留守番電話という機能が一般的になったとき、少し気が楽になった。相手の都合が悪い時に掛けた場合は、こちらが何を伝えたいかを先に伝えて、折り返しの電話を待つことができるからだった。
その辺のことを整理できたのは5年前のあるできごとがきっかけだった。
あるとき、「電話、苦手なんですよね」と話した相手から、「そんなこと言ってたら、あんた仕事なくすわよ」と説教されたことがあった。
ちょうど仕事で疲れて弱っている時だったので、ものすごく凹んだ。
電話が苦手だと言うことが、自分の仕事上の弱点だとも思っていたから余計に。
だけど、ちょっと待て?とも思った。
ほんとに?仕事なくす?
というか、そんなことが原因でなくなるようなものなの?私の仕事?とも思った。その話はまたちょっと別のことにつながるので、さておき。
では!なぜ私は電話が苦手なんだろうか。と考える小さな旅に出ることになった。
そのときに出会ったのが、大好きな金井真紀さんの「虫ぎらいはなおるかな」だった。
虫ぎらいを克服したいと願っている文筆家・イラストレーターの著者が、昆虫館の飼育係、虫のアーティスト、ナチュラリスト、教育学者など、虫の達人にインタビューしながら、虫との付き合い方を模索する本。
(Amazonの説明より)
読んでみたら、「虫がきらい」の理由の一部は、私の「電話が苦手」である理由と合致していた。
突然、私のテリトリーに入ってくるから、だった。
突然かかってくる電話は、私の予定にないことを突然挟み込んでくることになる。別に仕事が忙しくない時間だったとしても、私は私がしたいことで忙しい。
こちらからかけるとしても、アポがとれている電話取材とか、店の予約の電話とかは苦手でもなんでもなかった。
けれど、こちらからかける電話で苦手だったのは、突然相手のテリトリーに切り込んでいく感覚が問題だったのだと、やっとわかった。
あれから5年たつうちに、私たちが使える通信の手段がものすごく増えた。
SNS、チャットツール、Zoomなどのオンライン会議システム。
クラブハウスもそうだ。
私が話したいと思って開放しているところに誰かが来る、あるいは、誰かが入ってもいいよと言っている時間と場所に私が入るから、テリトリー侵入にならないんだ。
「今の若い人は電話をとれない、それはケータイ電話世代だから」という人たちがいるけれど、それだけではないんだと思う。
急に部屋に飛び込んでききたり、衣類と皮膚の間でゴソゴソ動く虫が嫌いなように、急に私のテリトリーに侵入してくる「いわゆる電話」が私はこわかったのだった。
トップ画像は、先日食べた大塚の洋食屋GOTOO(ゴートゥーじゃない、ゴトウ)の美味しいカキフライ。美味しいものを味わっている間は、電話に出られないのであった。