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二郎さんのこと‥その④

2020年5月7日Instagram投稿より。

私の記憶の記録
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.〈二郎さんのこと‥‥その④〉 .
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2016年7月11日、暑くて、ピーカンに晴れた青い空の日だった。 .
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S大学病院からの紹介状を持って、がん研有明病院を受診する。どうせ、また長い検査があるのだろうと覚悟していたが、予約時間通りに診察室に呼ばれる。
井上陽介医師。信頼出来そうな凛とした先生だった。 .
机の上には、すでに二郎さんのCT画像がセッティングされていた。挨拶してすぐに病状の説明が始まった。検査もなく、すぐの説明にびっくりした。先生の前に二郎さん、二郎さんの隣に私、私の隣には、メンタルケアをするという看護師が、ティシュの箱を持って座った。 .
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病名は、すい臓がん。
かなり進行していて、腫瘍が大きくなっていると言う。
すい臓がんの患者が100人いたとして、手術ができるのは80人まで。二郎さんは今、80番目で、手術ができるかどうかのボーダーラインにいると言う。でも、高田さんの後ろには、あと20人もいるんてすョ。希望を持ちましょう。  と先生は言った。
看護師にティシュを差し出されたが、私は先生の話を一言も聞き漏らさない様に泣くもんか!と、手の甲をつねって、必死に先生の話を聞いた。 .
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最新の抗がん剤を使って、腫瘍が小さくなったら手術できるという。
先生は、丁寧に説明してくれているが、理解できていない。その時の二郎さんの様子は全く覚えておらず、私はただ、先生の話を聞くのに必死だった。
一刻の猶予もなく、すぐに治療を始めるために、その日にすぐに検査入院となった。
一刻の猶予もない‥‥ なんでこんなことになったんだっけ?半年前の出来事が、グルグルと頭の中を駆け巡る。
娘が入院の用意をして駆けつける。頼もしくてありがたい。 .

二郎さん、娘、私は、淡々と事態を受け止めていたが、感情が追いついていなく、どこか他人事の様な感じだった。 .
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娘と2人で帰宅して、当時大学生だった息子に説明した。 .
息子は取り乱し、泣きじゃくって、いつまで生きられるの?いつ死んじゃうの?と、感情をぶつけてきた。
なんでそんなことしか言えないの⁉︎ 1番辛いのは父さんなんだよ!
どうして一緒に頑張ろうって思えないの⁉︎ 私も感情的に怒鳴った。
息子は、こんなことを今言われて、すぐに頑張ろうなんて言えないよ!落ち着いて話すママの気持ちがわからないよ!
と言って部屋を飛び出し、更に大声で泣き叫んでいた。 .
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そうだよね‥‥こんなに取り乱すくらい大変なことだよね。
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息子が取り乱す姿を見て、現実に起こった事の重大さを思い知る。 .
あの時、ママはキミを抱きしめてあげればよかった。それすらもできないくらい、本当は混乱してたんだよね。泣くのを我慢してつねっていた手の甲は、紫色に腫れ上がっていた。 .
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その日の夜、1人になってから初めて、布団をかぶって泣いた。 .
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二郎さんは、どんな夜を過ごしていたんだろう‥‥
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(つづく‥) .
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