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クマの子ぽぽちゃん
ある晴れたはだざむい秋の日のこと。クマの子どもが森の中の公園で遊んでいました。その子の名前は「ぽぽちゃん」。ツキノワグマの女の子です。
少し遠くでぽぽちゃんと同い年かいくつか年上のクマの男の子達2、3匹が追いかけっこをして遊んでいます。
すると、その男の子達がぽぽちゃんがいる方へやって来て言いました。
「やーい!なんだその白い模様、変なのー。」
「俺らにはないのに。お前だけ変わってるな。」
ぽぽちゃんはクマはクマでもツキノワグマ。ツキノワグマの首元には白い月のもようが入っています。それが他のクマの子達にはないのでそれをからかっているようです。
どうやらその男の子達のうちの1匹がガキだいしょうような子のようで、だんだんと周りの子もつられて笑ったり同じようなことを言ったりし始めました。
ぽぽちゃんはうつむいてなみだをこらえながらじっとしていましたが、とうとう泣き出してしまいました。
「みんなヒドイ!もう私、帰る…!」
そう言ってぽぽちゃんはかけだしました。
ぽぽちゃんはお家に着くと2階への階段をかけあがり、ベッドへ飛び乗ってお布団にくるまりました。
それにびっくりしたぽぽちゃんのおじいちゃんがぽぽちゃんの部屋に様子を見に来ました。
「ぽぽちゃん、どうしたんだい?」
「・・・・・・。」
ぽぽちゃんからは何も返事が返ってきません。
ぽぽちゃんはそのまま寝てしまいました。
次の日の朝、まだ外がうすぐらい時間にぽぽちゃんは目を覚ましました。
昨日早い時間に寝てしまったので、いつもより早起きです。
ぽぽちゃんがねむけまなこでぼっーっとベッドに座っているとドアがコンコンコンッとノックされました。
小さな声で「はい」と返事をすると、おじいちゃんが入ってきました。
「ぽぽちゃん、よく寝られたかい?まだこんな時間だけれど、おじいちゃんと散歩にでも行かないかい?」
と、いつもの優しい声でそう言いました。
ぽぽちゃんは小さくうなずき、外に出るしたくを始めました。
2匹はゆっくり散歩に出掛けました。
朝の空気はとてもすんでいて気持ちがよく、自然とぽぽちゃんの気分も晴れていきました。その証拠に、おじいちゃんと話しているときの笑顔が増えています。
そして、ぽぽちゃんはゆっくり、少しずつ昨日あった嫌なできごとを全部おじいちゃんに話しました。
おじいちゃんはじっと話聞いてくれ、
「そうか、そんなことがあったんだな。嫌な思いをしたね・・・。」
と深くうなずきながら言いました。
「うん・・・・・・。」
そうぽぽちゃんが答えたあと、おじいちゃんは少し考えてからこう言いました。
「おじいちゃんはその月の模様は良いと思うがなぁ。」
「へ!?そ、そうかなぁ…、でもみんな笑い物にするよ?」
ぽぽちゃんは驚きながらそう答えました。
「ぽぽちゃんはチャーミングだから、からかいたくなるんじゃないか?おじいちゃんもそんな頃があったなぁ・・・。」
とおじいちゃんは遠い昔のことを思い出したかのように遠くを見つめました。
ぽぽちゃんは少し照れくさくなって「えへへ」と笑いました。
「でも見た目のことを言うのはあまりよくなかったね。」
とおじいちゃんは付け足し、
「ぽぽちゃんはもっと自信を持っていいんだよ。自分のいいなと思うところも、あまりよく思わないところも、愛して大切にすること。それが大事だよ。」
と優しく言いました。
「みんながなんと言おうとおじいちゃんはぽぽちゃんの味方だからな。」
とも言ってくれました。優しく、それでいて強い気持ちのこもった言葉でした。
ぽぽちゃんはとっても嬉しくなりました。
それから2人は散歩のとちゅうで出会った焼き芋屋さんから焼き芋を買い、それを食べながらお家へ帰りました。
ぽぽちゃんはとても足どり軽やかでした。