
3回目のバリ島バトゥール山
温泉で有名なバリ島のキンタマーニ地方。
(この地名をサラッと言えるか
どうかで在住者かそうでないかが
判明する何とも微妙な響き)
ここに来ると毎回ハッとさせらるのは
活火山のバトゥールだ。命が生まれる
遥か前に大規模な噴火を起こして、
その中心に居座る、二つの深くえぐれた
火口を見せつける山。
周辺には黒い溶岩台地が広がっているが、
山自体は緑に覆われていて、
冒険映画に出てきそう。噴火は久しく
していないが有毒ガスが出ている所があり、
この量が多いと山は閉鎖される。
かつて外国人登山客が犠牲に
なったことがきっかけだ。
そのバトゥールに登った。今回で3回目。
最初は、初めてバリ島に来た30年近く前、
2回目は小学生低学年の息子と、そして
今回はインドネシア人の夫と今年で23歳に
なった息子と3人だ。
今回は頂上まで1時間の場所から出発した。
この1時間が這って歩かなければならないほど
勾配が強く、行けども行けども頂上は見えて
こない。
やったこさっとこ頂上に着くと、まず質素な
売店があるがここはまだ低く、周辺には火口を
囲むようにいくつかのピークがある。
それを見て、疲れていたはずなのに
その全部に行きたい、と無性に思った。
緑がへばり付いた垂直の岩壁は
ジュラシックパークから抜け出してきたようで、
プテラノドンが飛んできても
おかしくない世界だ。
突然、神経が高ぶるのを感じた。
自然を前にこれほど昂奮するのは小学校の
遠足で初めて山に登った時以来だ。
あの時、木々の間から覗いていた湖の、
絵本から抜け出したような神秘的な色に
心を奪われた。今回は、これでもかというほど
長いオルガズムのように呼吸が荒くなり、
快感なのか痛みなのかすぐには分からない
あの独特な感覚に体が震えた。
たまたま傍に立っていたガイドの男性から
声を掛けられた。私がピークに登ろうとしている
のを察したようだった。
「前日の大雨で、道は滑りやすくなっている。
行くのは諦めた方がいい」売店があるところに
戻って、決めた。
雨季が明けたら絶対リベンジだと。