放送局法務部のお仕事紹介

本記事は、裏 法務系 Advent Calendar 2022(#legalAC)のエントリーです。
dtk(@dtk1970)さんより、バトンをいただきました。

今年、放送局に転職しました。

前職場には何の不満もなかったので、どうして転職したのかときかれれば、好奇心がいちばんの理由です。

放送局の法務部員の方って、あまりみかけませんよね。

どんな仕事をしてるの?
どうして法クラ界隈とかでみかけないの?
どんな訴訟を抱えているの?
芸能人に会えたりしちゃうの?(^^♪

…気になりませんか。
放送局の法務部が募集をかけていると知ったとき、わたしは↑の好奇心が抑えられませんでした

みなさんもきっとそう思っているにちがいないと確信しているので(自意識過剰)、放送局の法務部などんな仕事をしているのかを、入社〇か月の新入法務部員であるわたしが、紹介していこうと思います。

放送局の法務部の仕事内容

①訴訟対応

テレビ離れが叫ばれて久しく、テレビ受像機本体がご自宅にないという話もききますが、それでも、テレビ番組は多くの視聴者のみなさまにご覧いただいているようです(多謝)。

ニュース番組からバラエティ番組にいたるまで、放送局は、公共の電波を使わせてもらっているという自覚の下、誠実に番組を制作するわけですが、それでも放送した番組については、さまざまなご意見を賜ります。

あってはならないことですが、発信された情報が間違っている、放送によって名誉を棄損された、等とお考えになる視聴者等から、残念ながら訴訟の提起を受けることが一定程度あります。

②番組制作上のトラブル対応

訴訟までは至らなくても、(これもあってはならないことですが)番組を制作する上で、さまざまなトラブルが起こります。
出演者に関するトラブル、ロケ先でのトラブル、取材先とのトラブルなどです。

トラブル対応をされたことのある方ならわかると思うのですが、トラブルは、法律だけを使って解決できる場合だけとは限りません。
特に社内の法務部だと、法律以外のその周辺に目配りをすることの方が多いのではないでしょうか。

対応にご納得いただけないと、BPO(放送倫理・番組向上機構)に申し立てがされてしまったり、訴訟の提起がされてしまったりします。

③グループ会社でのトラブル対応

トラブル対応ばかりですね(汗)。

放送局は、意外にも多くのグループ会社とともにあります。
グループ会社の業種も多種多様です。

番組制作会社などはイメージしやすいと思いますが、近年では、M&Aでまったく異なる業種の会社に参画いただくことも多いです。

それなりの規模の会社さんであれば、それこそ法務部などがあり自社で対応をしますが、そうではない場合は、我々のところに相談が寄せられます。

④ビジネス契約のレビュー、新規ビジネスの相談

やっと出てきましたね。

契約書のレビューや、新規ビジネスの相談も、もちろん対応します。

規制業種という縛りがあるのであまりに突飛なことはできませんが、それでも放送局は生き残りをかけて日々新規ビジネスにチャレンジしています。

わたしのように中途採用で事業部に入社する社員も近年多く、新しい風を入れなければという意気込みを感じます。

⑤捜査照会への対応

少しユニークなところでいうと、警察からの捜査照会への対応という仕事があります。

何か事件が起きたときに、被疑者あるいは被害者の方が、「事件当時、室内にあったテレビで、〇〇という番組が放送されていた」と供述することがあります。

果たしてそれがほんとうか、警察から放送局へ照会が入るわけです。

「〇〇」が、番組名や出演者の状況までわかるようなはっきりとした情報であれば話はスムーズですが、もっとぼんやりした内容であることがあります。
たとえば、「〇月〇日の夕方16時から23時の間で、どの局の放送かはわからないが、警察のような制服を着た男性が出ていた」などです。

放送番組は、本来放送の目的のためだけに使われるものですので、放送局は安易には照会に応じません。
一定の要件を満たした照会にのみ、応じています。

ただ、かなしいことに、このような照会も年々減少傾向にあるとのことです。テレビ離れ・・・

⑥個人情報(視聴データ含む)関連業務

視聴者やサービスユーザーの個人情報の取り扱いに関する業務は、通常の法務部とあまり変わりません。

放送局特有のところでは、「視聴データ」というものがあります。
残念ながらこれについては、わたしにまだ詳しく語れるほどの知識がなく・・。

総務省資料のリンクを、そっと貼っておきます。
視聴データの現状(総務省)

⑦下請法関連業務

もう二度と!関わらなくてよいと思ったのに!!下請法!!!
(前職は、下請法上の親事業者ではなかった。)

ありがたいことに(棒読み)、放送コンテンツに特化したガイドラインがあったりもします。

雑感

・・・ということで、放送局の法務部員になったからといって、毎日芸能人に会ったり、急に肩にカーディガンをかけたプロデューサーとザギンにシースーを食べに行ったりするようになるものではありません(あたりまえだ。)

それでも、「あ、わたしテレビ局で働いているんだな」という実感を得られるような経験を、ちょっとずつさせてもらっているところです。

あと、仕事内容以外でうれしい点としては、映画やお芝居を観る人の人数が多い(みんなやっぱりエンタメ好き)ので話が合う、ということと、部員に元報道の記者さんがいるので、政治の話をナチュラルにできる、ということです。


戦争が始まったり、安部さんが撃たれたり、円安がひどいことになったり、宮台先生が刺されたり、ほんとに嫌な一年でした。

しかしながらありがたいことに、わたし自身の転職は、悪くないものとなりました。
新天地で、楽しくやっております。
以上です!

次は、dtk(@dtk1970)さんです。
・・・え、dtkさん、2回もエントリー?!



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