婚姻のこと
この度、自分の人生でただ一人この人が良いと思うほどに愛した人の戸籍がたまたま異性であったため、入籍にいたりました。子供に縁があるか否かはまだ未来の話で、ただ生涯共にしたいという志が一致した二人の人間がいるというだけなのですが、私は婚姻制度の恩恵を受けることができます。同じ願いを長い間持ちながら、それを理不尽な理屈で阻まれている方々がたくさんいます。全ての人に結婚の自由がある社会を心から望んでいます。
出会った時にこの人と結婚するという予感が走ったという話を各所で聞くたびに私は何も感じたことがないし、恋愛は下手だし、まだ同性婚が認められない日本の中で運命の人が男性以外である可能性も多分にあるし、結婚という形のパートナーシップには縁が薄いだろうと思っていましたが、縁あってクイズを通して学生時代に出会って以来長く友人として信頼関係を築いてきた人が配偶者になりました。
QuizKnockというグループの河村拓哉さんという人です。
最初から運命の人だと気付かなかったばかりにただの友人として格好つけることなく、しんどさや恥ずかしさや若さに付随した刺々しさを晒しあって、もう失うもののない丸腰になったところから恋に落ち、愛の形が変わり、この人は生涯自分を大切にしてくれるという信頼感を育むと共にこの人を生涯大切にできるという自分自身への信頼も生まれたので結婚に至りました。
何をきっかけに仲良くなったのか、初めて会ったのはいつなのかすらも記憶のかなたで朧げになっているのが正直なところですが、夫となる人に最初に抱いた印象は覚えています。
私は長いこと、容姿に対するコンプレックスに苦しんできました。
これは私が属した他の界隈と比べて彼と出会った界隈は特異的に女性の容姿に対して心ない言及をする人が多かったことが大きな原因の一つです。最近、それについて他の女性達と話をする機会を得て、ようやく言葉にすることができました。
勿論、大多数の心ある人は何も言いません。断固として許さないという姿勢を一緒にとってくれる人がいることを今は知っています。しかし、当時はその人たちの存在に気付けませんでした。
そんな時、初めて私の容姿への嫌な言及を否定してくれたのが当時初対面に近かった彼でした。
親しい人ならまだしもただの知人が自然に否定を言葉にしてくれるという事実に対する驚きが大きかったのですが、そこから信頼できると感じて次第に友人になりました。今思えばいつ好きになってもおかしくなかったと思いますが、彼に好意を抱くだけの自己肯定感が自分から根こそぎ持って行かれているうちに精神的に成長して落ち着いたことが功を奏して今に至ったと思います。
完璧なカップルであるかと問われるとお互いに常識外のことも多く、すり合わせていくのに困難はだいぶ大きかったです。付き合った当初は、絶対にこういう人とは結婚しないだろうなと度々思っていましたが、自分の予想ほど信じやすいのに当てにならないものもないなと思います。自分の想像の中にあったこうでなければいけないという思い込みは当たり前のことながら、自分の想像を超えることはなく、想像の外にあった彼の強さに裏打ちされた愛情深さの前には塵のように吹き飛んでしまいました。
多分、これからも互いに理解が足りないことはたくさん起きると思います。
続柄に油断して自分を甘やかすことなく、慎重に尊重していきます。
河村拓哉さんは私が夢を語れる数少ない友人です。
私にとって思い通りにならない姿を見せることになっても安心していられる人であり、未来について話せる人でした。その中のいくつかは長い年月の中で叶い、まだ地中に埋まっているものも同じくらいあります。
私は未来に多大なる希望を抱いており、まだまだ夢がたくさんあります。なので、これから先も失望したり絶望したり思い通りに行かずに格好悪い姿をたくさん晒して生きていくと思います。
他の人には見せられたものではない人生で隣にいてほしい人とずっと一緒にいることにしました。
人生の中の思い通りに行かない事柄から結婚生活だけは除外されるといった生ぬるい気持ちは持っていません。
結婚に求めることは昨日より幸せになることではなく、互いの命に、人生に昨日よりも責任を持ちやすくすることです。
縁あった人の幸せの中に私と結婚したことを加えられるように、そして私も同じだけ幸せであるように努めていきたいと思います。