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推しアーティストの舞台挨拶に行って盛大にモヤった話



ニ ノ 国 よ り は マ シ 。



 こんにちは、余白です。徒労感が凄い。

 先日、アニメ映画「僕が愛したすべての君へ」「君を愛したひとりの僕へ」連続上映会&舞台挨拶の場に行ってきました。

 無論、僕愛の主題歌を担当した須田景凪目当てです。チョロいヲタクなもんで須田が舞台挨拶出るよ! ゲスト声優やるよ! などと餌を差し出されれば景凪のためならエンヤコラとホイホイ釣られてしまう性なのです。
 結果、名伏し難きモヤモヤ感に苛まれながら帰路に就く事と相成った。

 以下、僕愛&君愛のネタバレガッツリ感想です。
 如何せん話が複雑かつ原作未読なんで、見落としや私の勘違い等あるかもしれませんが、初見で感じた生の感想って事でそこは一つよろしく(思いっきり間違えていたら指摘していただけると幸いです)
 あと、個人的にこの作品における須田景凪の扱いについて、どうにもこうにも不満募り募ってますのでそこらへんも書き連ねていきます。ほんとにね、あと100年は呪えますよこれは(執念深いオタク)




○ヒロイン格差あり過ぎ


 まず大前提として、この物語の軸は君愛世界であり、僕愛世界は君愛の暦が栞を救うために見つけ出した平行世界なんだぞ~という背景があります。
 ラストまでメチャクチャざっくり説明するなら、

○君愛世界の暦と栞は互いに将来を約束するレベルの間柄になっていたけど、それぞれの親同士も良い雰囲気になっちまったためにこりゃ将来結婚出来なくなんぞと並行世界への逃避行を試みるも失敗。

○暦は無事元の世界に帰ってこれたものの、栞はパラレル・シフト(平行世界への移動)先で事故死してしまったために肉体を失い虚質(意識みたいなもん)のみの存在となってしまう。元の世界の栞は脳死状態、後に完全に死亡。行き場を失った虚質は、事故現場である昭和通り交差点で連日待ちぼうけする幽霊的な何かになってしまう。

○暦は研究者となってパラレル・シフトを繰り返し、"栞が事故に遭わなかった世界"を探し出そうとするもどの世界の栞も同じ運命を辿っている。

○何でかって言うと事故の際、二人同時にパラレル・シフトした影響で、暦がシフトすると幽霊状態の栞まで自動的に同じ世界へシフトしてしまう難儀なシステムが出来上がっていたから。

○暦は生活が荒れたり酒に酔って栞相手にクダ巻いたり色々しながら研究に没頭。ある日、同じく虚質研究者となっていた和音と出会い、パラレル・シフトならぬタイム・シフトの概念を導き出す。タイム・シフトで"二人が出会わなかった世界"に行けば事故を回避出来るし、栞が幽霊状態から解放されんぞ! と暦は夜神月みたいな悪人面で歓喜する。

○ただしパラレル・シフトとは違い、タイム・シフトは現在の虚質が過去の虚質と融合(?)し消失してしまうため、人格も記憶も残らない。つまり君愛世界の暦は脳死、幽霊状態の栞は肉体を得て、それぞれ新たな暦&栞としての人生を歩む事となる。

○栞との再会を約束した暦は和音の協力を得て、"二人が出会わなかった世界"=僕愛世界の暦が"66年後の8月17日午前10時に昭和通り交差点へ行く"よう仕込んでおく。

○僕愛世界で老人となった暦(君愛の暦の虚質融合済み)と、事故に遭わず老婆となった栞が昭和通り交差点で出会って終わり。

 どうでしょうか。ガッツリSF要素入ってくるのでやや複雑ではあるものの凄く良い話でしょう。私もそう思います。和 音 が 報 わ れ て さ え い れ ば 。

 そう。ストーリーラインを見ても分かる通り、僕愛君愛は(君愛の)暦と栞の物語なんですねぶっちゃけ。大前提として君愛があって、僕愛はあくまでその補完という感じ。
 そのためメインヒロイン・栞とサブヒロイン(兼負けヒロイン)・和音と完全に分けられてしまっており、両作品にそれぞれ別のメインヒロインがいると思って観るとたまげると思います。つーか私はたまげた。君愛での和音は完全なる負けヒロイン役に甘んじてますし、無事結ばれたと思われた僕愛の方でも、最終的には栞が全部持っていくため不完全燃焼気味になってしまうという悲惨さ。
 いや、僕愛の暦は浮気とかしないし、ちゃんと和音を最後まで愛してるんだけどさ。でも僕愛のラスト付近であまりに君愛要素が干渉してくるもんだから、それまで培ってきた暦と和音の関係性に水を差された状態になってそれが個人的に微妙過ぎた。君愛要素出現の展開がすげー唐突だったのもあってか余計に不憫感強まったね。

 しかも、僕愛にしろ君愛にしろ和音というキャラクターが凄く生き生きと魅力的に描かれてるので、観てる側としてはまるで報われない展開にフラストレーション溜まるわ溜まるわ。

 特に君愛では暦の協力者として大いに貢献し、彼を長年支え続けたにも関わらず負けヒロインで終わってしまうので不憫さのインフレが凄い。一応、本人的には平行世界(僕愛世界)で暦とデキるっぽいから満足だわ~的な感じらしいんだけどお前それで本当にいいのか。人生の殆ど賭けて暦追ってきたんだぞ。僕愛ラストで君愛世界からの唐突な依頼に協力した老婆和音も、息子を失った世界にあっさり帰っていった母親和音もそうだけど、全体的に和音というキャラの物分かりが良過ぎて困惑する。
 ここらへん、和音の葛藤にフォーカスした一悶着あっても良かったのになぁと思いました。まぁ、恋愛感情を伴わないパートナーとしての関係性も格好良いんだけどさ……報われない系ヒロインは一定の需要あるしな……。

 一方の栞は物語における実質的なメインヒロイン兼勝ちヒロインですが、和音と比べるとキャラ立ちやや弱めなのがどうにも残念。
 序盤に死亡してしまうため立場上守られお姫様ポジなのは仕方ないのですが、特にこれと言ったアクションを起こす事なく殆どいるだけヒロインになっていたのが非常に惜しかった。せっかく暦が研究に入れ込む余り荒れた描写があったのだから、はわわ……💦と戸惑うばかりでなく一発暦に喝を入れて励ますとか、タイム・シフトの手掛かりとなるキッカケを与えるとかもっと見せ場が欲しかった。生前勝手にIPカプセル弄ったり、家出シーンで自転車乗り回して夏満喫してるシーンとか良かったのになぁ。

 あと「どの世界の君にも、きっとまた恋をする」ってキャッチコピー。意味合い的に僕愛へ向けたキャッチコピーだと思うんだけど、ラストがアレだから今一つ腑に落ちない言葉になっちゃってるし、そもそも平行世界の君愛では完全負けヒロイン役で暦の眼中にないしで詐欺コピーじゃね? と思うのですがどうですか。君=栞なんか? と考えても、君愛の暦はどの世界もクソもなく目の前にいるリアルガチ栞にしか興味ないからどの道詐欺ってるような。
 きっとまたっていう曖昧な言い方だからオーケーとかそういうノリか。行けたら行くわ的な。


○どちらから観ても楽しめなさ過ぎ


 僕愛君愛最大のウリと言えば"観る順番によって結末が大きく変わる"ですが、ハッキリ申し上げます。君愛から観ないと諸々意味不明で脱落します(泣)

 さんざっぱら前述した通り、君愛が軸にあり僕愛はその補完という構成故、僕愛から観ると説明不足(ある意味では説明過多)過ぎて世界観に入り込みにくいでしょう。虚質や平行世界、パラレル・シフトなど世界観を構築する要素は君愛の方が分かりやすく解説されてるし、何より物語の大前提が描かれているので個人的には君愛から観る事をオススメします。

 連続上映会は投票により僕愛から始まったので、私は僕愛から観たんだけどまぁ~~~意味不明だったからね。序盤の幽霊・栞との邂逅シーンで?となったし、ほぼセリフのみで進行する専門用語だらけな世界観説明は全体像を理解するのに時間かかったし、やっと主役二人の恋模様が描かれたぞ~と思ったら殆ど伏線なく君愛要素突っ込まれて、新宿エンドもかくやと思われる弩級の置いてきぼり食らったまま終演を迎えるという。始終、頭に疑問符浮かべながら映画観たのってゲド戦記以来だよ。これは私の理解力の問題もあるし、原作履修済みかどうかでもかなり変わってくるとは思うが。

 とはいえ君愛から観れば十二分に楽しめるかと言うと、どっこい君愛の方でも伏線なく僕愛要素が突っ込まれるわ、ラストの会話で疑問符浮かぶ事必至だわでやっぱり意味不明な部分はありそう。ダメじゃん。

 細けぇ事は良いんだよ精神で乗り切ればまぁまぁ楽しめるかもしれんが、少なくとも片方だけ観て物語全体を理解するのは困難ですし、君愛前提の話なので"観る順番によって結末が大きく変わる""どちらから観ても楽しめる"という売り文句もキャッチコピー同様に微・詐欺ってる気がしますね。

 確か須田景凪は「単品でも楽しめます♨」と言ってた気がするんけど、具体的にどこらへん観て単品で楽しめると思ったのか配信に凸りたいレベル。すし海道じゃねえんだぞ。


○作品格差あり過ぎ

 それでも君愛前提の話っていうのはまだ良い。ストーリー自体は凄く良いし、ガッツリSFな世界観も個人的には面白いと思えた。
 最大の問題は、君愛に力を入れる余り僕愛がとことん雑に描かれていたという点。これは推しアーティストが主題歌担当してる事抜きにしても本当に解せなかった。

 後述するのですが、作画と言い声優と言い演出と言い、何から何まで雑な作りで観ているのがしんどくなるほどだった。おまけに各シーンの繋がりが毎回唐突&伏線ほぼナシなもんだから余計辛ェ。監督が描きたいシーンだけ原作から抽出して繋ぎ合わせたとしか思えないレベルの行き当たりばったりぶりよ。君愛から観れば世界観等の補足になるからまだマシかもしれないけど、僕愛から観ると色々意味不明なのでしんどさ倍率ドンです。

 しかも説明がくどくどくどくど長ェのなんのって。割と序盤の方から暦の棒読みモノローグと専門用語だらけな説明シーンが度々差し込まれていたので嫌な予感はしていましたが、絵で見せれば良い部分まで「こうして僕達の研究により、人々の生活は変化し始めた。まず初めに……」みたいな極めて淡々とした解説が都度ぶっこまれるからキツい。あのさ、アニメなんだから絵で見せてよ。
 おかげでアニメを観ているというより教育テレビか何かを眺めている感覚で、世界観への没入度が海苔の数倍薄かったね。信じられるか? 説明過多なのに説明不足とかいう物理法則無視した怪奇現象がこのアニメでは起きるんだぜ? 気が狂うわ。君愛みたいにストーリー上で自然と理解出来るようには作れなかったのか。

 あと、科学技術が発展していて平行世界の存在とパラレル・シフトが認知された世界ってのを強調していた割に、全然そう見えないのもどうかと思ったね。これは君愛にも言えるんだけどさ。どう見ても主人公周りにしか平行世界の存在を示唆する要素がないし、IP端末の普及率がどんなもんかも分かりにくくてホンマに科学発展してる? デジタルっぽいガードレール描いて満足してない? と訝しんだよ。
 ちょっとしたパラレル・シフトが当たり前なら、クラスメイトが突然シフトして戸惑うとか、道行くモブがふとIP端末見て「あ、ここ○○番目の世界か」と呟く様な、そういう何気ない描写が欲しかった。シフト由来の奇行を起こした暦に通行人が怯える場面も「ロスでは日常茶飯事だぜ!」的な感じで描けば良かったのに。思いっきり白い目向けてきてるもんねモブら。面白い設定なのに世界観にイマイチ組み込めてない感じ、本当に勿体ないと思う。


○作画雑過ぎ


 不満の6割くらいはもしかしたらこれにあるかもしれない、ってくらいマジで作画が酷かった。
 そもそもキャラデザからして平成初期の青春泣きエ○ゲみたいな何とも言えぬもっさり感あるんだけど、これが更にちょくちょく崩壊するもんだから観客は阿鼻叫喚よ。

 特に僕愛な。幼少期の暦がインスマス顔でドタドタ転ぶシーン、三ヶ月くらいトリミングしてない様な毛並みのユノ、不安な気分になる飲食シーン、顔面の安定しない暦、頭身のバランスがおかしい登場人物などなど挙げたらキリがないくらい酷かった。それも一場面だけメチャクチャに崩壊するのではなく、観ていて何となく違和感のあるビミョ~~~な作画崩壊が最初から最後まで延々続くもんだからこれはもう手抜きでしかないよなと。君愛に作画リソース割き過ぎて力尽きたんか? せめてヒロインの和音は一秒足りとも崩壊させぬ気概で描き切ろうや。

 僕愛を犠牲にした賜物なのか、君愛はだいぶ綺麗な作画で主役二人は殆ど崩壊する事なくカッコ良く&可愛らしく描写されていました。
 特に栞に関してはかなり気合入っていて、IPカプセルの中に二人で横たわってる時やラスト付近のアップはメチャクチャ丁寧で綺麗だった。あぁここにも和音とのヒロイン格差感じますね~……君愛の大人和音は美人に描写されてたけど。でもネックレスのチェーンが長い間消滅してたり(このネックレスのセボンスター感も酷い。ヴァンクリクラスとは言わんからせめて4℃レベルにはしてくれ)、パンツがパッツパツ過ぎてカラータイツ一枚で出歩く変態状態とかあったしな。

 とはいえ主役二人に力入れ過ぎたせいか、相対的に周辺人物の作画の不安定さが強調されてやっぱり何だか残念な出来になってた。終盤は僕愛のシーンで尺稼ぎが出てくるためそこだけ急に作画ガッタガタになって違和感凄いし(逆に僕愛は急に作画良くなるから逆の意味で違和感あるという)
 あと、両作品共に自転車移動のシーンが前衛的過ぎてな。スーッと横移動するとこはもうギャグでしょ。バタバタ蠢く脚と栞の脚パッカーンで泣いた。

 作画とは直接関係ないけど、僕愛に出てきたイベントのオブジェが異様にグロテスクで恐ろしげだったのも何だったんだ。使徒かよ。

 男女の描き分けすら出来ていないもっさり作画のニノ国、うごメモの方がまだマシ説すらあるDog Starなど、須田景凪が関わるアニメは作画崩壊させないといけないとかいう決まりでもあんのか。どうせ崩壊するならダイナミックコードくらいぶっ飛んでくれ。名作だからよ(違う意味で)


○演技棒過ぎ


 これは各地で散々言われてる事ですが宮沢氏の演技が棒過ぎて棒過ぎて。

†感情を失った†系主人公だと思わなければやってらんないくらいの棒っぷりにある種の感動すら覚えた。僕愛序盤の和音に絡まれて困惑するシーンは「え?」や「あ、あぁ」みたいな曖昧なセリフが多いのですが、ワタクシ思いっきり台本読んでおります~~!! 感満載の演技もへったくれもない声音でこれよく通ったな……と。ニノ国の山崎賢人とどちらがより棒力あるかチキチキ棒決定戦やってほしい。

 君愛の方ではだいぶ上達していたものの、始終ぼんやりしてる僕愛とは違い感情を爆発させるシーンが多いからか棒っぷりが更に強調されてしまう事態に……栞の件で父親と所長に啖呵切るシーンとか、必死な表情と今一つ激情に乗り切れてない棒演技との食い合わせ悪過ぎていっそ痛快ですらあった。

 一応、暦のキャラ造形が大人しい(君愛ではクール系)秀才なので、淡々とした演技はキャラに合ってると言えば合ってるんだけどそれにしたって棒過ぎだろと。なまじ幼少期と老後はプロの声優さんが当てており、家族などの周辺人物もプロで固めてる分余計に棒っぷりが際立つ事よ。俳優で釣らず、素直にプロにお任せしとけば暦ももっと魅力的なキャラになっただろうに。

 反対に和音役の人は理知的でクールだけど喜怒哀楽の激しい役に合った演技だったし、学生と大人の演じ分けもきちんとしていたので比較的違和感は少なかったと思う。特に、泣いたり笑ったりする演技は凄く自然で良かった。
 栞役の人は悪くはないんだけど、一本調子でぽつぽつ喋る演技だったから表情豊かな栞のキャラにイマイチ合ってない気がした。暦もだけど顔と声のトーンがチグハグな場面多いんだよな。和音のキャラが立ってて栞が今一つに感じたのって演技が良いかどうかも相当関係してそう。

 それからゲスト声優としてモブ役に挑戦した須田景凪ですが、事前情報通り本当に一言のみながら案外違和感なくハマってました。私は一級須田景凪ソムリエなんで一発で彼だと分かったけど、あれは聞き逃すオタク続出するのも致し方なし。
 多分、宮沢氏が棒だったから相対的に綿棒くらいにはなれてたんだと思う須田さん。命拾いしたな。


○主人公怖過ぎ

 これは観る人の好みによって捉え方変わってきそうですが、君愛の暦がサイコに片足突っ込んでてちょっと怖かった。一途っていうか単純に執念深いんよ。作中だと僕愛の暦が「人の心ない」「デリカシーない」と他キャラにdisられてたけど、どう見ても君愛の暦の方が人の心もデリカシーもねえよ。愛する人を救いたいという想い自体は美しいんだけどさ。

 栞を救えるなら(おそらく自分や平行世界の栞含む)他の人間がどうなっても構わないと言い放ち、栞本人からもうやめてと言われても自分の意思を貫き通し、ひたすら"栞が事故に遭った世界"を憎み続ける様はもはや狂気。
 こういう目的の為なら手段を選ばないキャラは個人的にかなり好きですし、意志を貫徹する姿は格好良くもあるのですが、これ、純愛アニメの主人公なんだよね……? ハンニバル・レクター博士とかヨーゼフ・ハイター博士とかじゃないんだよね?? 暦のマッドサイエンティストっぷりが✨切なくて泣ける純愛作品✨という触れ込みと凄まじく乖離してる印象は否めなかった。

 なまじ、マッドな暦を健気に支え続ける和音が魅力的に描かれていた分、暦が栞を助ける理由が愛しているからではなく並々ならぬ執念・執着に由来してそうなのもまずかった。これ最初から純愛作品ではなく、狂気的な愛を描いた作品と宣伝した方が良かったんでねえか。キャッチコピー詐欺やあらすじでは全くと言って良いほど触れられてないガッツリSF要素もそうだけど、全体的に僕愛君愛ってプロモーションが実際のお話からズレてるんだよな~……。


○演出シュール過ぎ


 主に君愛を観て思った事ですが、演出が絶妙に微妙だったのも気になった部分でした。

 色々雑な僕愛と違い、作画もストーリーの流れも比較的丁寧に描かれていた君愛。当然ながら挿入歌も主題歌も効果的に使用されており、作品の盛り上げに大いに貢献していました。流れるタイミングとか完璧で凄く良かった。制作が楽曲に対して敬意を払っている事が感じられて羨ましくなったよ(※後述)

 しかし、曲が入る時の演出がやたらシュールなのはどうにかならなかったのか。暦と栞が家出を計画して夏満喫しようぜ! レゲエ砂浜ビッグウェーブ!! と決意するシーン、手を繋ぎ合った二人が暴風に煽られた風力発電機よろしくグルグル高速回転するってどうなんだ。ノリノリなイントロに合わせて互いの顔をくるくる~っと見せていく場面までは良かったのに。疾走感あり過ぎというか、すげー前衛的な演出で軽くポカーンとなったぞ。
 
 エンドロールはエンドロールでこれまたシュール。IPカプセルの起動と同時に曲が始まって二人が虚質の海に落ちていくシーン、ちょっと感動するくらい秀逸な演出なのに、エンドロール終わりで抱き合っていた二人のシルエットがスーッ……と離れて画面外に吹っ飛ばされていったんで余韻が一瞬で喪失した。もっと、こう……名残り惜しげにゆっくり離れて海の中にふっと消えるとか、そういうのじゃアカンかったんか。

 あと、タイトル表示がやたら物々しくて古畑任三郎みたいだったけど、もっと青春恋愛映画っぽいピュアなデザインには出来なかったのだろうか。サスペンスだろあれ。暦のマッド具合を不穏なフォントで暗に表現していた可能性が……?(ない)


○須田景凪の扱い雑過ぎ

 

これはマジで絶ッッ対に一生涯許さねえ。


 作画が酷いのも声優が棒なのも百歩譲ってまだ許せる。僕愛と君愛で妙な格差があるのもギリギリ仏の心で許せる。だがあの主題歌の使い方はどうにも許せない。あまりに雑オブ雑。アーティストに対しても曲に対しても一切の敬意を感じられない、全く酷い消費のされようだった。

 何でこんなにブチギレてるかって言うと、僕愛のエンドロール、何と曲の尺が足らなくて途中から全く別のBGMに変わってしまうんですよ。嘘でしょ???????

 色々疑問点は残るとはいえ、暦と和音の物語が終わって主題歌「雲を恋う」のシビれるリフと抒情的な美しい歌詞に胸を打たれていたのも束の間。突如として割り込んでくる能天気なBGMに、余韻が雲の上まで吹っ飛ぶ事間違いなし。なんだあの気の抜けた曲。あの締まらなさ。四八(仮)のエンディングかよ。

 おまけにここでも君愛との格差が浮き彫りになってまして。
 向こうが秀逸な演出と共にアニメーション付きでエンドロールが流れるのに対し、こちらは何の変哲もない真っ黒背景のみという手抜きっぷり。君愛の様にエンドロール終わりの後日譚的な一幕もない。余韻もない。ついでに言えば感動の一切もない。

 絶句した。監督も製作も異なるとは言え、ここまで差を付けてくるのかと。

 尺が足らないならエンドロールを少し早めに送るとか、関係者の名前を詰め気味にするとか、色々やりようはあった筈。手抜き過ぎるけど「雲を恋う」をもう一回流すとか、何なら挿入歌の「落花流水」をワンコーラスだけ流すとかそういうのでも良かった。別のBGMで上書きするのは一番やっちゃいけない事だった。酷い。あまりに酷過ぎる。

「雲を恋う」だけじゃない。「落花流水」の使い方も許せなかった。なんでここ? と思わざるを得ないよく分からない場面で流すわ、暦の冗長なモノローグと丸被りだわでちっとも画面と合っていなかった。君愛は曲の魅力を最大限引き出す使い方してるのに。もしや僕愛の制作は曲とストーリーのシンクロとか、そういうの気にしないアレか? 貰った武器は上手く扱えよ。何のための曲だよホント。

 とはいえ、この作品における須田景凪の扱いが妙に雑なのは以前から薄々感付いていた事で。
 トークショーイベントを「宮沢&サウシー 人生の岐路」とかいうまるで須田が存在していない様な見出しで紹介したうえ彼の発言を丸々カットしたり、どのネットメディアにおいても宮沢氏とサウシーのメンバーがメインで取り上げられて須田は精々オマケ的な扱いだったり、ラジオで映画の紹介時に「紫苑」は流れるのに「雲を恋う」はスルーされたり……。
 私が厄介ヲタ故に気にし過ぎるだけか? と戸惑っていたが、このエンドロールで確信したね。須田景凪が、須田景凪の曲が制作側から軽視されている事をまざまざと見せ付けられてしまった。切なくて泣けるってこういうのじゃねえだろ。

 たかが主題歌、たかがエンドロールと言われてしまえばそれまでだが。でも一ファンとして本当に悲しかった。と、同時に憤りも覚えた。今回の舞台挨拶だって半分くらい須田のファンを釣ってる様なもんなのに、映画本編でこの仕打ちをかますとかアツ過ぎないか。面の皮。

 本当はサウシー呼びたかったけど対バンで忙しいってんで呼べず、仕方なく須田を出したのか? トークショーと言い、AUプレミアムの宣伝と言い、セット売りサインと言い、異様にアーティスト推していたのはサウシー推したかったからなのか? 須田をオマケの客寄せパンダとして利用している感じ強かったもんなぁ……とか何とか邪推が止め処なく渦巻く事よ。もうさ、僕愛君愛一作にまとめて曲もサウシー一本にしときゃ良かったんじゃねえの。スッキリすんだろそっちの方が(なげやり)

 当然ながら宮沢氏とサウシーは何も悪くない。彼らに悪感情は一切ない。ましてや須田を彼らより目立たせろとか、一番に優遇しろとかそういう事が言いたいわけでもない。
 ただ平等に扱ってほしかった。アーティストとその曲に対して最低限の敬意を払ってほしかった。オタクは悲しい。




 そんなこんなで色々と残念な出来だった僕愛君愛。

 一作だけでは意味が分からず、さりとて二作続けて観るとクオリティの違いに肩透かし喰らうという何とも不思議な作品でした。

 平行世界の存在が認知されているというSF世界はありそうでなかった斬新な設定で面白いし、二作同時公開という手法も世界観を活かしたストーリーラインも挑戦的で良かった。
 ただ、純愛作品という点をプッシュし過ぎて色々詐欺起こしていた点と、作画と声優が残念過ぎる点、作品格差ある点が凄まじいマイナスポイントとなってしまい、結果として虚無の後味になってしまった印象。この徒労感は、他じゃそうそう味わえないよ。

 そして舞台挨拶ね。四時間かけてモヤモヤと恨みつらみを募らせるというマゾ体験をした後の須田景凪は一服の清涼剤でしたよ。
 あの落ち着いた声と控えめな立ち居振る舞いは五臓六腑に染み入るね。質問に照れたり、宮沢氏や乙野氏の言葉にうんうん頷きながら聞き入ってたり、銀テの音に怯えたりする様子も𝑺𝒖𝒑𝒆𝒓 𝑮𝒐𝒐𝒅だった。俺の推しは歌ってなくても最高なんだって事を実感しちゃったね。

 しかし、須田景凪のありあまる魅力を以てしても胸中に蟠る靄が晴れなかったのは口惜しいところ。主題歌の件があまりにショックでそこまで沸けなかったんだよ。ウソだろ? ちょちょいっと歩いていけば話しかけられるくらいの場所に須田がいるのに。これは悲劇と言える。

 自分でもお前考え過ぎだろと思うのですが、何かトークショーとかAUプレミアムの宣伝とか、この映画と組んで以降の須田さんの"やらされてる感"が見ていて何となくキツくてな。本人が実際どう思ってるかは分からねえけどよ、こういうプロモ的なメディア露出向いてないんじゃと最近思うよ。

 トークショーでの虚無顔とは打って変わって生き生きとしていたワンルーム・ミュージック、舞台挨拶ツイートだけガン無視決め込んでた件。色々考えてしまって舞台挨拶中、半分熱くて半分冷めてるというアフォガードめいた気分になってしまった。
 景凪君のスーツ姿カッコ良い♡間近に景凪君がいる♡一緒に写真撮れちゃった♡とはしゃげたならどれほど楽しかったか。厄介キモ・オタク、キツ過ぎンだわ。

 しかし、多忙な中ファンの前に姿を見せてくれたのはどうあれ有り難い事。ありがとう須田さん。オタク、明日も頑張れる。


 想定よりもねちねち長々と書き殴ってしまった。
 ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました。ご鑑賞の際はどうか原作を履修済みのうえ君愛から観るのをオススメします。

 あと、冒頭にも書きましたがニノ国よりはマシでした。繰り返します、ニノ国よりはマシでした。だからなんだって話だけどさ。


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