池袋"パパ活"傷害致死事件
令和4年1月21日金曜日の夜 東京・池袋のホテルで、82歳の男性を殺害した26歳女に対する判決が、令和6年2月20日、東京地裁で言い渡されました。
罪名:窃盗罪・傷害致死罪・銃刀法違反
判決:懲役6年
強盗殺人罪ではなく、窃盗罪と傷害致死罪での判決となったことに対して、ネット上では「女割だ」などの批判が上がっています。
なぜ、強盗殺人ではないのか、徹底解説しようと思います。
【1】強盗罪の成否
まず「強盗罪(刑法236条)」とは、「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取」することです。つまり、強盗罪が成立する場合とは、①暴行・脅迫→②盗むという順序になります。
今回、財布を盗んだ後に被害者を刺している為、強盗罪ではなく「事後強盗罪(刑法238条)」の問題となります。
事後強盗罪とは、「財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪証を隠滅するために暴行又は脅迫を」することです。つまり、強盗罪とは違って、①盗む→②暴行・脅迫という順序になります。
また、条文より、その「暴行・脅迫」は、
①取り返されることを防ぐ
②逮捕を免れる
③罪証(証拠)を隠滅
のいずれかの目的を持って行われる必要があります。
今回、女は「突発的、衝動的に被害者を刺突するという行動に出た」とされる為、上記①~③の要件には該当しないと考えられます。そうであれば、事後強盗は成立しません。
【2】殺人罪の成否
まず、殺人罪の成立に重要な要件の1つとは「殺意」です。これが殺人罪と傷害致死罪を分けることになります。殺意とは「人を死に至らしめる危険性の高い行為をすることの認識」です。簡単に言えば「これをやったら人は死ぬだろうな」という認識です。
この故意の有無は、
①殺害の方法
②傷の場所や程度、量
③殺害の動機
④前後の言動
などのあらゆる観点から判断されます。
東京地裁は、突発的・衝動的な犯行であり、また、それが軽度な知的障害に起因するものであることから殺意は認定しませんでした。ちなみにですが、障害による責任能力の有無については争われませんでした。
【3】まとめ
以上の理由により、強盗殺人罪ではなく、窃盗罪と傷害致死罪の成立に留まりました。ネット上にある「女割だ」「男なら厳罰なのに」のような批判は、事実に基づかない勝手な憶測でしかありません。令和5年の刑法改正(不同意わいせつ・性交等罪)以降、司法で女性が優遇されている旨の批判が多数挙がっていますが、今一度、ネットの情報を鵜呑みにしないようにお願いします。私のこの解説も鵜呑みにするなという話になりますが、何が正しいのか合理的に判断していただければ幸いです。
参照
・《池袋82歳“パパ活”殺人》身寄りのない“孤独老人”はなぜ殺されたのか? 24歳の容疑者は元恋人に金を貢いでいたが… 「池袋アンダーグラウンド」のリアル | 文春オンライン (bunshun.jp)
・女はなぜ体を売り客を刺したのか…障害つけ込み売春強要「恋愛感情利用」判決が述べた池袋“パパ活”死亡事件の背景(FNNプライムオンライン) - Yahoo!ニュース
・刑法 | e-Gov法令検索
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