道交法改正~自転車に青切符~

令和6年3月5日、警察庁は、道交法の改正案を発表しました。自転車に対する反則金制度の導入など、主に自転車に関するルールが変更されました。今回は、改正された内容を解説したいと思います。

[1]モペット(フル電動自転車)
ペダルを漕がなくても進むことができるフル電動自転車、通称「モペット」
内容に変化はありませんが、ペダルを漕いで進む場合であっても、自転車ではなく「自動車」や「原付」として扱われることが明確化されました。

改正道交法2条1項17号
運転 道路において、車両又は路面電車(以下「車両等」という。)をその本来の用い方に従つて用いること(原動機に加えてペダルその他人の力により走行させることができる装置を備えている自動車又は原動機付自転車にあつては当該装置を用いて走行させる場合を含み、特定自動運行を行う場合を除く。)を言う。

国会提出法案|警察庁Webサイト (npa.go.jp)

[2]減速義務
特定原付等以外の車両は、同じ方向に進んでいる特定原付や軽車両(以下、特定原付等)の右側を追い抜く場合、安全な間隔が取れない場合には、その間隔に応じた安全な速度で進行する義務が課せられました。もちろん、安全な間隔が取れる場合や特定原付等が特定原付等を追い抜く場合には、発生しません。

なお「追い越す場合を除く」とある為、この義務は、追い越し時には適用されませんが、その代わりに、現行道交法28条4項で、既に追い越し時の安全な速度と方法での進行義務を定めている為、これに基づき、必要に応じて減速等の義務が生じることとなります。

罰則は、3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金です。

改正道交法18条3項
車両(特定小型原動機付自転車等を除く。)は、当該車両と同一の方向に進行している特定小型原動機付自転車等(歩道又は自転車道を通行しているものを除く。)の右側を通過する場合(当該特定小型原動機付自転車等を追い越す場合を除く。)において、当該車両と当該特定小型原動機付自転車等との間に十分な間隔が無いときは、当該特定小型原動機付自転車等との間隔に応じた安全な速度で進行しなければならない。

国会提出法案|警察庁Webサイト (npa.go.jp)

現行道交法28条4項
前三項の場合においては、追越しをしようとする車両(次条において「後車」という。)は、反対の方向又は後方からの交通及び前車又は路面電車の前方の交通にも十分注意し、かつ、前車又は路面電車の速度及び進路並びに道路の状況に応じて、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。

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[3]左寄り通行義務
前項に規定する場合、すなわち「車両が特定原付等の右側を通過する場合において両者の間に十分な間隔がないとき」には、特定原付等側もできる限り道路の左側端に寄って通行する義務が課せられます。

しかし、前項は「追い越す場合を除く」とされている為、この義務も、追い越される場合には適用されないと考えられます。特定原付は、その代わりに、追いつかれた車両の義務が発生するため、特段の問題はありませんが、法定の最高速度が無い軽車両には適用されず、これ以外の代わりとなる規定もない為、罰則が科せられない状態という、法の抜け穴が生じてしまっています。この部分をどう扱うのか、個人的に気になる点です。

罰則は、5万円以下の罰金です。

改正道交法18条4項
前項に規定する場合においては、当該特定小型原動機付自転車等は、できる限り道路の左側端に寄つて通行しなければならない。

国会提出法案|警察庁Webサイト (npa.go.jp)

現行道交法27条2項
車両(乗合自動車及びトロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、最高速度が高い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路の右側端。以下この項において同じ。)との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合においては、第十八条第一項の規定にかかわらず、できる限り道路の左側端に寄つてこれに進路を譲らなければならない。(後略)

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[4]反則金制度
従来、悪質な交通違反に対しては、「赤切符」が、それ以外の交通違反に対しては、法的拘束力の持たない「イエローカード」と呼ばれる指導警告書の交付に留まっていましたが、この改正では、自転車に対しても「青切符」が交付されることとなります。これにより、自転車に対しても反則金が科せられることとなります。しかし、交付されるのは、悪質な違反に限られる方針とのことです。なお、対象は16歳以上の者です。

また、反則金の額は、原付と同等とする方針だそうです。詳しい額については今後決定されますが、参考までに警視庁HPを載せておきます。

なお、駐(停)車禁止違反については、特定原付も対象となっている為、同様に対象に含まれる可能性は否めませんが、予想なので悪しからず。

↓警視庁HP
反則行為の種別及び反則金一覧表 警視庁 (tokyo.lg.jp)

[5]罰則の追加
これまで罰則が無かった自転車に関する以下の交通違反に対して、新たに罰則が追加されました。

酒気帯び運転(3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)
 →酒酔い運転のみが処罰対象で、酒気帯び運転は対象外
酒類提供罪・同乗罪(2年以下の懲役又は30万円以下の罰金)
 →自転車の飲酒運転者へのお酒の提供やその自転車の同乗者の罰則は無し
携帯電話使用等(保持)(6カ月以下の懲役又は10万円以下の罰金)
 →各都道府県の条例違反に留まり、そもそも対象外

なお、3つ目の違反については、交通反則通告制度の対象となります。

[6]仮免許

これまでの普通・準中型の仮免許の年齢制限は18歳でしが、今回の改正により、17歳6カ月に緩和されました。

一方で、本免許自体は、変わらず18歳が基準なので、どれだけ早く自動車学校を卒業したとしても、18歳にならない限り、免許は得られませんので、ご注意ください。

[7]まとめ
自転車の悪質な運転と交通事故が多発していることを受け、本格的な規制強化が進められています。自転車は、運転免許試験を受けずして誰でも乗れるが故に、交通ルールの周知が不十分な現状があります。しかし、「知らなかった」では、通用しません。各都道府県警察や自治体等が自転車の交通ルールについて、詳しく、かつ分かりやすくまとめているので、あまり知らない人はもちろん、知っていると思っている人でも、改めて一読することをお勧めします。案外、知らないルールがたくさん載っています。

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