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激ムズ漢字「ビャンビャン麺」、食べに行ってわかったガチ中華の奥深さ

中国一画数が多い「ビャン」という漢字が息子の中で一時期大流行していたのをきっかけに、神保町までビャンビャン麵を食べに行き、本格中華の奥深さに感動したお話です。

中国一画数が多い「びゃん」の正体は、幅広の麺

息子が5年生だった一昨年、小学校の友達の間で「ビャン」という漢字を流行らせていた。自分からあーだこーだするタイプではないので、よほどみんなに広めたかったのだろう。

「ママ、書ける?」と聞かれたけれど、もちろん「何それ?」だった。「画数58で、中国人も書けない字」らしい。

秦唐記003

息子に書いてもらうと、ウ冠の中に言やら馬やら長やらがチマチマと入り、仕上げに辶まで付く。AdobeがGoogleと共同開発したオープンソースの源ノ明朝フォントでは変換できるようだが、それまでは中国の辞典にも載っていなくて、中国人もBiangと記していたという。草彅くんの彅の字のように、使われる場面が増えて対応されるようになった、というところか。

とはいえこの「ビャン」は有名人の名ではない。この漢字が使われる、おそらく唯一の文脈は「Biang Biang面」。面とは日本でいうところの麺である。中国での読み方はmiàn。中国でも繁体字では麵だが(つまり、元々は麵だった)、簡略化された簡体字では面と記す。

もちろんそんなことは、息子が得意げに「びゃん(本当は漢字)」「びゃん(本当は漢字)」「びゃん(本当は漢字)」(あぁ、変換できなくてもどかしい)と裏紙に書きまくっているのを見るまでこれっぽっちも知らなかった。しかしこうなったら俄然気になってくるのがBiang Biang面だ。

ビャンビャン麺001

調べてみると、中国・陝西省の中部、咸陽市の発祥で、近隣の西安市を含む辺り一帯を代表する幅広の麺料理をBiang Biang面と呼ぶ。どちらかといえば地味な料理という立ち位置だったが、幅広のビジュアルと漢字のインパクトがウケたようで、中国各地、さらには日本にも人気が飛び火した。

Wikipediaによると:原料は小麦粉で、水と食塩を加えてこねて生地を作り、ゆでる直前に両手で伸ばし、2 - 3センチメートルの幅に平たく伸して成形する。日本のほうとうやうどんに似た食感を持つが、切って成形するものではない。長さは伸す台の長さによって決まり、1メートルになるものもある。「陝西十大怪」の1つにも挙げられるこの麺は、その長さと広い幅のために「麺条賽腰帯」とベルトに例えられている。

日本を代表する幅広麺、群馬・桐生名物の「ひもかわうどん」が大好きな身としては、中国を代表する幅広「Biang Biang面」を食べないわけにはいかない。息子がせっかく覚えた漢字だ。家族みんなで食べに行こうではないか。

これぞガチ中華!「ビャンビャン麺」を食べに神保町へ

日本でビャンビャン麺を看板メニューにしている店といえば「西安麺荘 秦唐記(しんとうき)」。今のところ都内に3店舗あり、私たちは神保町店に行ってみた。

秦唐記001

店内もbiang字推し。中国に伝わる「書き順の覚え方」(字書き歌的な?)が壁に掲げてあり、つい読み込む。

ビャンビャン麺専門店ではないので、メニューは豊富。あれもこれもと食べたくなるが、まずはビャンビャン麺。秦唐記のビャンビャン麺は味が3種類あり、中でも咸陽市周辺に古くからあるという油潑(ヨウポー)麺はぜひとも食したい。

ヨウポーは茹でたビャンビャン麺に唐辛子や刻みネギをかけ、熱くしたピーナッツ油をかけて香りを出し、しっかり混ぜ合わせていただくもの。調味料は酢、塩、醤油、唐辛子、花椒などが基本で、もやしやコリアンダー、お肉などの具材が加わることも。

こちら、ヨウポーも含む欲張り仕様の「全盛り」¥1,050。ビャンビャン麺002

赤いレンゲが置いてあるあたりの、もやし、キャベツ、大量の唐辛子と花椒、そしてその奥の煮豚までがヨウポー部分。ちなみにヨウポーは漢字で油潑(油が撥ねる)と書く。これはサーブする直前に高温の油を「ジュッ!」とかけて、唐辛子や山椒の香りを引き立たせるという調理法から来たものらしい。

手前右のやつはトマトと卵。「中国の麺にトマト味?」と意外に思われるかもしれないが、じつは先ほどのヨウポーとこのトマト卵が、ビャンビャン麺の定番だ。自然な甘さのトマトソースに卵を加えたまろやかな味わいが、ヨウポーの辛みを和らげながら絶妙に食を進めさせる。

トマトの左奥はご存知、ジャージャン麺。豚のひき肉を豆味噌や甜面醤で炒めて作った肉味噌、「炸醤(ジャージアン)」をのせてある。

よ〜く混ぜて実食。手打ちの麺がとにかく旨い!

全盛りそれぞれの味を知りたかったので最初は混ぜずに食べたが、ビャンビャン麺を食す極意はしっかり混ぜること。写真を撮り、それぞれの味を試した後はぐるんぐるん混ぜてからいただいた。でもなんとなく、「こっちはヨウポーの陣地、こっちはトマト卵の陣地」とわけたくなる。三位一体の味というよりはそれぞれが独立したおいしさなので、それでいいと思う。

ビャンビャン麺003

まず、この幅広手打ち麺自体がおいしい。モッチリしているけれど喉ごしがよくて、スイスイいける。広さと薄さのバランスが絶妙なためタレとしっかり絡むのも麺としての完成度を高めていると思う。

こちらはヨウポーだけのビャンビャン麺。しっかり混ぜた後。

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辛みとコクが同居する醤油ダレと、必要十分な量の油。都内で流行っている油そばと似た食べ方だ(油そばも大好き)。モヤシ&キャベツという庶民の味方的具材が食感のアクセントになり、刻んだチャーシューも旨みを添えている。けっこう辛いけど、「はひーっ!」という辛さではなく、あくまでもおいしい範囲内での辛み。伝統の味わいをスイスイと食べ進む。

麺は決してすすらない!添えられた茹で汁は飲む!

ところで、中国で麺をすするのは御法度。幅広だろうと極細だろうとNGだ。
中国だけでなく日本以外のほとんどの国は麺を決してすすらない。すすってはいけない。

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息子も麺をすすらない。正確には、うまくすすれない。そのほうがよいと思う。

あ、そうだ。ビャンビャン麺の上方に湯飲みみたいなのが写っているが、これは麺の茹で汁。麺にかけるのではなく、飲む用だ。そば湯みたいだね。個人的に、そば湯もツユと混ぜずにそのままストレートで飲むのが好きなので、この茹で汁もとてもおいしかった。

『タモリ倶楽部』でも茹で汁をフィーチャーし、タモさんが「おいしいおいしい」と飲んでいたそうだ。見たかったな、その回。

軟骨麺と羊の串焼きもめちゃくちゃおいしい!

ビャンビャン麺はヨウポーやトマト卵などの汁なし麺がスタンダードだが、同じ麺でスープ仕立ても味わいたいと思い、軟骨麺を頼んでみた。

これがまた実に旨い。個人的には「全盛り」以上に軟骨麺推し

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何時間煮込むとこうなるんですか?と聞きたくなるくらい、じっくり煮込まれたトロトロの軟骨がどどん!とたっぷり。柔らかいお肉とプルップルのとろける軟骨がホントにホントにおいしい。スープは醤油ベースのさっぱり系。でもしっかりと濃厚なコクが出ていて、これまたスイスイいける。ビャンビャン麺って万能だ。

牛肉麺もとってもおいしそうだったので、次回はそれも食べてみたい。

もうひとつおいしかったもの。写真は撮り忘れてしまったけど、ラムの串焼き。西安はシルクロードの入口だから羊を常食するし、香辛料の使い方もイスラムっぽいというか、ザックリ言えばエキゾチック。クミンがしっかり香り、ほどよくスパイシーで、とっても美味だった。羊とクミンの組みあわせってすばらしいと思う。

日本の町中華から考えると羊肉もクミンも「中華っぽくない」と思いがち。でも、中国語ではクミンを孜然(ズーラン)と言い、特に西安料理では孜然を多用する。

これぞガチ中華。日本の町中華も大好きだけど、初めて口にする味わいって、やっぱり感動するよね。

セルフ手打ちのビャンビャン麺、公式で販売中

トキワ実食004

思春期目前、恥ずかしい盛りの中一息子で「顔はめパネル」をパシャリとやってから、お店を後にした。

とってもおいしかったです、ごちそうさまでした!

興味のある方はぜひ秦唐記に足を運んでいただきたいところですが、「遠くて行けない」「家でも食べたい」って方に朗報です。公式サイトで麺の材料と具材を販売中。ヨウポー、トマト卵、ジャージャンをはじめ、軟骨麺も牛肉麺も売っています。

ただし、麺はセルフ手打ち。動画も載ってます。ぜひぜひ手打ちを。

なんつって。
ちゃんと「麺打ち済み」の商品もあるのでお好みでどうぞ。

でもせっかくなら手打ちしたくなってくるなぁ。息子とやってみっかなぁ。
ちなみに、おいしいラム串(調味料付き)も売ってます♥︎





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