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ラムシュタインのヴォーカリスト ティル・リンデマン Lindemannにおけるピーター・テクレンとの活動は終了 そしてネクストステージへ

ラムシュタインの絶対的ヴォーカリスト ティル・リンデマンのソロ活動ユニットLindemannが活動開始以来のパートナーであるピーター・テクレンに別れを告げた。

Lindemannとしておよそ6年間で2枚のオリジナルアルバムと1枚のライヴアルバム/映像作品を世に送り出している。

ティルはLindemannとしての活動は続けていくようだがここを1つの区切りとして作品や音楽性を振り返ってみたいと思う。

・Lindemann 個人的ベストソング3

まずは個人的に好きな曲を3つ厳選してご紹介

・「Steh auf」(セカンドアルバム「F & M」収録)
Lindemannの持つ激しさ・怪しさ・シアトリカルな要素が融合した名曲

怪優・ピーター・ストーメアとの絡みも最高


・「Knebel」(セカンドアルバム「F & M」収録)
前半から後半にかけての展開のダイナミクスさがピカイチ


・「Praise Abort」(ファーストアルバム「Skills in Pills」収録)
おそらく若干過激なシーンがあるからかYoutubeでログインしないと見れません。別にそこまでヤバい映像でないので興味のある方は各自チェックお願いします!


・Lindemannの位置づけ

当時、ラムシュタインからはギタリストのリヒャルト・Z・クルスペが既にソロデビューしていたが、ヴォーカルとしてまさにバンドの顔であり唯一無二の個性を持つティルがソロプロジェクトLindemannを発表した時は話題になったものである。

▼RAMMSTEIN(前列真ん中がティル・リンデマン その右がリヒャルト・Z・クルスペ)

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この2人以外は今のところ主だったソロ活動はしていない。

なのでメンバーによる「ラムシュタイン以外の作品」が聴ける機会としては貴重なのである。

もう1つ注目を浴びたのはティルがソロ活動のパートナーとして選んだのがピーター・テクレンであった事だ。

ピーターはスウェーデン出身のマルチプレイヤーのミュージシャン/プロデューサー。

デスメタルバンドHypocrisyのリーダーとして長年活動しつつ、自身が所有するスタジオ・アビスを根城にしてChildren of BodomやSabaton、Amon Amarthなど錚々たるバンドのプロデュースやサウンドメイキングを手掛けた、いわば北欧エクストリームメタルの裏回し的存在である。

年齢こそティルが2021年現在58歳、ピーターが51歳とそんなに離れているわけではないものの、上記のキャリアだけ見ると2人の接点が見えづらいがピーターはサイドプロジェクトとしてインダストリアル・ヘヴィロックのPAINをやったりもしているのでインダストリアルの要素もあるラムシュタインと少なからず共通項はあったのだろう。

ティルがラムシュタインのアルバム「ムター」制作の為にスウェーデンを訪れている際にクロウフィンガーのメンバーの紹介で2人は出会ったらしい。

ラムシュタイン作品のプロデュースを長年手掛けるヤコブ・ヘルナーはスウェーデン人なのでラムシュタインの面々はスウェーデンに行ったのだろうし、ヤコブはクロウフィンガーの作品プロデュースもしているのでそういった場所、人脈が繋がって出会いのきっかけとなった。

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ピーター・テクレンについてはポッドキャスト番組でも語っているので良ければお聴きください。誰でも無料で聴けます。

さて、ティル、ピーターからなるLindemannがデビューアルバム「Skills in Pills」をリリースしたのが2015年。

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ティルは作詞と歌唱を担当。それ以外の作曲、ドラム以外の全ての演奏、プロデュースはピーターである。録音はもちろんスタジオ・アビス。

ティルが全編英語で歌っているという分かりやすい違いはあれど、インダストリアルがかったヘヴィロックに荘厳なクラシック要素、卑猥極まりないテーマといった要素はラムシュタインとの類似性が十分ある。そこにある種の即効性というかド頭でのインパクトやギミックをまぶしている点は「渇望」「ムター」期あたりのラムシュタインに近いだろうか。

2019年発表のセカンドアルバム「F & M」も基本的には前作のフォーマットを踏襲しているがこちらではティルは全編ドイツ語で歌っている。漂う哀愁が前作より120%増しな印象。もちろんロックミュージックのダイナミズムも満載なので振り幅が増したと思って頂ければ。

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そしてティル・ピーター体制によるLindemannとして最後の作品となったのが2021年に発表されたライヴアルバム/映像作品「Live in Moscow」。

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2020年3月15日、モスクワのVTBアリーナでのコンサートの模様を収録した作品でCD+DVDのフォーマットで発売された。

ティルはもちろんヴォーカルを、ピーターはギターを担当し、他のパートはPAINのメンバーが務めている。ちなみにPAINの現在のドラマーであるセバスチャン・テクレンはピーターの息子だ。

この作品が素晴らしい!

白塗り、白色の正装で統一したバンドの面々。大スクリーンに映し出される下品すぎて上品な映像の数々。壮大なステージライティングが楽曲の魅力を十二分に引き立てる。

ティルはラムシュタインでのそれよりも若干軽やかに振る舞い、おさげ姿のピーターはとにかく目つきと挙動が怪しい(笑) プロデューサーとして裏方も務めながらステージで「魅せる」動きが出来る才能豊かなアーティストだと思う。


コンサート形態ならば1.3万人を収容するというVTBアリーナを埋め尽くしたファンが真っ向からこのパフォーマンスを受け止め、歓喜している様も圧巻である。映像で見る価値のある素晴らしい作品だ。

・最近のティル これからのLindemann

さて、ティルはピーターとの活動終了を発表。特に衝突があったとかそういう報道はないので友好的な別れであろう。またいつか一緒に何かやることもあるかもしれないし、実現したら嬉しい。

Lindemannとしての活動は続けるとの事なので、ラムシュタインの作品リリースのペースが鈍くなる一方の今、ソロ活動を続けてくれることはファンとしては嬉しい限りだ。

最近ではティル・リンデマン名義の完全ソロ作品も何曲か発表している。

後述するがどうもティルは最近ロシアづいているというか、ライヴ作品もモスクワでのものだし、 下記の「Ich hasse Kinder」のPVではかつてのソ連の共産主義国家を思わせる場面があったり、「LUBIMIY GOROD」に至ってはロシア語で歌っている。

そういえばラムシュタインの曲で「Moskau」って曲もあったなあ。


さらに最近はモスクワでティルの逮捕騒動があったようだ。詳細は不明だがロシアの美術品に関する取り決めに違反したとか、コロナ禍でのライヴ活動・入国においてレギュレーション違反がありマネージャーが逮捕された?など、かつてネオナチの疑いをかけられたりPVが卑猥すぎて発禁扱いとなりアダルトサイトでしか公開できないなど物議をかもしてきたラムシュタインのフロントマンらしい(?)話題に事欠かないが、一番大事なのは音楽。

是非枯れたりせず、巻き舌で飛沫を飛ばしまくりながら荘厳かつ卑猥なアートを届けてくれるのを楽しみに待ちたい。

・最後に ソロ活動というものについて

今回取り上げたようなソロ活動ー。

一言にソロ活動と言ってもその成り立ちや取り組む理由、そこから起きる次の展開は様々だ。実は結構興味深いテーマなので、この記事の最後にソロ活動というものについての個人的な考えを書いてみたいと思う。

まず、ソロ活動というものはメインバンド以外にもメンバーが作った作品が聴けるというのがシンプルに嬉しいのと、ソロ作品を聴くとバンドにおいてメンバーが担っている部分が浮き彫りになる事、さらにメインバンドでは聴けない新鮮な要素が入っているのも楽しみである。

ソロでの活動で得たものがメインバンドにフィードバックされバンドの活性化に繋がる場合もある。

また、メインバンドが行き詰っている時にガス抜きと冷却期間としてソロ活動をすることもある。

スリップノットのコリイ・テイラーによるストーン・サワーなどがそれにあたるだろう(ストーン・サワー自体はスリップノット加入前から存在したが当時は活動休止状態だった)。

バンドが崩壊寸前だった「IOWA」直後くらいにコリイをはじめとする各メンバーは思い思いにソロ活動に従事。

そこでしっかりやりたい事を吐き出して、また冷却時間を置いたことでバンドは解散の危機を乗り越えた。その後も色々な事もあったがそもそもあの時期がなければバンドは終了していただろう。

逆にソロ活動がバンドに軋轢を生み、時にはバンドの崩壊までもたらす事もある。

ジューダス・プリーストのロブ・ハルフォードやパンテラのフィリップ・アンセルモの活動などがかつてそうした悲劇を生んできた。

元・メタリカのジェイソン・ニューステッドもソロ活動をずっと禁じられていた事が脱退理由の1つになった事は間違いないだろう。

一方で元・ホワイト・ゾンビのロブ・ゾンビは当初はバンドの次回作として作曲を進めていたがバンド仲が最悪の状態になり仕方がなくソロデビューした結果大ブレイクしたなんて事例もある。

このように、ソロ活動をするに至った理由や背景は様々で、それが成功だったのか失敗だったのかは結果を見てみないと分からないのだ。

ひっきりなしに複数プロジェクトを動かす人もいれば生涯を1つのバンドに捧げる人もいる。これもまた面白い。

そんなドラマ、人間模様も味わいながら、結果として素晴らしい作品が世の中に1つでも増える事を願うばかりだ。

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