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コミュニティってどうやって生まれてどうやってブーストするんだろう問題(その1)

 いま思い出そうとしているのは、「ドリフのファッション研究室」〜「ファッションは更新できるのか会議」のことである。 
 なんでかというと、最近30代前半くらいの方々からこの事業について質問されることが立て続いているから。当時大学生くらいだった方々が、あの頃の私らの年齢になり、キャリアを重ねる中でふと、アレなんだった?てなるのかな?ググっても砕けたおせんべの破片みたいな情報しか出てこないから不安になる説もあるかもしれんが、ともあれ思い出してくれるのはありがたいことです。
 この口伝により伝わるアングライベントを参照してくれようとした奇特なお方のひとり、川崎和也氏(Synflux代表・スペキュラティヴ・ファッションデザイナー)から連絡がきたのは数週間前。デジタルファッションをテーマにした丸一日のカンファレンスみたいなのの末席で我もコレやアレやをネタにの話をせよとのこと。(イベント詳細は記事末尾)

ハ!なんで?!いま?!?!としか正直思えないのだが、時代の寵児的な川崎くんにとって意味があるならなんかあるんか?と逆予測的に意味を見出そうとしているこの数日。

で、以下今日のお品書き。


序章|自分のニーズからはじまった「ドリフのファッション研究室」

 ことの始まりには、当時わたしはファッションブランド「シアタープロダクツ」(いつか別途書くかもだがとりあずウィキ!)をやってたのだが、20代そこそこでうっかり無計画に起業したのでマジで困っていた、ということが背景にある。あまりに闇雲な自分が不安で。
 ハウツー事業計画みたいな本を読んだり、商工会の面談行ったりしたけど、それらはファッション経営の全体を考える視点は与えてくれなかったし、業界のイケてる先輩方のお話も聞きに行ったが、当然秘伝のタレは誰も教えてくれず、また、ファッション業界の秘密主義的体質からか(わたしの性格的な問題からか)横のつながりが乏しく同業の友達も殆どおらんかった。
 その時はそんな風にはことばにできなかったけど、今思うと、ファッション屋といっても私はデザイナーではなかったので、どっちかというと、メディアや時代の変化による身体性の変化?みたいなことに伴うファッションのアウトプットの変容、これに新時代のマーケティング手法って何?、てやつを視野に入れ、結果としてビジネスモデルのことも考えざるを得ない、っていう帰結にむけて、話せる仲間や協業できる様々なパートナーが欲しかったんだと思う。

そして、自分がこんなに困ってるんだから、少なくともそういう人たちは、えー10〜30人くらいはいるのでは?というような感覚値に基づいて(なんの根拠もなかったが)勉強会を始めた。実態としては、2010年4月から行ったほぼ月一全15回のトークと交流会、という感じであった。

当時はこんなかんじ・・・べつにおしゃれでない

狭い空間で50〜60名くらいの人がひしめきあってトーク(登壇者:平川武二さん、武内昭さん、松下久美さん)をきいている様子、おかんみたいなかんじで見守る金森の後ろ姿。

 あと、この時期はちょうど「ドリフターズ・インターナショナル」というNPO法人を、ファッション・パフォーミングアーツ・建築、といった異業種の仲間たちと立ち上げた頃で(いつか後述…)、業界内交流に隣接業界のクリエイティブ有識者もいれてジャムるような企画をこのNPOでやるのはいいじゃん!みたいな後押しもあり、勢いとノリでスタートしたんでした。

1, ロゴがよかったから説

しかし、なんだろう、なんで? ムーブメントやコミュニティがどうしてブーストするのかという、再現可能性がどこかにあるんだろうか?という意味で、改めて考えている。ロゴがよかったのか。(いまもけっこう気に入っている)

白地にサインペンで走り書きしたような「ドリフのファッション研究室」手書き文字。「究」の字の下の方が走っている足みたいになってて、ハイヒールを履いている風になっており、「8時だヨ!全員集合」(昭和時代のお笑い番組で、1970年代〜80年代に幼少期を日本で過ごした人はたぶん全員知ってる)のロゴへのオマージュとなっている。(イラストレーター:ハギーKによる) 
白地にサインペンで走り書きしたような「ドリフのファッション研究室」手書き文字。「究」の字の下の方が走っている足みたいになってて、ハイヒールを履いている風になっており、「8時だヨ!全員集合」(昭和時代のお笑い番組で、1970年代〜80年代に幼少期を日本で過ごした人はたぶん全員知ってる)のロゴへのオマージュとなっている。(イラストレーター:ハギーK) 

「肩肘張らない感・こむずかしくない感」が伝わったのでよかった。

2, ツッコミどころしかない企画者たちがよかった説+世話焼きなメディエーター各位の存在

 それで、わたしが全然アーカイブしてないもんだからいけないんですが、ググってみたら、当時Web Across様が記事にしてくださったものが残っていたので貼らせていただきます!が、

 そう。パルコの高野さん(Web Across 編集長)の、メディエーターぶりは終始すごい出汁を出していて、そもそも活動開始前夜、たどたどしくこの勉強会の企画案を語るわたしに、当時「繊維新聞」(注:繊研新聞ではない)という業界誌の新聞記者だった横山泰明という記者を「ユー企画てつだっちゃいなよ♡」的なかんじで私に紹介してくれ、私と横山氏の漫才みたいな企画チームが発足した。(余談ですが後日この2人は結婚します。)
 その後も常に高野さんは陰にひなたにご支援を下さり、時に実際の企画にもお力添えいただいた。この他にも繊維業界の諸先輩がたが、応援をしてくれた。
 なんというか。我々はツッコミどころしかないうっかりコンビだったので、みんながすごい助けてくれたり、次はこうしなされ、あの人を呼びなされ、俺でんわしておくから、とかいうかんじで。もはや開き直るならば、よい意味で、参加者の皆さんが意見を投げ込める器として機能した…。なんのしがらみもなかったし。
 あと付け加えるなら、
日々事業のリアルに接してる(がゆえに周りが見えない)事業者
②人脈や情報をもっている(が現場のリアルをもっと知りたい)記者
という、異なる立場の組み合わせも良かったのかもしれないデス。

3,場所性 x 新たに手にしたツールの組み合わせが楽しすぎた

 この企画は「無人島プロダクション」と「吾妻橋ダンスクロッシング」が清澄白河にオープンしたばかりの新スペース「SNAC」を拠点に実施した。その場所自体が今思うといろいろ奇跡的トポスだったが、毎度、インディペンデントなファッションレーベルを運営する人やデザイナー、大手のブランドや繊維商社などにお勤めの人、ファッションメディアの人、界隈の学生、加えて、広告代理店やシンクタンクやコンサル業の人なんかが集い、切実な方+お付き合い+なぜか連れてこられた方、含め、その後もテーマによって会場やシーンを変えながら(行ってみたい場所をおかりしながら)、50余名くらいが参加し、アフターの飲み会もセットで大いに盛り上がった。近所のもんじゃ焼き屋さんが素敵だったことや、飲みニュケーション時代の良さもあったとも言える。

ちゃぶ台サイズの机で登壇者(工藤キキさんと古田泰子さん)がウィスキーの水割りを前に話している様子。お客さんはコロナビールを持つなど。藤色のガウンの金森がマイクで司会をしている。

Ustream(ライブ配信)+Twitter(現「X」)の記憶

それと、改めて今調べたら、ニコ生が2007年にサービス開始しているので、そんな時代で、これを駆使した新たなテクノロジーが可能にする議論空間の実践としても楽しいカンジだったんだともいえる。
Twitterでライブ感あるつぶやきするのとか、配信画面(当時はユーストと読んでたサービス…なつかし)でライブチャットするのが新鮮だった頃で、ライブ配信ってたのすい!、産地の人とライブでディスカッションできるう!アゲ
みたいなこともあった。
新しいツールって、楽しいよね。

4, 新しい出会いやマッチングの場でもあった(きがする)の(きがする)ユルさ

 私もですが、参加する皆さんが、ある種の危機感や、情報の不足を感じていて、単に「学びたい」「知りたい」という以上の、それぞれ事業上のなんらかの死活問題「生きのびねば」「勝たねば」「オモロい人に会いたい」があった(きがする)。色々と、その後コラボレーションが花開くような出会いも多数生まれたような(きがする)。例えば、MIKIO SAKABE ともふくちゃんとか、増田セバスチャンさんとファッションの文脈とか、このぼんやりした(きがする)感が、ユルくて、もはや成果も示しづらいが、誰かが搾取するような感じにはなってなくて、よかったのかもしれんです。しかしここはもうちょっと丁寧に理解しておいた方が本当はいいよねという反省も今はじめてしたわ・・。みんなにとってのアイデアとかネットワークのるつぼであるということが流石にもうちょっと可視化されててもよかったかも。

ちなみにこちらが実施内容です(いま掘り起こせる限り)

実施内容(編集中)
VOL.1 『喋りいことは古着の山』司会:工藤キキ、ゲスト:古田泰子(TOGA)
VOL.2 『日本のファッションデザイナー燃えよ闘魂!』司会:横山泰明(WEAR JAPAN編集長/繊維新聞)ゲスト:平川武治、松下久美(WWD JAPAN)、武内昭(シアタープロダクツ)他
VOL.3 『新世代たちのメディア論(アラ25)』
司会:高野公三子(ACROSS編集長/パルコ)ゲスト:横田 大介(LASSIE PAPER/DROP/MODERNIST)、滝田 雅樹(『changefashion』)、中川瞬『REAL TOKYO FASHION MAGAZINE:√』/ほか25歳前後(アラ25)の編集長大集合!&びっくりゲストあり!
VOL.4 『テキスタイル発信国ニッポンより愛をこめて』
司会:横山泰明(WEAR JAPAN編集長/繊維新聞)ゲスト:梶原加奈子+植原亮輔(DRAFT/D−BROS)+遠山正道(スマイルズ代表取締役社長)
VOL.5 『ファッションよ、アグレッシブで夢のある商いを!』
山田遊method/NOOKA JAPAN)川島蓉子(伊藤忠ファッションシステム)& more
VOL.6 『どうなる日本のテキスタイル(ガチ!)』
坂口昌章(シナジープランニング)、横山泰明(WEAR JAPAN編集長/繊維新聞)、アンファンテリブル原田晶三(はらだ・しょうぞう)
VOL.7 『フセイン・チャラヤン展をきっかけに、ファッションとアートについてもっと考えてみよう』
司 会:西谷真理子(文化出版局 High Fashion ONLINEチーフディレクター)
ゲスト:長谷川祐子(東京都現代美術館チーフキュレーター)、林央子(フリーエディター)、山懸良和(writtenafterwards デザイナー)
番外編 『リトゥンアフターワーズ第6回目コレクション「罪と罰」』
セッション1:「建築×ファッション」
谷尻誠(建築家)×藤原徹平(建築家)×平川武治(モード評論家)
セッション2:「病×ファッション」
ここのがっこうの生徒が先生となって語る「ティーチャーズプロジェクト」
(先生役=亀岡泉×生徒=ジャーナリストなど20人)
セッション3:「ファッション×アートにおける、クリエイション」(仮題)
山縣良和(writtenafterwards)×卯城竜太(Chim↑Pom)×服部円(Numero TOKYO/honeyee.com )
×JFW VOL.8 『日本のファッション・ウィークの在り方と未来を描く』
記録なし・情報提供者求ム
×JFW VOL.9 『極東の見本市がどう魅力的たりえるか?』
記録なし・情報提供者求ム
×JFW VOL.10 『新聞記者のみた日本コレクションウィークの課題とこれから』
記録なし・情報提供者求ム
VOL.11 『拡張するファッション、拡張する現実』
川田十夢(AR三兄弟)竹内大(『GQ』編集長)林建一(株式会社コンセプト 取締役)金森香(シアタープロダクツ)
VOL.12 『ユースカルチャーとしてのカオスラウンジ、あるいはファッション』
蘆田裕史(日本学術振興会特別研究員、京都精華大学・京都造形芸術大学・京都市立芸術大学非常勤講師)
カオスラウンジ:黒瀬陽平(美術家、美術評論家)、浅子佳英(建築家、インテリアデザイナー)梅沢和木さん/梅ラボさん(アーティスト)
坂部三樹郎さん(MIKIO SAKABEデザイナー)、増田セバスチャンさん(6%DOKIDOKI代表)
VOL.13 『東京ファッションマーケティング談義』
司会:平松有吾(パルコ・ワンスアマンス・ディレクター)ゲスト:細江光範さん(伊勢丹イットガール・バイヤー)柴谷健さん(ラフォーレ原宿・原宿運営室 営業グループ リーダー)
VOL.14 『徹底検証「ギャル」ファッションの正体 ~ギャルとギャルファッションの誕生から行方』
司会:高野公三子(パルコ「アクロス」編集長)
ゲスト:荻野善之さん(『Cawaii!』創刊編集長/現 株式会社主婦の友社 代表取締役社長)山崎みしえるさん (DTLJ 代表取締役 兼 BLESS TOKYO クリエイティブ・ディレクター)田口まきさん(フリーペーパー『MIG』編集長)  
VOL.15 『コスプレする身体~フェティッシュからネオコスまで』
番外編 in Yokohama(横浜トリエンナーレ)
蘆田裕史 (批評家)、Hachi (ファッションデザイナー)、小澤京子 (研究者 / 表象文化論)、兼平彦太郎 (ヨコハマトリエンナーレ2011) ほか

後章|いま、「デジタルファッション」をめぐって、語られてないこと、繋がりが不足しているところ、風とか串とか通したいところはドコ?

 ーさて、最初の私の問いに戻るが。あれ、これっていまをときめく「Synflux」の川崎くん、にとって意味ある検証になっているんだろうか。甚だ怪しいのでもうちょっと考えておくね‥
 とまれ、果たして彼が夢想する、デジタルファッションをめぐって現代に生まれ得るコミュニティの理想形はどんなものなのだろう。私が当時困っていたのよりもっときっと川崎くんの切れ味鋭い困り事があるから、そこを起爆剤にして多くの困り事が良い意味で集結する器になるといいのでは。と思ったり。また、そこから切実な風とか串とかを通すところから生まれ得るのではないかとも想像する。
 もちろん、持ち込まれる「切実さ」というものの肌感覚も、当時の「ファッション研究室」の時代の「生き残る」「勝つ」「コラボしたい」とかだけではなくてもっと、ウエルビーイング的な価値を含めたことであろうし。それはとりもなおさず、川崎くんたちがうたっている「持続可能性」とか、「包摂」なのかもしれんです。
それで、「ドリフのファッション研究室」の続編となる「ファッションは更新できるのか?会議」「100人会議」について、ここでは書ききれなかったので、また続きをやりまーす。といっていきなり終わる。note慣れなくて長大になりすぎた。

以下告知!きてきてー!1日がかりでキャンプしようぜい

■オープン・ダイアローグ「デジタルな私と滑らかなファッションデザイン?」
多元化するメディア・プラットフォームのユーザーとしての「私」とは?デジタルメディア環境でのファッションをとりまく創作や消費、コミュニティを、メディア、ファッション、アートを専門とする研究者、実践者、クリエイターたちとともに考える1日
https://ccbt.rekibun.or.jp/events/synflux_opendialogue

開催概要
日時:2024年3月20日(水・祝)11:00-18:30(10:30開場、途中休憩あり)
会場:シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]
定員:【第1部】【第2部】90名(事前申込不要)【第3部】30名(要事前申込・先着順)※参加無料
登壇者:
・川崎和也(スペキュラティヴ・ファッションデザイナー/Synflux株式会社 代表取締役 CEO)
・清水知子(東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科准教授)
・藤嶋陽子(ファッション研究者/Synflux株式会社 CCO/立命館大学産業社会学部准教授)
・原ちけい(インディペンデント・キュレーター)
・金森香(DRIFTERS INTERNATIONAL Representative Director/株式会社precog アソシエイト・シニア・プロデューサー)


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