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ひと月ぶりの音楽日和

3/29に志村けんが亡くなって、世の中一気にコロナ自粛モード。

所属しているオーケストラの方も練習中止。

桜が咲いても桜を見る気分では無くなり、転職したばかりの職場は主にテレワークに。

4月も半ばになる頃には、街中の店が休業し始める。

3年前から始めたチェロレッスンも、当然休みになった。

コロナ自粛が長引いて、もしもこのまま、ずっとレッスン出来そうになかったら、オンラインレッスン考えますか?

と先生にメールしたけれど、結局オンラインでレッスンしてもらう自信が私の方に無くて、何も出来なかった。

パソコンは古くてまともに動くか自信ないし、つい最近、数ヶ月ぶりに開いてスピーカーが無いことに気づいた。

iPadも無いし買う余裕も無い。

となると、繋がる手段は手の中に収まる型落ちのiPhone。

小さなiPhoneで、指や弓の使い方が自分も演奏しながら見えるだろうか?

ビデオを通して顔アップも恥ずかしくて耐え難い。

そもそも、iPhoneの小さな箱を通して、チェロの音のわずかなニュアンスの違いや音量の変化が聴き分けられるか自信がない。

空気振動を通さずデジタル変換された音では、音質も変わるし倍音も振動も感じる事が出来ないだろう。

だいたい、チェロやコントラバスはiPhoneで録音を聴くと音が歪みがちだと思う。

地元のFM放送でも、低音楽器の生演奏は、プロ奏者でもなんで?と思うくらいラジオから流れる音は歪んでしまっていた。

そうすると、先生が音の違いを示しても、正確に理解できるか自信がない。

(同じ様な理由で、最近音楽友達から有料ライブ配信の案内が来ても、迷っているうちに結局スルーしてしまっている。

私も金銭に余裕があれば応援したい気持ちは山々だけど)

おまけに、どうしてか…時間によっては、Wi-Fiに繋いでも画面がグルグルと固まって動かなくなる。

オンラインでは、レッスン内容に関しても自信が無かった。

普通は決まった課題曲などを弾いて、先生がコメントなりするのかもしれないけれど…

私の時はいつも、会ってお喋りして、最新の興味がそのまま音でやり取りになる調子。

レッスン自体が即興なのだけど、横にいれば伝わる言葉以外のニュアンスを、オンラインで伝えられる自信が無かった。

だから、直接レッスン出来る様になったと聞き、すぐお願いした。

この一ヶ月が、とても長く感じられた。

去年まで、仕事や家庭に忙しい私はレッスンは月に一度だけで、それも日々追われ大した練習もしないうちに、あっという間にレッスン日になる様だったけれど。

もう、ずっと会えなかったらどうしよう?と本気で心配していたから、会えた時、一ヶ月会ってないだけなのにとても嬉しかった。

レッスン会場の音楽教室で、検温をする。

受付でおでこにピッとされて、そんな検温器があるんだと驚き、便利だけどなんだか恥ずかしかった。

レッスンは、部屋を入れ替え換気をしながら、もちろんマスクして行われた。

***

前回は、少し前に流行った星野源の「うちで踊ろう」を一緒に弾いたが、その時携帯を忘れて録音し損ねた。

先生がどうやって弾いたのか再現できず…家ではコードをたまに爪弾いただけで、結局ほとんど弾かなかった。

代わりに今年に入って練習し始めたjulie-O (ジュリーオー)という曲が好きで、バッハの無伴奏と交互に弾いたりしていたけれど、これがちっともまともに弾けるようにならない。

全く譜面の読み方すら分からなかった頃よりはマシになったけれど、人前で弾けるレベルには程遠い。

「動画撮ってみたんだけどね、ひどい音なんですよ。ガシャガシャ聞こえるし。まともに弾けてないというのもあるけれど。何がいけないんですかね?」

動画を見せると先生はめちゃウケたみたいで

「ディストレーション(ギターの音を歪ませる為に使うエフェクター)かけたみたい。これはこれで面白い!

ロックな感じ。

FBに動画アップしてくださいよ」

なんて言う。

えー、いやですよー、下手すぎじゃないですかー。

と言ったら、

「この曲ね、その前にやったデュプレ の弾いてる曲よりはだいぶ難しいよ」

と言う。

そうなのかぁ。デュプレのだって、私にはかなり難曲だった。

だからこんなに出来ないのかぁ??

(動画はデュプレ の弾いている曲)

〜それにしても、マジ凹む、と思いながら…面白いかもだから、現状を載せてしまおう。

(練習中のjulie-O )

「これはまずは、弓の毛のせいですよ。ザラザラした音になる。毛を変えないと直らない」

弓を先生のと交換する。

本当だ!弓を変えると音がザラザラしない!

ついでに、楽器も取り替えっこした。

私の楽器も先生に弾いてもらって喜んでいるはず。

自分の楽器が良い音で鳴っているのを聴くのは嬉しかった。

私の疑問に、弓のスピード、使う位置と長さ、左手の押さえ方と細かく調整しながら応えてくれた。

おまけに

「弦に対する弓の角度は、7つあるんですよ。それぞれの弦と、重音の弦と」

そうかぁ。私が今まで使ってきたのは、4つばかりだ。残りの3つを多用するのは、初めてだから慣れていなくて音がまともに出ないんだ。

この一曲で、毎度新しい課題が出る。

その前は、わざと音を裏返してロボットみたいな変な音を出す技術なんて出てきて驚いた。

クラッシックならタブーなのではないかな。

勉強する事は、まだまだありそう。

***

問題点をひととおり教えてくれた後、先生がいきなりアドリブで弾き始めた。

慌てて追っかけて伴奏をつける。

目が霞んで楽譜が読めなくなったから、伴奏した和音は間違ってるけど、先生は気にせず弾き続けてくれた。

せめてテンポキープだけはしようと思いながら、小節でいうなら前乗りの、自由な引っ掛け具合と速弾きに横でピッチカートで伴奏しながら感動するばかりだ。

同時に次にふられても、何も出来ない自分が悔しい。

そのうち、「真似して」というから、先生の弦を押さえている位置を見て音を拾う。

私が音を拾えるようになった頃、さらに先生が音を足した。

出す音はもしかしたら単純で、側から聴いて面白いものかどうか分からないけれど、横で弾いている私はとても感動していた。

言葉を語らずに、音で気持ちが通じ合う感覚になったからだ。

プロのミュージシャンは、演奏中こういう感覚になるのだろうか。

素敵な体験をありがとう。

本来は一曲をきちんと仕上げてから次の曲に移るのが良いのかもしれないけれど…

もう半年やったって、完成する気がせず、おまけに飽きっぽい私はわがままを言い、もう一つ違う曲も手をつけたいと言ってみる。

いつかやってみたい曲…とYouTubeで探したら、ちょうど先生がiPadの中に楽譜を持っている曲だった。

エアドロップで私のiPhoneに楽譜を入れてくれる。

「まずは読んでみたら良いよ」

そう言って笑う先生を見て、

そうだった、私、楽譜読むのかなり苦手だったんだと気づく。

オーケストラだって、こんな事言うと怒られそうだけど、楽譜見た瞬間、「無理ー!」と思う。

それでどうしているかというと、聞こえた音を覚えていくのだ(笑)

私の弾いてみたい曲は「カサド」と教えてくれた。

「皆すごいジャーンと弾いてるのが多いけれど、お祈りの曲だから、自分なりのお祈りの気持ちで弾いたら良いですよ」

と教えてくれた。弾けるかどうかは別として、楽しみ。

(やってみたいカサドの曲)

この日、かなり久しぶりに2時間も一緒に弾いたから満足!

***

部屋から出ると、隣の部屋からオカリナの音が聴こえた。

この音はFさん!

ドア越しに、しばらく聴き入る。

外に漏れてくる音だから側で聴くようでは無いけれど、生演奏が聴けて嬉しかった。

演奏の中に入り込んでいる音だったから、お邪魔してはいけないと思い…

久しぶりに会いたかったけれど声をかけずに立ち去った。

(オカリナ奏者の友人のYouTubeより)

***

さて、音楽教室からの帰り道に行きつけの珈琲屋がある。

しばらくテイクアウトのみだった店も、つい最近、席数を減らして店内解禁にしたのだ。

もちろん立ち寄った。

この日は親父さんの方が店番だった。

長い海外生活の後、5年前にフランスから帰国というお客さんが来ていて、盛り上がっている。

そこへひょっこり、若店主のおかあさんもやって来た。

お喋りをしているうちに、

「歌声喫茶しましょうよ」

と誘ってくる。

「歌声喫茶」という本を取り出してきたから、そういう本があるのだと驚いた。

めくると、店の片隅のピアノで次々と弾いてくれたから、それに合わせて歌った。

歌うなんて、それもまた久しぶりの事だ。

コロナ自粛の中、歌って大丈夫かしら?と一瞬思ったけれど、この辺で普通に暮らしている限りでは、住んでいる街ではしばらく新患者は出ていない。

しばらく歌う気持ちにもなれなかったから、ピアノに合わせて歌うのは、ただただ楽しかった。

閉店間際。

10分弱で

「お開きにしましょう」と言うと、

「またやりましょう」

と言われる。

お邪魔でなければ是非と思う。

















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かおり
文章が誰かの心に響いて、それが対価になって、それを元手にさらに経験を積んで文章など色々な表現で還元出来たらと思い続けています。 サポートお待ちしております♪