お花屋さんの魔法
実家の母の誕生日に花束を買った。
母は黄色が好きなので黄色系でオーダー。
作ってもらっている間、
高校生の時のことを思い出した。
◆ ◆ ◆
ある秋晴れの日。
友達と一緒に花束を贈る機会があり
2人でお花屋さんへ行った。
店内は色とりどりの季節の花々。
目移りしながら店員のお姉さんに
予算と用途を伝えた。
色合いはおまかせに。
するとお姉さんはにっこり笑って
迷うことなく花を選び始めた。
私と友達は黙って見ていたが、
やがて次第に顔を見合わせた。
なにしろお姉さんが選ぶ花は
どれもこれも地味な花ばかり。
え。この色とこの色を合わせるの?
見たことのない赤い実や変わった形の葉っぱ。
それ花じゃないよね?
私たちの無言の心配をよそに
花はどんどん組み合わされていく。
そして二十分後、
何度もお辞儀をしてお店を後にした私たちは
違う言葉で同じことを言っていた。
「どうなるかと思ったよね」
「まさかこんなに可愛くなるなんて思わなかったし」
「どうしてあれがこれになるんだろう」
「さすがプロだよね」
「花束=キレイ、華やか」しか知らなかった高校生の私たちは秋らしい落ち着いた可愛らしさの花束とお姉さんのセンスの良さに感心した。
そして目の前で魔法を見たあとのように
足取り軽く先を急いだ。
◆ ◆ ◆
今では贈った相手もどういう理由で贈ったのかも忘れたけど、この場面だけは何故か鮮明に覚えている。