コワーキング・マネージャーと、コワーカー全員がその共同体をコワーキングたらしめる要員であることについて
※この記事は、CAMPFIREコミュニティで運営しているオンラインサークル「ローカルコワーキングのための学びと部活動=コワーキングLAB=」(※)の定例オンラインディスカッション「コミュニティ・マネージャーについて考える(1)」のサマリーとして、6月10日に会員限定で配信したニュースレターを、一部編集してブログにしたものです。
(※注 2022年8月現在、このオンラインサークルはnoteのメンバーシップ「Beyond the Coworking〜移働の時代〜」に移行しています)
コワーキング・マネージャーはものすごく大変
昨晩(6月9日)はまず、「コワーキングにおけるコミュニティ・マネージャー(以下、コワーキング・マネージャーと言い換えます)」の役割とは何か、求められるスキルとは何か、現実に毎日どんなことをしているか、などを思いつくまま話すことからはじめました。
話は(例によって)どんどん枝道に入ったり戻ったりしながら進みましたが、コワーキング・マネージャーにはかなり広範囲で、かつレベルの高いスキルが必要であることを再確認しました。
情報収集力とコミュニケーション能力、ビジネススキル、経営思考、それとそれらを円滑に実行できるセンスが要ります。そして、それ以前に「人に興味があること」が肝要です。それがコミュニケーションのきっかけを生むからです。
ぼくはいつも、コワーキング・マネージャーは、少なくとも以下の3つはできたほうがいいと言っています。
これは上記のさまざまな能力が備わってこそできることですが、その大前提はコミュニケーションです。
コミュニケーションを図るうちに、その人の属性、仕事内容、そのレベル、今取り組んでいること、協働パートナーの適正、などが判った上で、ことあるごとに情報を伝えて、人を紹介し、仕事を斡旋してそのコワーカーに貢献する。一種のプロファイルですが、これらができることが望ましい。
ただし、これはコワーカーに提供するサービスの部分だけであって、これ以外に(これ以前に)コワーカー(利用者)を誘致するためのマーケティングや、コワーカーの仕事や活動に直結するセミナーやワークショップ、あるいはコミュニティへの関心を継続して抱いてもらうためのイベント企画などのコンテンツ制作、そしてコワーキングの活動状況を細大漏らさず発信するウェブ活用、それと日々の財務会計処理なども、コワーキング・マネージャーの重要な仕事です。
これしかし、言うのは易いですが、ものすごく大変です。
ですが、これらを一度棚卸ししてコワーキング・マネジメントの成立要件を体系的にとりまとめることは無駄ではないと考えています。(これは後述する、「チームによる運営」の際にも有用と考えています)
キュレーターという存在
ところで、昨晩のディスカッションの中で、「コミュニティ・キュレーター」という言葉が出てきました。「キュレーター」とはもともと、博物館などの学芸委員のことを言い、どんな展示物をどういう順番で展示することで閲覧者を満足させるかを設計する人のことを言います。これに準じて、例えば、ウィキペディアに情報を寄せるライターのこともキュレーターと呼ぶそうです。(Mさん情報)
つまり、そこに必要な情報を各自が適宜提供することで、ひとつの成果物として成立させる、ということかと思います。
それに倣えば、コワーキングというコミュニテイにもキュレーターという存在が確かにいて、コミュニティの健全な運営に自然と関わっていることがあります。コワーカー(利用者)が任意にコワーキング内のイベントやプロジェクトにおいて運営者的役割を担うことは、ぼくの体験から言っても確かにあります。
【以下、余談ですが】
いま、思い出しましたが、2011年に日本で最初のコワーキングフォーラムを神戸で開催したのもそのひとつです。
実行委員会は全員ボランティアで、開催日までわずか2ヶ月足らずで結成し、それから各自が役割を決めて、チームに分かれて自律的に準備を進め当日を迎えました。
その間、全員が顔を合わせたことは一度もありません。今みたいにZoomもなかったので、オンラインミーティングなんてこともやっていません。委員全員が顔を合わせたのは、その日の朝礼のときがはじめてでした。
それでも、見事にやり遂げました。ぼくはこの瞬間に、日本でもコワーキングは十分できると確信しました。
その時のことを書いたブログが残ってましたので挙げておきます。
もう、そこにあって、始まっている~コワーキング・フォーラム関西2011に寄せて~
ついでに、こういう記事にもなりました。
「コワーキング」大集会が神戸で--新しい働き方が全国で話題 - CNET Japan
【余談終わり】
コミュニティ・キュレーターについてはこれから研究しますが、ここに至って、かねがね考えていたことがまた頭をもたげてきました。
実はここからがこの記事の肝心なところです。
全員がその共同体をコワーキングたらしめる要員
それは、コワーキング・マネージャーの役割として最も重要な仕事は、実は、こういう自ら運営にコミットする「有志」を自然に惹き付けること、もしくは、利用者の中から募る、誘う、育成する、編成する、機動させる、ということではないか、ということです。
つまり、コワーキング・マネージャーが全部ひとりでマネージメントするのではなく、可能な範囲でそのコワーキングの利用者(コワーカー)にその役目を負ってもらう、ということです。
実際にそうしてきたコワーキングも実在します。今は千葉県に拠点を移した、東京で一番最初にオープンしたコワーキング「PAX Coworking」はそのひとつです。主宰者が不在でも、既存の利用者が新参の利用者の面倒を見るということを自然にやっていました。
ぼくのカフーツでも同じです。ちなみに、ぼくがコワーキングツアーでカフーツを留守にする間は、マンスリー会員さんに鍵を預けて留守番(しながら仕事)してもらっていました。
そうなると「利用者vs運営者」ではなく、「利用者with運営者」あるいは「利用者≒運営者」という関係になります。
実はここ、非常に重要な概念が潜んでいます。
よく考えてみると、そもそもコワーキングは「そういう働き方をしたいという人たちが自律的に集まって皆でそういう共同体を作った」というのが事の起こりです。
2005年8月9日、ところはサンフランシスコ。Brad Neuberg氏が「一緒に仕事しないか」と友人に呼びかけて、Spiral Museというビルの一室に集まったのがコワーキング(Coworking)の起こりです。最初のコワーキングにやってきた人は、確か2名でした。
つまり、最初から「全員がその共同体をコワーキングたらしめる要員」であったわけです。決して「利用者vs運営者」ではありませんでした。
ぼくは神戸でカフーツを開く前にこのワークスタイルに共感し、2010年に開設して以来この11年間、そういう概念をそのまま持ってきています。自分をカフーツのオーナーとは思っていません。カフーツというコワーキングは共用スペース(もしくはスキーム)であって、誰かの所有物ではないからです。管理人は務めますが、自分もカフーツの利用者のひとりだと思っています。だから、「頼むね」と言って1週間も留守にする。
そして、ここで出たアイデアがこれでした。
つまり、コワーキング全体をひとりのコワーキング・マネージャーが仕切るのではなく、小分けにした利用者主導のコミュニティの運営を支援する、という立場を取るという方法です。
待てよ、そもそもコワーキング利用者ってそうだったのではないか?
そうです、結局、ぐるっと一周回って、「ユーザー主体のコミュニティ」ありき、という話ですが、もちろんぼくはこの意見に賛成です。
カフーツの場合、カフーツというコミュニティに利用者が染まることをぼくは求めていません。実のところ、中にはうちみたいなカルチャや空気が気に入って使ってくれるコワーカーももちろんいます。
しかし、彼らに推奨するのは、カフーツの一員になることに満足するのではなくて、自分自身のコミュニティを起ち上げて活動するためにカフーツというコワーキングを手段として自由に使ってほしい、ということです。
だから、日によってコワーキングは来る人が変わり、空気が変わり、その顔を変えます。変わっていいと思っています。
コワーキングはハコではない、と常々言い、もう皆さん、耳にタコでしょうけれども、コワーキングはプラットフォームでありハブでありスキームであって、言い換えると「装置」でしかありません。そこをいかにうまく使うかは利用者次第です。
その「うまく使いたい」というコワーカーをコミュニティの仕組みでサポートする。これが理想のコワーキング・マネージャー像ではないかと思います。
昨晩のディスカッションを一言で総括すると、こうなります。
ということで、こういうテーマで「ローカルコワーキングのための学びと部活動=コワーキングLAB=」(※)では、対話しています。興味ありましたら、ぜひご参加ください。
(※注 2022年8月現在、このオンラインサークルはnoteのメンバーシップ「Beyond the Coworking〜移働の時代〜」に移行しています)
よろしくです。
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