見出し画像

子供連れで仕事するヨーロッパの託児施設つきコワーキング

※この記事は、ニュースレター「ちょっと先行く海外コワーキング&コリビング最新情報 — Issue #24 」から、一部編集して転載したものです。
※ Photo by Dakota Corbin on Unsplash

今日の参考記事はこちら。

働くママ(もちろんパパも)がどんどん増えていく時代、仕事と育児の両方を実現できるコワーキングスペースが、ヨーロッパに増えてきている。

以下、ざっくりサマリーを。

グーグルやシスコのような大企業の社員には社内に託児施設があるが、ヨーロッパのコワーキングスペースを利用する事業者やフリーランサー、スタートアップの場合はそうはいかない。

多くのコワーキングスペースには、おむつの交換台などの設備もない。子供が歓迎されるコワーキングスペースはわずか25%。託児施設があるのは2%に過ぎない。だが、時代は変わりつつある。

Deskmagが2018年に実施した調査によれば、近年、多くのコワーキングスペースで託児施設が配置されるようになっている。

ドイツ、ケルンのCowoki。イギリスのケンブリッジにあるIncubyte 、スペインのグラナダにあるCoFamily Coworking 、イタリアはミラノのQfやCoBaby、フィレンツェのSpazio Co-stanza、ローマのL'alveareなどがその一例(※末尾にリストアップする)。

だが、コワーキングがこうした新しい家族のハブとなることは容易ではない。

コワーキングと保育を両立させるモデルは収益性が安定しない。休日や子供の成長に合わせて変動する。それが理由で、パリのCoworkCreche、ブライトンのOfficreche、ベルリンのEasyBusyといった比較的新しいコワーキングスペースが早々にクローズしている。

だが、それでも、ヨーロッパの起業家たちは前進することをやめていない。

実績のある保育サービス会社とパートナーシップを持つことでリスクを軽減している。スイスでは、RiseeがThe VillageをSt Sulpiceに移してl'écolineという保育プログラムと提携した。これによって、The Villageは幅広い年齢層の子供たちに対応でき、学校の休暇中に非会員向けのサマープログラムも提供できるようになった。すでに、ヨガ、英語教室、カポエイラのような子供向けのアクティビティを行っている。

こうした施設は地元の親たちにとっては非常に重要だ。スイスは保守的で家に母親がいることが求められる。地域における育児施設への投資がほとんどなく、民間の託児所は平均的な家庭にとっては法外な費用がかかる。

「ワークスペースと託児施設を別々に利用すると200スイスフラン(約21,889円)かかるが、それをセットで利用でき100スイスフラン(約10,944円)で済ませることができれば有り難い」。

ロンドンのコワーキングSecond Home もチャイルドマインダー(※イギリスの少人数保育のスペシャリスト)と提携した。「初期のコワーキングスペースにはカフェが配置され、今やあらゆる退屈なオフィスにもそれがある。だが、今後10年以内にすべてのオフィスが育児施設を持つようになるかもしれない」。

政府も動き出した。ベルリンでは、Katja ThiedeがJuggleHUBというサブスクリプション型式の育児サービスを始めた。メンバーシップは79ユーロ(約9,619円)からで、育児費用は1時間あたり8.40ユーロ(約1,022円)。

昨年、ドイツでは政府からこうしたサービスを提供されていない両親には、託児にかかった費用を返金するよう法改正された。

Cuckooz Nestは2018年にロンドンで開業したコワーキングだが、イギリスの政府系教育機関であるOfstedと連携して、1時間あたり12〜20ポンド(約1,631円〜約2,719円)の託児サービス付きのスペースを今年スタートさせる。

「働くママは信じられないペースで増えているのに、イギリスには良質な育児を行う選択肢に欠けている」。

メンバーのEmily Lanfearは6ヶ月も待たずに利用できる託児所を探し続けて、Cuckooz Nestを見つけた。

コワーキングスペースはもはや目新しいものではないが、膨大な数のフリーランスやフレキシブル・ワーカー(※従来のオフィスワーカーではなく必要に応じて働く場所と時間を選択するワーカー)もまた親であることを無視すると、大きなマーケットを失うことになる。

「これは女性問題でもフェミニストの問題でもない。このニーズに対応しない者は取り残されるだろう」。

…とまぁ、これを読んでまったく同感。

日本でも子供連れOKとするコワーキングスペースは一部で存在するが、まだまだ少ないのが現状。スペースによっては運営者と利用者が共同で子供の相手をする、実にファミリーな関係で運営されているところもある。

働くママ(あるいはパパ)にとってコワーキングスペースが託児所サービスを併設してくれていると大いに助かるのはヨーロッパの例を引くまでもなく、世界共通の課題だ。

これには行政の果たす役割と民間が担う役割があるだろうが、このヨーロッパの事例のように専門事業者がタッグを組むことでかなりのことがカバーでき、親たちの仕事のパフォーマンスも高まり、引いては地域の経済活動にも大きな効果をもたらすはずだ。

もちろん、そこには法律の整備も不可欠だが、コワーキングスペースも一度、地域行政とこの課題について話し合う機会を持ってもいい。そして、いろいろなパターンを試してみるべきだろう。官と民が共同で地域の課題解決に力を合わせる、そのこともローカルコミュニティとしてのコワーキングの役割だ。

ちなみに、長野県上田市のコワーキングスペースHanalab.UNNOは、もともと働くママさんたちのためのスペースで、専門の育児員がいる託児スペースが併設されてあり、スペース自体が地元や東京の企業から仕事を受託し、利用者であるママさんたちがその仕事をするという、ある種、ママさんのための職能訓練的コワーキングスペースだった。

3年前のコワーキングツアーでおじゃまして、そのことにいたく感動してリポートしたのがこの記事。

ところが、そのHanalab.UNNOが先だって新たに株式会社はたらクリエイトとして法人化した。昼休みには子どもたちはママと一緒に昼食をとっている。

ところでここは元々、居酒屋チェーン店が入っていたのが退去したのを借り受けてオープンしたコワーキングだった。商店街の中だから、オフィス街というわけではない。

むしろ、子供連れで利用できるコワーキングは、そうした生活圏内にあるほうが何かと便利だ。場合によっては住宅街の中にあってもいい。それは、学習塾があるのに似ている。ということはつまり、一般住宅で子供連れのコワーキングスペースがあっても全然おかしくない、ということだ。

事実、埼玉県新座市のコワーキング、Hanareひばりヶ丘は住宅街の中にある一軒家だ。

ここでは、エンジニアが集まってワークショップしたりもするが、時には近所のママさんたちが集まって編み物したり、子供のプログラミング教室が開講されたりと、地域に密着した運営がされていて、まさに、ローカルコミュニティとして機能している。

生活圏内と言えば、例えば、廃校になった小学校などを再利用してもいい。よく見てみると、地方におけるコワーキングスペースのロケーションは、案外、いろいろ考えられる。

働くママたちにとって、そして子どもたちにとってもどういう環境がベターなのか、ベストなのか、そしてそこにコワーキングスペースがどうサポートできるか、答えは明白だ。

<育児サービスのあるヨーロッパのコワーキングスペース>
・ドイツ
Cowoki, Cologne.
JuggleHub, Berlin
Rockzipfel, Leipzig/Berne
Cowork & Play, Frankfurt
・イタリア
Qf, Milan
CoBaby at PianoC, Milan
Spazio Co-stanza, Florence
FeelGood Coworking, Bari
L’alveare, Rome
・ロシア
Gnome House, St Petersburg
・スロバキア
Coworking Cvernovka, Bratislava
Unicare Coworking, Slovakia
・スペイン
CoFamily Coworking, Grenada
・スイス
The Village, Saint-Sulpice
・イギリス (UK)
Third Door, London
Second Home, London
Cuckooz Nest, London
ImpactHub, Birmingham
Farm Work Play, Canterbury
Incubyte, Cambridge

※この記事は、ニュースレター「ちょっと先行く海外コワーキング&コリビング最新情報 — Issue #24 」から、一部編集して転載したものです。
※ Photo by Dakota Corbin on Unsplash




いいなと思ったら応援しよう!

カフーツ伊藤
最後までお読みいただき有難うございます! この記事がお役に立ちましたらウレシイです。 いただいたサポートは今後の活動に活用させていただきます。