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いちユーザーが役員となりコミュニティと共に苦境に陥ったコワーキングを救った話:今日のアウトテイク#345(2024-10-28)

<アウトテイク>
・SNSに投稿するのではなく、これを自分SNSとした投稿
・記事として仕上げる前の思索の断片、または下書き
・一部、筆が乗ってきて文字数多いのもあり〼
・たまに過去に書いたネタを展開する場合も
・コワーキング関連のネタが多め
・要するに「伊藤の現在地点」
・1ヶ月ごとにKindleでコラム集にまとめていってます


#今日のBGM

#今日のコトバ

"人類の歴史上、いわゆる「ワークライフバランス」を実現した人なんか誰もいない。「うまくいく人が朝7時までにやっている6つのこと」を真似したって無駄だ。"
(オリバー・バークマン『限りある時間の使い方』)

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#コワーキングプレス 「ペンクラブ」メンバー募集開始

今回、コワーキング協同組合が運営するウェブメディア「コワーキングプレス」にて、全国各地のコワーキングスペースとその周辺の人たちや出来ごとをリポートしていただく「コワーキングプレス・ペンクラブ」のメンバー募集を開始しました。

ペンクラブのメンバーは、モノを書くからと言って必ずしもプロのライターさんでなくても構いません。書くことがお好きなら、そしてコワーキングに愛着を感じておられる方なら、どなたでもご参加いただけます。

あなたの町のコワーキングのこと、そのコワーキングにまつわるいろんな出来ごと。それに「あなたのこと」「あなたのお話」をぜひ読ませてください。コワーキングでこんなことをした、こんなことがあった、こんな人がいてこんな話をした。何でもOKです。

詳しくはこちらを参照の上、ぜひ、ご参加ください!

#いちユーザーが役員となりコミュニティと共に苦境に陥ったコワーキングを救った話

もう全編ウンウンと頷きっぱなしの記事を読んだので、ちょっと長くなるが共有しておきたい。

コロナ禍でダメージを喰らい閉鎖直前までいきながら、コミュニティの力で再生したコワーキングの話。実にいい話です。

それは、カナダはバンクーバーにあるコワーキング「HIVE」。

「HiVE」は単にオフィススペースを貸すだけでなく、コミュニティの構築に重点を置く非営利団体として2011年にオープンした。ここにRalph Baddour氏はオープンデスクのいちユーザーとして参加する。2018年のことだ。さまざまなコワーカーが利用する「HiVE」の多様性に彼はいっぺんに魅了される。

そこへパンデミックが襲いかかり、例に漏れず大きな打撃を被った。

「私たちはスペースを所有していません。そして、純粋に会員の資金で運営されている組織として、予備資金もなく、月々の薄利多売で運営されています」。

日本でも同じ境遇にあったスペースは多いはず。思い出すだけでもオゾマシイが、うちはオンラインでコワーカーとの関係を維持しつつ、従来からの受託仕事で息をつないだ。ちなみに、それはいまでも継続している。

「HiVE」も会員数が減り、世間では在宅勤務が当たり前になるに至って、2020年7月、取締役会と執行部は総会を招集し、今後について話し合った。

「提出された動議は、閉鎖というものでした。組織を継続する資金がなかったのです」。

しかし、「HiVE」のコミュニティは諦めなかった。

「ほとんどの人はZoomで参加していました。「HiVE」を存続させたい人はいるかと問われたとき、8人のメンバーが手を挙げました」。

感動的なシーンだ。Baddour氏もその一人だった。ここで彼の役割がガラッと変わる。このスペースを存続させるため、家主との緊急交渉を指揮することになった。つまり、ユーザーから運営者のひとりになったわけだ。

こうして、運営側だけではなくて利用者も愛すべきコワーキングの維持継続のために協力する。理想的なコミュニティのあり方だが、それこそ、インディー・コワーキングだ。

その後の数ヶ月間、「HiVE」を存続させた要因のひとつは、何人かのメンバーの極めて高い忠誠心だった。

「利用しないにもかかわらず、会費を払い続けているユーザーが何人かいた」とBaddour氏は語っている。まったく有難い話だ。しかし、それは「HiVE」が彼らを顧客ではなく、文字通り「メンバー」として遇するコミュニティとして構築、運営していたことを如実に物語っている。

「HiVEに入会すると、会員契約を結びます。単なるデスクシェアやレンタル契約ではありません。あなたは非営利社会の一員であり、何か大きなものの一部なのです」。

何か大きなもの。ドスっとくる非常に重い言葉だが、でもそう、コワーキングはただのハコではなく社会を変える仕組みだから、確かに何か大きなものだ。間違いない。

ちょっと状況は違うが、先日紹介したイギリスのコワーキングでも、存続を望むコワーカーで構成されるコミュニティの存在が多くを物語っていた。

というか、そもそもコワーキングとはそういう共同体なのだ。利用者は客ではない仲間だ、といつもヤイヤイ言うのはそういうこと。

2020年秋、「HiVE」はカナダ連邦政府の家賃補助制度を導入して、パンデミック中期の数カ月を乗り切るのだが、ここを救ったのは政府の援助や財政交渉だけではなく、彼ら自身がコミュニティであったことが大きい。

その後、移転に伴って規模を縮小することになるのだが、ここでも重要なインサイトを共有してくれている。

「不思議なことに、今のスペースは昔のHiVEに戻ったような感じがします。ランチタイムのおしゃべりが増え、みんな近くに座って交流するようになりました。 コミュニティ意識も活性化しました」。

以前もどこかで書いたが、コワーキングは広ければいいわけでは全然ない。時々、「国内最大級」と謳う広告を見るけれども、広さはかえって交流とコミュニケーションの機会を奪う。それではお互いに持てるものを提供し合うことで、新しい価値を生むコワーキングの本来の機能が発揮できない。

図らずもダウンサイジングによって、「HiVE」はコミュニティの重要性を再認識することになった。

そうしているうち、「HiVE」は単なるワークスペースから小規模な非営利団体のための非公式なインキュベーターに成長する。

「ホットデスクからスタートしたいくつかのグループが、HiVEに常設のデスクを数台構えるまでに成長し、場合によってはチームが十数名にまで拡大したこともありました」。

その中には、大規模な契約や政府補助金を獲得するほど評価の高い組織に成長したメンバーもいる。

「私たちは、これらのグループが潜在能力を発揮するための安全な空間を提供することができました。おそらく、私たちはそれを土台にして、将来的には非営利団体や社会的インパクトに焦点を当てたベンチャー企業のためのインキュベーターのような存在になれるでしょう」。

控えめだが自信に満ちた言葉だ。そして、こうも言う。

「HiVEを特別なものにしているのは、コミュニティです。私たちがここにいるのは、私たちがやっていることをみんなが信じてくれているからです。HiVEが築き上げる人間関係や、メンバーの野心や成果を通じて与える影響力なのです」。

で、そのコミュニティを活用したユニークなプログラムが「Desk Bee」だ。


「私たちの受付は、すべてDesk Beeと呼ばれるボランティアによって運営されています。週に1回、午前か午後にボランティアとして参加する代わりに、これらのメンバーはこのスペースでホットデスクを利用できます」。

つまり、メンバーが受付業務のために時間を提供する代わりにワークスペースを利用できる、とても合理的な交換条件。

「これらのボランティアは、実質的にスタッフの一部となり、私たちの組織には何の費用もかかりません。予算が限られている私たちにとって、これは大きな助けです」。

これは、「HiVE」を特別な場所にしているコミュニティ意識もさらに強めている。もちろん、うちでも以前やっていた。それが最近は「間借りコワーキング」になってる。

ちなみに、そのことは「コワーキング曼荼羅に学ぶローカルコワーキング基本のキ」でも「収益モデルと運営コストを考える」の項で話している。

「HiVEが、新興のコミュニティ・グループのための集合場所になるのを見たいですね。ソーシャル・インパクトのミートアップであれ、ソフトウェア開発グループであれ、私たちは人々がコラボレーションするために集まる場所になりたいのです」。

Baddour氏は、この数年間を振り返ってこう言ってる。

「最初はただのホットデスクのユーザーでした。今は、素晴らしい理事会とともに、HiVEをエキサイティングな時代へと導いていることを誇りに思います。しかし、その間も私たちの基盤となっているのは地域社会です。 それが私たちを支えているのです」。

そう、コワーキングは地域と共にあるからコワーキングなのだ。というか、まちづくりの一つの方法論としてコワーキングという仕組みが活かされる。

コロナ禍で苦境に陥ったコワーキングは世界中に山とある。それを、コワーカーとコワーキング運営者の関係を「vs」ではなく「with 」で乗り切ったこの事例は、コワーキングを開設、運営する者にとても重要なことを教えてくれている。感謝。

コワーキングは人と人をつなぐ仕組み。それを活かすも殺すも「人」次第だ。そのことは忘れないでおきたい。

ということで、今日はこのへんで。

(トップ画像:HiVE)

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