WeWorkの遺産が活かされるかもしれないニューヨークのプロジェクト:今日のアウトテイク#271(2024-08-15)
<アウトテイク>
・SNSに投稿するのではなく、これを自分SNSとした投稿
・記事として仕上げる前の思索の断片、または下書き
・一部、筆が乗ってきて文字数多いのもあり〼
・たまに過去に書いたネタを展開する場合も
・コワーキング関連のネタが多め
・要するに「伊藤の現在地点」
・いずれKindle本にまとめる予定
#今日のBGM
#今日のコトバ
#「コワーキング曼荼羅に学ぶローカルコワーキング基本のキ」受講者募集中
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#パチパチとカタカタ
今日、ふと気づいた。
ぼくは、「パソコンをパチパチする」と書く。
が、中には「カタカタする」と書く人もいる。
なんで違うのか?と考えた(暇か)。
で、判った。
カタカタはデスクトップのキーボードの音。
パチパチはノートパソコンのキーボードの音。
その違いじゃないかしらね。
とすると、いまどきノートが大勢を占めるだろうから(そうよね?)、パチパチが時流に合った言い方、書き方だと思うのだが。
言葉は時代とともに変わる。
#WeWorkの遺産が活かされるかもしれないニューヨークのプロジェクト
WeWorkはコワーキングでは(すでに)ない。不動産賃貸サービス業者以外の何者でもない。だから、ぼくはWeWorkのことは努めて話題にしないのだが、ちょっと思うところがあったので書いておく。
2010年にニューヨークで開業した頃は、コミュニティベースのよくあるコワーキングだったはずだが、その後、不動産サブリース業として事業展開するようになり、莫大な資金を得たおかげで知名度も評価額も上げていよいよ上場かというところまでいったものの、そのサブリース業で失敗し破綻への道を走ったことは周知の通り。
そのサブリースのむちゃくちゃぶりはここで書いた。
ぼくは、その過程でコワーキング=不動産業というイメージを世間に与えたこの会社の責任は重いと考えている。
ところが、一部のメディアにはいまだに同社を大手コワーキングスペースと捉えている気配が、国内にも海外にもある。それは認識不足だ。
WeWork自身、随分前からコワーキングという言葉は使っていない。フレキシブル・ワークスペース、もしくはオフィススペース、あるいは単にワークスペースと言ってる。あえて使わないようにしているのなら賢明だと思う。
そのWeWorkがフリーランサーより企業に的を絞り始めたのは、パンデミックよりうんと前だ。先見の明があったのかもしれないが、個人プレイヤーを一本釣りするより、企業の社員をまとめて何百人と引き受けたほうが効率が良かったのだろう。
むろん、企業側にとっても有利だった。賃貸借契約でなく利用契約だから、毎月決まった家賃を支払うのではなく、利用した時間、日数分だけ支払う。これはコスト削減に大いに役立った。
付け加えておくと(先の記事にも書いたが)、国際会計基準(IFRS)に準拠する大企業は、家賃などのリース料が経費だけではなく資産にも計上されることから、「賃貸借契約」を避ける動きが活発化していた。おかしくなる前のWeWorkは、いち早くそこに気づいて、フリーランサーより大企業の社員にフォーカスを変えたことが功を奏したというわけだ。
ただ、この時点ですでにCoworkingという衣は脱いでいたと思う。企業のワークスペースを提供することに、コワーキングという概念はむしろ邪魔だったのではないかしらね。
ただし、それがその後の、複数の企業が同居するフレキシブル・ワークスペースに発展することになる。従業員を通勤させなくなった大企業は今、この環境を必要としている。
WeWorkのウェブサイトによると、同社は日本国内約40拠点(2024年1月現在)を含め、世界37カ国に600拠点以上を展開しているという。破産手続きが進む中、日本はソフトバンクがバックアップに入り、イギリスなど一部経営を持ち直しているところもある一方、ニューヨークでは190以上のリース契約について再交渉を行い、不採算と判断した170カ所余りから撤退した。要するに損切りだ。
そこへ、つい先日、ヒュンダイ社が韓国のWeWorkスペースの19フロアを占有するというニュースが届いた。同社がソウルのWeWork Seolleungで74,000平方フィート、WeWork Gangnam Stationで3,700平方フィートをオフィスとして使用する。
これなんか、WeWorkは万々歳だろうが、同社が不動産業以外の何物でもないことを如実に物語っている。
ついでに、世界中のどこのWeWorkでも利用できる1,000枚のWeWork All Accessパスをヒュンダイ社の従業員に提供するという。グローバル企業にとっては柔軟な労働環境を従業員に提供することは今や究極の課題だから、カシコイ選択だと思う。思うが、WeWorkはコワーキングではない。
とか言ってたら、このニュースが飛び込んできた。ニューヨークのかつてWeWorkがあったビルがコンドミニアムに生まれ変わる。
広さ20万平方フィートの建物のうち、6万平方フィート以上をWeWorkが拠点を持っていたビルで、破産手続きの中で賃貸契約を破棄したニューヨークの40拠点のうちの1つ。
ニューヨーク・ポスト紙によるとこの20階建ての物件は約7,200万ドルで購入されたらしい。それを、2026年までに約100戸のコンドミニアムに改築する予定。
パンデミック以降、アメリカの大都市圏ではオフィスビルの空室率がうなぎのぼりで、それを住宅や小売スペース、レストラン、ホテルなどの他の用途に転換するプログラムが各地で展開されている。ニューヨークも例外ではない。
CBREが発表したレポートによると、2024年第1四半期には、アメリカの総供給量の1.7%に相当する7,000万平方フィート近くのオフィススペースが他の用途に転換中であり、2023年第3四半期の総供給量の1.4%に相当する6,000万平方フィートから増加している。たぶん、この傾向は当分続くと思う。
不動産とはよく言ったもので、「不動」=どこにも動かしようがない資産だ。そこにある限り、誰かに利用してもらわなければ利益を生まない、どころか莫大な負の資産、つまり「負動産」になってしまう。使用されていないオフィススペースを需要のある住宅に再利用することを検討するのは自然な流れだ。
それで思い出すのは、以前書いた、都市圏の高級マンションにコワーキングスペースを整備するというこの話。
これも元々、パンデミックのせいで通勤しなくなり、在宅ワークが常態化してきたことから始まっている。
通勤を排除した「職住近接」が都市圏でも郊外でも、これからの働き方のベースになる。今後、ワークスペースは郊外へと分散していくのは間違いないが、一方で都市圏での生活を選択する人もいる。こういうワーカーにとっても「生活圏内」にあるワークスペースは欠かせない。
で、思った。たぶんだが、くだんのニューヨークの物件でも住宅に転換する際にリモートワーカーやハイブリッドワーカーのニーズを満足させるために、一部の階層をコワーキングにするのではないか。いや、きっとそうする。
というか、かつてWeWorkであった階層を、大きくリノベーションすることなく、一部アレンジすることで住民専用のコワーキングにする可能性は高い。あ、いや、違うな、コンドミニアムの住民以外の近隣のワーカーにもメンバーシップを販売して開放する、そのほうが収益性が高くなる。
つまり、住宅にパブリックなコワーキングがセットになっている、というカタチが来てる。これ、都市圏ではちょっとしたトレンドを作るのではないかしらね。日本も、この先、あるいは。
偶然だが、Facebookの「思い出」に、昨年の今日の投稿が流れてきたので見たら、なんと、住まいとコワーキングのセットのことを言ってた(みたい)。
どういう経緯でこれを投稿したのかは覚えていないが、まあ、そっちの方向だということは間違いない。
ただ、そこにコミュニティができるかどうかは、デベロッパーではなくてオペレーター、運営者の腕にかかっている。もし、コミュニティがぼちぼちとでも組成されるのであれば、それはコワーキングになり得る。なければ、それは単なるハコだ。
考えてみれば、これはWeWorkの遺産をどううまく活用して新しい価値と意味を生み出せるのか、ということだと思う。このプロジェクトは注目しておこう。
ということで、今日はこのへんで。
(カバー画像:Nahima Aparicio)
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