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瀬戸内のホテルに見る「コミュニティが所有者」とコワーキングの資金調達について:今日のアウトテイク#301(2024-09-14)

<アウトテイク>
・SNSに投稿するのではなく、これを自分SNSとした投稿
・記事として仕上げる前の思索の断片、または下書き
・一部、筆が乗ってきて文字数多いのもあり〼
・たまに過去に書いたネタを展開する場合も
・コワーキング関連のネタが多め
・要するに「伊藤の現在地点」
・いずれKindle本にまとめる予定


#今日のBGM

#今日のコトバ

"真実とは太陽みたいなものだ。ほんのしばらくは遮ることはできるけれども、なくなることはない。"
(エルビス・プレスリー)

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#瀬戸内のホテルに見る「コミュニティが所有者」とコワーキングの資金調達について

先日、【URASHIMA VILLAGEを売却いたします!】という投稿がFacebookに流れてきた。ナニゴトかと思って読んでみたら、すごくオモシロイ取り組みだったので共有します。

「URASHIMA VILLAGE」というのは、2021年に香川県三豊市の地元の企業を中心に11社で出資して作ったホテルのこと。

このトップページの美しいこと。

開業以来、大人気で年間稼働率も6割にもなり、夏の稼働率も90%越える。それをなんで売ってしまうのか?

詳しくはこのプレスリリースに詳しいが、株式会社エンジョイワークスが運営する地域活性ローカルファンド「ハロー! RENOVATION」が、投資家を募集するSPC(合同会社三豊地域活性化ファンド)で瀬戸内ビレッジ株式会社の「URASHIMA VILLAGE」を購入し、その後、同社にリースバックする、ということらしい。

図にするとこう。(うん?「地域住民/関係人口・宿泊リピーター」にも「分配」の矢印があるはず)

(出典:香川県三豊市・ソーシャルプロジェクトファンド URASHIMA VILLAGEプロジェクト)

つまり、事業自体の売却ではなく、建物という資産をオフバランスをさせるための売却で、売却後はそのまま瀬戸内ビレッジ社が建物をリースバックで借上げて運営を続ける。

そのオフバランスというのは、

資産や取引などが事業主体の財務諸表に記載されない状態のこと。資産効率の改善などが期待できるため、近年オフバランス化を図る企業が増加している。

(出典:野村総合研究所)

じゃ、なぜそうするのか?について、瀬戸内ビレッジ社の古田秘馬氏が投稿されているのだが、長文なので一部だけ引用すると、

地域を盛り上げる事業をスタートさせるときに必ずネックになるのが、立ち上がりは良いのですが、その事業のEXITモデルがないことが挙げられます。

それにより、その事業をスタートすると最後まで資金的なリスクを創業メンバーが追い続けることとなり、どうしても地域の名士など特定の人が常に負担し続けるか、一念発起して起業した人は次の事業をやりたくても金融機関のサポートが難しかったりと、地域の事業をどんどん立ち上げたくても立ち上げられない環境がありました。

これはこういう「ローカルのために起ち上げたビジネス」に共通のジレンマではないかと思う。結局、「その事業のEXITモデルがない」というところで、次につなげていくカツドウが分断されてしまうのは、そのまちの成長をも途絶えさせてしまうので実にもったいない。

そこで、

地域の初動は、地域の100年企業や、やる気のある起業家たちで素早いジャッジで進めていける体制で事業を作りあげ、実際に事業が安定期に入った時点で、数字も見えてくるので、事業そのものではなくその事業の不動産をオフバランスする形で、初期の資金を回収して、また次のプロジェクトに投資をしていくモデルができるのではないか

と考えるに至った、とのこと。それが、今回募集している「香川県三豊市・ソーシャルプロジェクトファンド1号」で、これによって投資家から資金を集め、不動産部分を売却し、次の事業資金を確保するとともに、物件をサブリースして営業はこのまま継続して、家賃を払うことで、株主に配当する、という図式。

それに一口10万円から応募できる。ファンドの詳細はこちらを。

で、このプロジェクトの注目点は、このホテルのファン、リピーターの方にオーナーになっていただく、というところ。ユーザーが株主となって「URASHIMA VILLAGE」に関わりを持つ、というか、支えてくれる。

「事業のEXITモデルがない」という課題に対して、いわば「Exit to Community(コミュニティが所有者・出口)」を地で行っている。スバラシイ。

ところで、その「Exit to Community」とは何か。

以前、ここでちらっと紹介したNathan Schneider氏がこう書いている。

「Exit to community」では、企業は投資家の所有から、その企業に最も依存している人々による所有へと移行する。
そうした人々は、ユーザー、労働者、顧客、参加組織、あるいはそうしたステークホルダー・グループの組み合わせかもしれない。
共同所有の仕組みは、協同組合、信託、あるいは暗号トークンかもしれない。
コミュニティは、そのプロセスが終わったときに会社全体を所有するかもしれないし、違いを生み出すのに十分な部分だけを所有するかもしれない。

つまり、企業をただ「売買するためだけの投資家」からではなくて、「その企業に最も依存している人々」から投資してもらい、その人たちが所有すること。つまり、その企業のファンに株主になっていただく。言い換えると「コミュニティが所有者」。

これ、実にスバラシイと思うのだがどうですか?

というか、かの渋沢栄一翁がフランスから持ち帰ってきた「合本主義」は、日本の資本主義のルーツのように言われているが、本来、多くの人々から少額ずつ出資してもらって事業を起こし、長いスパンで育成し殖産することを目的としていたのであって、株券を短期間で売買して利ざやを儲けることではなかったはず。

だから、「Exit to community」はその本来の資本主義に最も近い思想に支えられていると言っていいと思う。

ちなみに、Nathan Schneider氏はPlatform Cooperativism(プラットホーム協同組合)の提唱者のひとり。そのことはこちらに書いてる。

ついでに、彼の著作は今のところこれが唯一の翻訳書。

あ、そういえば、と今になって思い出したが、彼がいるコロラド大学の Media Enterprise Design Lab が、「Exit to community」に関するブックレットを発行していたので、4年前に送ってもらったんだった。

で、こういう資金調達の方法を、いずれコワーキングにも応用できる時が来るはず、とぼくは思っている。

コワーキングも起ち上げ段階に相応の資金を要する。昔は起業というとすぐに銀行融資をと考えがちだったが、昨今、クラウドファンディングでいわゆる有志から支援いただくという手法も当たり前になってきた。とてもいい傾向だと思う。

「Exit to community」は、有志からの出資という意味ではそれに近い発想だ。

コワーキング開設の折の資金調達の方法については過去にも書いてる。

クラファン以外には、地方自治体の補助金もあるが、例えば、協同組合でコワーキングを開設する方法や、コワーキングとは別にコミュニティ財団を設立して、市民から資金を調達する方法もある。

上記の記事に詳しく書いているが、いずれもそのコワーキングに期待している、その開設を応援したい、利用したいという人たちからの浄財と言っていいと思う。そういう意味では、まさに「コミュニティが所有者」だ。

なお、ぼくが推奨するインディー・コワーキングでは、スタッフだけではなくコワーカーもそのコワーキングの運営、維持継続に協力するけれども、資金調達においても例外ではないと考えている。

コワーキングは誰のものでもない、みんなのものであって、コミュニティでありつつコモンズでもある、と考えれば、みんなで出資し合うというのはスジが通っていると思う。

スタートアップのように「Exit」、要するに高く売り抜けるか買収されるかを狙っているわけではないが(いや、そろそろ日本でもそういうコワーキングが出てきそうだが)、資金調達と同時にコワーキングのコミュニティ組成のプロセスとして、考えておいていいと思う。

なお、そのクラファンについては、考えていることがあるので、また書きます。

ということで、今日はこのへんで。

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