【政治】困難女性支援法 運用に関するパブコメ① 提出編

■はじめに

これは以下のリンク先のNoteに書いた導入編を受けて,実際に提出した内容とその解説になります.
導入編では考え方を簡単にまとめてありますので,まずはそちらを読んでいただくと話が繋がりやすいかと思います.

そもそも導入編では正確に「何に対して」というのを意図的に書きませんでした.
これはパブコメは「提出したい人が書く」が基本と思っていますので,そういう意思を持った人はおのずと辿り着いているだろう,または辿り着けるだろうと思ったからです.

2023/02/28 23:59に本件の提出が締め切られましたが,「何に対して」かをまずは書きますと下のリンクになります.

これは,困難な問題を抱える女性への支援に関する法律の方針(案)に対する意見募集でした.
自分は以下2件を提出しています.

1.対象範囲の適正化

提出文

『本方針(案)P.2から始まる「はじめに 1.これまでの経緯」の冒頭8行、及びP.4から始まる「はじめに 2.方針のねらい」の冒頭8行にある様に、本法は国及び地方公共団体が旧売春防止法を根拠法とする婦人保護事業では不十分として保護又は支援することが難しかった問題に対して、旧来からの対象範囲を変更することで新たに保護又は支援を可能にする法律である。よって今までの婦人保護事業で問題になっていた他法との役割分担が正しくできる様になると考えられる。
ただし、その対象範囲である本方針(案)P.4 「はじめに 2.方針のねらい」の10行目にある「性的な被害、家庭の状況、地域社会との関係性その他さまざまな事情により日常生活又は社会生活を円滑に営む上で困難な問題」や、対象者の範囲である本方針(案)P.10の5行目に「法が定義する状況に当てはまる女性であれば年齢、障害の有無、国籍等を問わず、性的搾取により従前から婦人保護事業の対象となってきたものを含め、必要に応じて法による支援の対象者となる」とあり、また本方針(案)P.10の18行目から20行目に渡って「性自認が女性であるトランスジェンダーの者については …(中略)… 可能な支援を検討することが望ましい」にそれぞれに対して定義がまだ曖昧であるため、以下6点を鑑みた上で困難な問題の対象範囲及び対象者をできる限りより具体的に、また明確に定義し、記載して頂きたい。
 まず困難な問題に対して3点挙げる.
 1点目として、本法の基本理念として本法第三条一項に困難な問題を抱える女性への支援を提供する体制を整備することとあり、また同じく第三条三項に男女平等の実現に資することを旨とするとあり、これは基本理念として男女平等を保ちつつ女性のみを対象とした支援体制を構築すると解釈される。つまり、本法で支援対象とされるのは男性では存在しない、女性にのみ特有に存在する問題に対して本法の対象範囲を設定しなければ本法第三条一項及び三項を同時に満たすことは出来ないと考える。
そのため、男女ともに起こり得て、かつ他法で支援が可能である問題に関しては、他法との役割分担として本法では支援対象外とした上で、本法の対象範囲を決めるべきと考える。
例えば、生活保護法、生活困窮者自立支援法、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律、ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法、児童福祉法などその他を含む様々な法律で男女平等に支援が受けられる場合は、役割分担として該当する他法を適用することが本法の基本理念として正しいと考える。
 2点目として、本法の前身の一つの事業として考えられる若年被害女性等支援事業に対して、令和五年参議院第211回通常国会質問主意書提出番号1番の若年被害女性等支援・困難女性支援に関する質問主意書に対する答弁として、第1項に「様々な困難を抱えた」若年女性の定義として「性暴力や性被害に遭った、又は被害に遭うおそれのある」若年女性を想定している、と閣議決定の上で回答しているのは非常に重要であり、本法の困難な問題に対してもこれと同格になるものと考えられる。
 3点目として、本法の対象範囲は他法と役割分担するべき観点から、本法は他法他施策と対等であるという立場として役割分担を設定することで、婦人保護事業では令和元年に他法他施策優位の文言の削除に対して抵触しないと考える。
 次に対象者に対して追加で3点挙げる.
 4点目として、生物学的に女性であり性自認が男性である者は「法が定義する状況に当てはまる女性」として含まれているから記載がないのか。もし対象としていないとしたら不平等であると考える。
 5点目として、「国籍を問わず」とあるが、この場合は「法が定義する状況に当てはまる」を前提として出入国管理及び難民認定法に基づく在留資格保持者及び人身取引等により他人の支配下に置かれている者、または日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法に基づく特別永住許可を得ている者に限るべきと考える。例えば一般旅行者や不法滞在者などに関しては対象外と考える。
 6点目として、困難な問題の対象範囲と本項の支援対象者の定義の双方に合致した者が本法での支援対象者であると考える。』

解説

対象範囲と対象女性の2つの観点で,それぞれ3つずつ,合計6つの具体的な範囲指定を提示しつつ,対象を絞ることを目的とした.

・対象範囲の縛り
(1).憲法14条もそうだが,そもそもこの法律でも記載されている「男女平等」の観点から他の法律で男女平等に保護や支援がなされる対象に対してはこの法律の対象外とすることを推している.
そうでなければ同じ法律の中ですでに矛盾するのでダメ.

(2).この法律のモデル事業の若年被害女性等支援事業に対して音喜多参議院議員が提出した質問主意書に対する答弁が「性的被害に遭う,または遭うことが想定される女性」と限定されていて,この法律の文言よりも範囲が狭かったので,逆手にとってそれに基づくことを推している.
閣議決定された答弁なのでここからの解釈変更は難しいと思われる.

(3).この法律の前身である婦人保護事業ではもともと他法を優位として扱う,つまり他に適用できる法律があればそちらを優先的に適用して支援するという(1)と近い考え方があったが,途中でこの文言が削除されており,法律的にかぶっても婦人保護事業として保護,支援してもよいと変更されていた.
また法律の解釈として,似た法律はあとに成立した方を優先するという考え方がある.
これらを肯定してしまうと,この法律を優先してあらゆる人を保護,支援できるという解釈が成り立ってしまい範囲が広すぎるので,(屁理屈を言って)他法と平等で扱うことを推している.

・対象者の縛り
(4).案文にトランスジェンダーとして,生物学的男性で性自認が女性は対象とだけ書いてあり,暗に生物学的女性で性自認が男性を外している.これはさすがに不公平だし,似た境遇に立たされる可能性は容易に想像できるので,対象とすることを推している.

(5).国籍に関して単なる旅行者や自分の意思での不法滞在者等まで保護対象にされない様に,在留資格や永住権などを持っている人に限ることを推している.

(6).以上5項目において保護対象として合致した人が真の対象者であるという念押し

2.民間団体の活動(委託業務を含)の限定

提出文

『本方針(案) P.2から始まる「はじめに 1.これまでの経緯」に示されている通り、今までは本法が存在しなかったために国及び地方公共団体が本法で新たに保護及び支援対象になる者に対して主体的に保護及び支援活動ができなかったことが主たる原因で、その保護及び支援を担っていた民間団体はその人材や運営資金の規模、運営基盤に見合わない活動をしなければならなかったと言える。
これに対して本法は、今まで民間団体の主体的な保護又は支援を担っていた対象者に対して国及び地方公共団体が活動の幅を広げて主体的な保護及び支援を可能するための法律であり、ひいては今までの国及び地方公共団体と民間団体との関わり方が大きく変わるものである。
また、本方針(案) P.5の26行目にある「地域によって困難な問題を抱える女性への対応に大きな格差が生じるべきでなく、支援対象者が全国どこにいたとしても、必要十分な支援を受ける体制を全国的に整備していく必要がある」もまた重要である。
これらの変化や対応に関する国及び地方公共団体と民間団体との関わり方に対して以下3点を鑑みた上で、本法第七条の厚生労働大臣による基本方針の策定、都道府県による都道府県基本計画の策定、及び国及び地方公共団体の実活動に対するガイドライン等を策定するよう明記頂きたい。
 1点目として、国及び地方公共団体は本法に則り、今までの民間団体の活動に替わり主体的に保護及び支援の活動をすることになるため、これまでの経緯にて問題になっていた民間団体の過度な負担を軽減に大いに寄与すると考えられる。
民間団体との協業の継続の観点から、国及び地方公共団体はその活動により民間団体の人材や財政面などの規模に見合った運営ができるように民間団体の負荷を軽減することも重要な役割と考える。
 2点目として、地域格差のない必要十分な支援体制の構築に対しては、民間団体はその地域ごとの団体数やそれぞれの団体の規模、特性、又は活動の継続性や連続性などは様々であり、また民間団体のネットワークは全国に満遍なく張られている物ではないため、地域毎の個々の民間団体に頼った制度運用にて全国に平等な体制を整備することは非常に困難であると考えられる。
一方で国及び地方公共団体は法に則り活動内容や規模、また活動の継続性や連続性、公正性を保証するものであり、ひいては全国に格差のない公平な体制を整備するには国及び地方公共団体の率先した活動と連携が重要である。
 3点目として、民間団体に大規模な業務委託を行うことは、その団体への業務委託を打ち切った際の財政面の落差によりその民間団体の活動そのものが不安定になりかねず、また一部の民間団体にのみ随意契約等により業務委託を継続することは民間団体全体において公平性に欠ける。
よって民間団体への協業として委託を行う場合は必要最低限の小規模なものが望ましいと考える。』

解説

国や地方公共団体について以下3つの具体的な状況を提示することで,相対的に民間団体の活動範囲を限定することを目的とした.

(1).いままで国や地方公共団体 0%,民間団体 100%で行っていた事業に対して国や地方公共団体が本格参入するので,おのずと民間団体の割合は減るはず

(2).地域格差のない公平さを全国に求めるのに民間団体は不向きで,それをやるのは国や地方公共団体の役割

(3).民間に公金を入れたり切ったりすると民間団体の運営ががたつく,一方ある民間団体に継続委託すると公平性に欠ける

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