木田さんのnoteを読む会(※無料記事)
『ガクヅケ』という私が好きなお笑いコンビの木田さんが、コンビ活動休止中(来年2月か3月頃に復帰らしい)に1ヶ月間、北海道の利尻島の旅館で住み込みバイトをして、そのことを書いた有料noteを先日アップした。
最初は2000円、いや3000円、いや3500円にさせてください、みたいなことをインスタのストーリーズに文字で言っていて、フタを開けてみると4000円だった。
さすがに月5000円の小遣いで何から何までやりくりしている高校生に4000円は…と思った私は、Xでなんとなく何か買って読んだ人の感想だけでもと思って検索してみたら、
「木n田さんのnoteみんなで買って読む会をしませんか?都内です。DMください」
とこっそり言っている小文字ローマ字だけのアカウントを見つけた。別に鍵垢ではなかった。私はどうしても読みたかったので、ためらうことなくDMを送ってみた。
はじめまして…!
たまたま辿り着いたのですが、木田さんのnoteを読む会、興味があります!
よろしければ詳細を教えていただきたいです!
都内在住です!
よろしくお願いします。
するとすぐにサムズアップ👍がつき、コピペしたであろう詳細が送られてきた。
ありがとうございます!
以下、詳細です。
スケジュールをすり合わせることが難しいので、こちらが勝手に決めさせていただいた以下の日時・場所に集合でお願いします。
参加可否だけお返事いただけましたら幸いです。
よろしくお願いします。
※念のため、このことは内密でお願いします🙇♀️
9月19日(火)19時00分
JR新宿駅東口交番前
おー木田さんの誕生日やん。なるほど誕生日お祝いも兼ねての集まりかなーと胸躍らせ、迷わず
参加でお願いします!!
と返事をした。
9月19日19時05分。
階段を駆け上がって交番を見ると、女性4人のグループがいた。同年代くらいかな。恐る恐る声をかけてみると、木田さんnote会の皆さんだった。
「これで全員ですね。では、自己紹介とかも要りませんね。目的は一つです!喫茶店に行きましょう!あ、安心して、私の奢りだから!」
快活な女性、これがアカウントの主であろう。そう言い終わるや否やリーダーは家に帰ろうと駅に向かう人波を押し分けるようにズンズンと異常せっかち彼氏のように早歩きで進んでいくので、他の私たちはそれについていくのに精一杯で一切の会話もできなかった。
歩くこと3分ほど。ついていくがままに狭い階段をのぼって3階のうす暗い喫茶店に入った。入った瞬間に分煙のできていない喫茶店でウッとなったが促されるがままに奥の奥のカドのL字型のソファに私たち4人は腰をかけ、対する椅子にリーダーは腰をかけた。
「なんでも好きなの頼んでー、お腹すいてる?」
とメニューを私たちに見せて、全員がアイスコーヒーを頼んだ。
「じゃあアイスコーヒー5つ、お願いします、以上で。…よしっ、さっそく買いますか!」
そう言うとリーダーはスマホを取り出した。
「なんか、ちょっと罪悪感ありますね(笑)」
「えーなんで?」
「いや、なんか木田さんに申し訳ないというか…」
「あ、わかりますわかります、正直わたしも迷いました」
「ですよねー、でもお金ないですもんねぇ…」
「そうですよねぇ(笑)4000円は…」
「ハハハ(笑)」
「…みなさんは、学生さんですか?」
「はい、高1です」
「あ、私もです」
「えっ、私もー」
「あーみんな高1なんですね、私は高3です」
私が年寄りだった。年齢確認をしている間、リーダーはさっき「えーなんで?」とスマホを操作しながら言ったきり一言も発さず、やっと次に発した言葉が、
「よしっ!購入完了!」
だった。
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
口々にお礼を言うと、リーダーはキョトンとした顔をしていた。
「ありがとうございます?」
一瞬、時が止まった感じがしたので、あーここは年長者の私かと思い、
「…あ、お金、えーっと、5人なので、1人800円ですかね?」
とお金の話を切り出したところ、リーダーはさらにもう一段階深いキョトン(深キョン)をして、3秒後に少し斜め上を見ながら喋り出した。
「5人だったら、2万だから、木田さんに入る取り分はだいたい8.5割だからえーっと、8500円のかけ2で、1万……7千、1万7千かな?あーでもクレジットカード決済の支払いの場合だから、そうそう携帯キャリア決済とかだと木田さんの取り分が減るの!クレジットカードだと5%のところが、携帯キャリアとかだと15%決済手数料?ってのがかかるっぽいの!全然ちがうよね?あーそっか、学生さんだからカードとか持ってないかな?じゃあ私がクレジットカードで…あーそっか、同じ記事を5回買うのってさすがにできないか、そっかそっか、じゃあどうしよ、えーっと、カードは…持ってないよね?」
話し出し1行目からまったく内容が耳に入ってこず、これは誰が悪いのか?私が悪いのか?いや他の3人も私みたいな同じ顔をしていてやはりそうだよなとアイコンタクトをしたり、下を向いている者もいたりで、年長者の私がここは代表して言うべきか?いやさすがにこの大逆転は私一人の力では無理だぞと思いながら、気が付いたらカードの有無を聞かれていたので、考えるよりも先に声が出ていた。
「カードは持ってないですね」
結局、力及ばず、何も動けず、全員所持金がないことを伝えると、そっからはなんかそのリーダーだけが木田さんの3万字のnoteを黙読する時間が続いた。
壁掛け時計を見ると、20時を回っていた。
タクシーかと思っていたら、カラオケだった。
料金体系がカラオケなんだったら先に言ってほしかった。
コーヒーはとっくに水になっており、脳だけがカーッとしていた。
これは誰のせいだ?
元はと言えば…