オドリバ『Focus 01.浅川奏瑛|人間っていいな』感想
オドリバ『Focus 01.浅川奏瑛|人間っていいな』感想
2022.08.11
「生前葬」
調べたこともないし立ち会ったこともない。
身近ではない言葉。
しかし当日パンフレットに綴られていた関係者の製作背景を読むととても興味深い事なのだと気づいた。
その気づきは、公演全体を通して止まることなく、「生前葬」の可能性やそもそもの人間の在り方まで考える時間になった。
客席はとても暑かった。
関東では猛暑日が過去最高日数を記録している。そんな中で本番中クーラーが効かないのはどうしてだ..。と思った。
が、そこもまた演出かとも思った。(思い込みすぎかもしれないが。) おそらく空調の音が大きく演出の妨げになると普通は思うのだが、実際に体験してみると冒頭に述べた「生前葬」というキーワードがどの事象も合理的にしてくれる。"暑い"や"汗をかく"など、死んだ人には到底感じることのできない感覚。その感覚がこの密閉空間で研ぎ澄まされた気がして、ある意味よかった。ただ、自分はかなり代謝がいいので常に熱を発していて、集中力が削がれた時もあった。奏瑛が近くにきた時、彼女の熱気と共にやんわり風がきて、ほんの一瞬涼しかった。ありがたい。
小道具の使い方もよかった。
ソロ公演は身一つだけだとやる側もかもしれないが、観る側もかなりきついと思う。そういった面で、常に何かが舞台上あると色々つまんで考えることができ、飽きずに見られた。
また、その小道具たちも(自分的には)想像しやすく、また自分の今を重ねることができた気がした。(最近特に"分かりやすい舞台"に面白さを感じており、なにかと意味付け(やすく)ないと飽きてしまうのです..)
木っ端
積み上げてきたもの。また後半は先人(モノ)のシカバネ。
吊るされた木っ端(魚)
ドライフラワーのような枯渇したシカバネ。死人を星に例えて見上げるような。そんな感じ。
バケツ
建前、プライド。知っているのに知らないフリ的な..。なんかうまく言葉にできないけど「本当はアクションしたいけどアクションしない」というある意味理性的なモチーフ。
虫かご(氷入ってた?)
記憶。氷が溶解し水となり蒸発していく。それが命の抽象的な循環に思えた。(「人は2度死ぬ」的な..。物理的な死、そして記憶からの抹消)
と、色々主観的に思ったことをまとめてしまったが、本公演の小道具はキャストばりの存在感だった。なので最後の挨拶(紹介)も小道具も紹介した方が良いと思った。(冗談)
RAFTの紹介で締め括ってもまた気持ちいいかもしれない。
奏瑛の衣装が汗により透けてきて、若干際どく、目線の当て方に気を使ってしまった。
それもこれも空調の音が原因なのだろうか。
ともあれ、それほど身体が熱かった。気持ちいいくらい踊ってくれて、こちらも清々しかった。動きのモチーフは特に意味付けせず見ていたが、多くは分からなかった。ただ、熱かった。密閉(?)された空間で「もういいよ」と言いたくなるくらい酸素を吸引していたため、こっちも少し苦しかった。
明後日、友人と富士山に登る。
酸素に生かされる事実を噛みしめながら、全力で生きている喜びを、景色と共に感じたい。