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二本目 『僕らの必需品"JUDO-PASS"』

さあ、はじまりました『ドイツ柔道部物語』通称"DJM"
みなさん名前だけでも覚えて帰ってください。そしてあわよくば記事も読んでいってください。

今回の内容はドイツの全柔道家の必需品"JUDO PASS"についてです。
それではまいりましょう。「はじめ!」

JUDO PASSとはなんぞや?

柔道パスって何かと簡単に説明すると、柔道家としての身分証明書でありドイツ柔道連盟の会員証とでも言えるでしょうか。

ドイツで柔道の大会に出る時や、昇級・昇段試験、特定の講習会に参加する際などに必ず必要なパスポートのようなものです。

クラブチームに入会するとともにドイツ柔道連盟にも入会し、ドイツ柔道連盟から発行されます。値段は確か4.5ユーロくらいやったと思います。しかしパス代とは別で年会費も支払う必要があります。この年会費が毎年20ユーロかかります。

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画像のようにこの柔道パスには個人の写真、氏名、生年月日、国籍、性別、クラブチーム名、属している州の柔道連盟の名前、いつからそのクラブチームに所属しているかなどの情報が載っていてこれで自分の身分を証明するわけです。

にしても7年以上前の写真なのでいろいろツッコミどころが多いですね。笑

そして大事なのがJahresmerke(年会費を支払済み証明のスタンプ)です。右ページの左下のスタンプです。2年目以降は別のページに貼って行くのですが、毎年デザインが違います。

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実はこのスタンプが貼ってないと試合会場に柔道パスを持っていっても門前払いされます。いや、忘れんなよと思いますが、年が明けてすぐの大会などではスタンプの貼り忘れが頻繁に起こります。

ちなみにこのスタンプはクラブチームが毎年だいたいの会員の人数分を注文してまとめて送られて来ます。ですので緊急時に備えて指導者は常に何枚かを携帯している必要があります。それでもスタンプの貼り忘れ、コーチも持ってくるのを忘れたなんてときがたまーにあるので、そんな時は他のクラブチームのコーチから20ユーロで買い取ったりします。(そのスタンプが1枚20ユーロで発行されているので。)

よーく見てもらうとわかりますが僕のパスには2020年のスタンプが貼られていません。チームの事務所に取りに行かないとダメなんですがいつもつい忘れてしまいます。こういう先延ばしがトラブルの原因ですね。気をつけましょう。

JUDO PASSの使い方

皆さんが海外に行った時にその国の入国・出国記録がパスポートに記されるように、柔道パスには大会記録や講習会の参加記録、昇級記録などが記入されます。

なぜ記録するのかということなのですが、ドイツでは色帯制度が採用されており、1級までに「白→黄→黄オレンジ→オレンジ→オレンジ緑→緑→青→茶」の順に段々と濃い色の帯へと変遷していきます。

そしてたしか3級(緑)以上からは一定の期間を空けないと次の昇給試験を受けることができません。なので前回いつ級試験を受けたのかを確認するためにこの昇級の記録が必要になります。

また、大会によっては「◯級以上のみ参加資格が与えられる」などの規約があったりするので帯の色を変えて参加できないようにするために事前にパスのコントロールがあったりもします。

以前、コーチ就任してすぐの頃、大会要項の参加資格部分を見落として選手が参加できないなんてこともあったので注意が必要です。というより参加資格の制限などという概念は微塵もありませんでした。

というのも、そもそも日本では昇級試験などは各道場の方針であったりなかったりで、少年柔道では全国で共通した級の規定などはなく、大会で参加資格の制限はほとんどなかった記憶があったからです。

まあこの失敗以降はもれなくしっかりチェックしています。
その節はすみませんでした。(この場を借りて謝罪。)

そのほかにも大会の記録や、講習会の参加記録は、各都市の選抜選手を決めるための参考資料にもなります。

JUDO PASSのもう一つの役割

この柔道パス、もちろん選手の身分証明書ではあるんですが、実は柔道の競技人口維持や各州の柔道連盟の補助金の確保のためのツール的側面もあります。

大会や昇級試験、講習会などの参加以外にも柔道連盟主催のスポーツフェス・サマースクールなどのイベント参加も記録されます。つまりクラブチームの一員としての社会的関与も評価されるわけです。

その参加費用としていくらかお金が必要になります。そしてその費用が柔道連盟の運営のための資金にもなっています。

つまり子供達は様々なイベントへの参加を通じて記録された柔道パスによって、自身の成長を感じ、さらなるモチベーションを生み出すことができ、そしてそれらの経験にはお金を払う価値があるという考えを持った保護者たちがどんどん子供達を柔道という社会に送り出すという仕組みになっています。

そういった観点から、ドイツの柔道連盟は競技スポーツという枠だけではなく上下左右さまざまな価値観を持った幅広い層からうまく組織されていると言えるのではないでしょうか。(あくまで僕個人の感想です。)

てなわけで今回はドイツの柔道連盟の組織のあり方の一部を紹介してみました。
それまで。ではまた。


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