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(1) 証券会社の審査の目的(続き)

上場後に業績予想が下方修正されると、株価が下落し投資家が損害を被る可能性があります。また、上場初値が公募価格を下回ると、公募価格の算定は正しかったのかとの批判を受ける恐れもあります。審査担当者としてはこのような事態を回避するために、慎重に審査対象会社の業績を審査します。

ただし、下方修正は絶対に避けるべきであり利益計画が達成できるまで上場申請はしないという考え方もある一方で、業績予想には不確実性が伴うので、計画策定の前提条件をしっかり開示することで投資家の投資判断に委ねるという考え方もあります。 月次業績の変動が大きく、決算を締めるまで通期業績の見通しが立てづらい業種もありますが、業績の進捗状況によっては、計画の達成が見通せる時期まで上場申請のタイミングを遅らせたり、申請期自体を延期せざるを得ない場合もあります。

主幹事証券会社による審査は、業績面だけではなく、経営管理体制の整備状況や開示書類の適正さについても細部にわたり確認していきます。

証券会社が会員として加盟している日本証券業協会が作成している「有価証券の引き受け等に関する規則」に、会員証券会社の引き受けにあたり審査体制、審査項目などが具体的に定められています。同「規則」では、新規公開会社の審査項目として以下の項目が挙げられています。

イ.公開適格性
ロ.企業経営の健全性及び独立性
ハ.事業継続体制
ニ.コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の状況
ホ.財政状態及び経営成績
ヘ.業績の見通し
ト.調達する資金の使途(売出しの場合は当該売出しの目的)
チ.企業内容等の適正な開示
リ.その他会員が必要と認める事項

主幹事証券会社は、上記規則、および各社の社内規則に従い審査を行いますが、特に、経営の健全性や内部管理体制に関しては、経営者や経営幹部社員だけではなく、監査役や内部監査担当者も審査の対象になります。監査役が自身の役割を十分理解し、監査業務がその会社の内容に応じ十分に機能しているかという観点から細かく審査をされることになります。

上記ニ.コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の状況に関しては、「規則」の細則において、監査役の監査業務に関する審査として具体的に、「監査役及び監査役会の責任遂行並びに内部監査機能(指名委員会等設置会社の場合には、取締役会、指名委員会、報酬委員会及び監査委員会の責任遂行並びに内部監査機能をいい、監査等委員会設置会社の場合には、監査等委員会の責任遂行及び内部監査機能をいう。)の状況」を審査すると定められています。
(続く)

<関連記事>
Ⅰ 上場審査と監査役
(2)証券取引所の審査の目的


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