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(2) 証券取引所の審査の目的
証券取引所は、株式の取引の場を提供することを通じて、株式を発行する会社の資金調達の環境を良好なものとし、資金を得た会社が事業拡大することで日本の経済全体が発展することに貢献しています。会社に資金調達の場を提供することが重要な使命です。証券取引所では、その果たすべき役割、使命を円滑、安定的に発揮するために、法令に加えて様々な規則を定めています。証券取引所は、投資者からの信頼を得て公正な市場を維持するために、取引参加者に関する規制のほか、上場する株式についても上場基準を設け、それに適合する会社の株式のみを上場させています。
証券取引所が定めた「有価証券上場規程」では、市場毎の形式要件と審査項目が定められています。スタンダード市場とプライム市場の審査に関しては、以下の事項が審査項目として挙げられています。
(1)企業の継続性及び収益性
(2)企業経営の健全性
(3)企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性
(4)企業内容の開示の適正性
(5)その他公益又は投資者保護の観点から当取引所が必要と認める事項
グロース市場の審査については、その市場の特性から上記(1)と(4)は、(1)企業内容、リスク情報等の開示の適切性、(4)事業計画の合理性となっており、企業業績の実績よりも今後の成長を示す事業計画の合理性とリスク情報を含めた開示の充実に重点が置かれています。
証券取引所による審査については、日本取引所グループの市場に上場申請する場合には、日本取引所自主規制法人の上場審査部が審査を行います。証券会社による審査と同様、審査担当者からの書面による質問事項への回答とヒアリングが実施されるほか、経営者、監査役、監査法人へは直接面談により職務内容と取り組み状況が確認されます。日本取引所グループが公表している「新規上場ガイドブック」によると、「監査役会(又は監査委員会、監査等委員会)及び独立役員については、そのコーポレート・ガバナンスにおける重要性に鑑み、常勤監査役等及び独立役員に対する面談などを通じて、その職務の内容と取組状況を確認します。」とされています。
監査役の職務執行状況に対する証券取引所の審査に関しては、提出する審査資料や質疑応答の方法、監査役面談等は、基本的に証券会社による審査と大きく変わることはありません。証券会社による審査が終了してから上場申請し証券取引所の審査を受けることになりますので、証券会社による審査のなかで指摘された事項があればそれらを改善したうえで、審査資料もアップデートして提出することになると思われます。次項に記載の監査役の業務に対する証券会社の審査手続きについては、証券取引所による審査手続きもほぼ同じと考えて差し支えないと思います。
(続く)
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Ⅰ 上場審査と監査役
(1)証券会社の審査の目的(続き)