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(監査役と会計監査人)
(監査役と会計監査人)
監査役会設置会社の場合、株主総会への会計監査人の選任の上程は監査役会の決議によります。その決議をするためには、監査役会として会計監査人を選任するにあたって会計監査人の監査が適切に行われているか、監査の品質が十分かどうかの評価をする必要があります。また、期末には監査役の監査報告書において、会計監査人の監査の方法及びその結果についての相当性を判断し記載する必要があります。このため、監査役と会計監査人との連携は不可欠となります。
IPOの準備段階で、まだ正式に会計監査人設置会社となっておらず、金商法に準じた監査契約を締結している場合であっても、会計監査人に協力してもらい、上場後のルーティンを見据えた連携の実績を残していくことが審査上の評価にもつながってきます。
具体的には、期初の段階において、監査役監査と会計監査人のそれぞれの監査計画を説明し、それぞれの重点監査項目を確認しあうことが考えられます。会計監査人から挙げられた重点監査項目は、最終的に、会計監査人の監査結果報告書に記載されることにもなりますので、重点項目の内容については、経営者とも擦り合わせをしておく必要があります。監査役監査では会計監査人監査が適切に実行されているかを確認する必要がありますので、会計監査人から品質管理システムに対する外部のレビューまたは検査の報告を受けるほか、監査スケジュールのなかで、監査役が会計監査人の監査に同行し棚卸立ち合いやシステム監査等の監査の状況を実際に見ることも有用だと思います。
そのほか、監査役と会計監査人との定期的な会合については、会計監査人による四半期レビューや期末監査時に、会計監査手続きの一環として監査役に対するヒアリングが行われるほか、四半期レビュー、期末監査終了時には、監査役あるいは監査役会に対して、結果報告が行われることになります。それぞれの場において、監査の結果や課題を共有していくことになります。
(参考)日本公認会計士協会 監査基準委員会報告260号「監査役等とのコミュニケーション」(2023年5月最終改正)
(監査役と内部監査)
内部監査部署との連携については、内部監査計画策定時から監査方針、監査対象部門、監査方法等を共有しておくことが必要です。上場審査上は、原則、上場申請までの間に会社の全部署を対象に一度は内部監査を実施し、内部監査上の改善指摘事項がある場合には、その改善状況のフォローアップを含めて全部署に対して内部監査が一巡していることが求められます。
監査役監査は法定の監査であり、監査の対象となるのが取締役の職務の執行であるのに対し、内部監査は会社のガバナンスの一環として設計された機能であり、会社の規模や業種によって様々な形態があり得ると思います。但し、上場準備の過程では、一般的には、社長直属の機関として他の部署とは独立した専任の担当者が配置され、会社全部署のオペレーションも含めた組織の運営状況を監査していくということであると思います。
常勤監査役は、社内にいる内部監査担当者とは日頃からコミュニケーションが取りやすいでしょうが、定例の会議を設定しておくことが望ましいと思います。内部監査結果の共有だけでなく、監査の過程であっても、積極的に情報共有し、場合によっては、内部監査に同行することも有効だと思います。内部監査の過程で、組織や取締役等に関する問題が発覚しても、内部監査担当者が立場上指摘をすることを困難に感じたり、躊躇する場合には、監査役から経営責任者や取締役に対して直言するという対応も可能だと思います。
監査役監査と内部監査は、密接に関係しているため、お互いに協力しあうことが大切です。内部監査活動が遠慮なくできるように、監査役がサポートしてあげることも常勤監査役の重要な役割です。
監査等委員会設置会社の場合には、法制上、監査等委員の監査活動において内部監査部門の活用が謳われていますので、具体的な指揮命令系統、連携状況を確立しておく必要があります。
(続く)
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Ⅰ 上場審査と監査役
(1)証券会社の審査の目的(続き)
(2)証券取引所の審査の目的
2.監査役の業務に関しては、具体的にどのようなことが審査されるのでしょうか?
(2) 提出資料/(3) 審査の内容、観点
③ 監査計画の作成
⑤ 監査役会(監査役協議会)の運営状況
7. 執行取締役への問題提起・提言の状況、その後の対応状況