【第75回】 「広報企画の練り方、作り方」を開催しました
2024年12月20日(金)、今年最後の研究会「広報企画の練り方、作り方」を開催しました。参加者は約30名で、テレビ局や新聞社、ラジオ局などから4名のメディアゲストもお越しいただき、学びのある充実した研究会となりました。
当日の会場
当日の会場は、大阪市北区にある株式会社サンプラテックさんにご提供いただきました。社屋は2021年のコロナ禍に建て直し、会場として使用したジョイントスペースは社内外とわずいろいろな人が使う場として作られたそうです。クリスマスデコレーションやBGMが流れていて、とても素敵な雰囲気でした。今回もオンラインとオフラインのハイブリッド開催でした。
中野BC株式会社:つい話したくなる話題作り 広報計画の練り方作り方
最初の発表者は、和歌山県で梅酒・梅果汁を製造・販売されている中野BC株式会社の広報担当・小川真生さんです。
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梅酒の初仕込みが6月なので、この時期に風物詩として話題を提供しているそうです。ただ、それだけだと一過性の情報で流れてしまうという課題もあり、「和歌山の酒蔵で梅づくしを体験しませんか」という企画を考案。普段見られない酒蔵や、プロ直伝の梅酒の作り方の情報を盛り込んで提供をしたところ、テレビ局に興味を持ってもらい、アナウンサーが酒造体験する様子が放映されました。さらに、このアナウンサーの方がラジオ番組も担当していて、こちらでも取材を受けるなど、幅広く注目を集めた事例だそうです。
社員との会話からネタを生み出す工夫
一から新しいネタを作るのは大変です。でも、社員との会話から意外な情報がネタになることも。
例えば:
1)阪神優勝時にパインアメサワーの売上増加→阪神の監督がパインアメをなめているという社員の話がヒント
2)梅シロップの売上増加→社員の情報から調べてみると、梅不作で自宅で梅シロップを作れなかった人が多かったことが判明
3)令和記念限定ラベル→記者さんの「令和記念に何かしますか?」という一言がきっかけ
このように、日頃から社内の情報を拾い上げ、既存のリリースに盛り込んでアレンジすることで、複数の媒体で掲載につながったそうです!
普段から情報が集まるように、社員と積極的にコミュニケーションを取ったり、メディア取材の予定を前もって伝えるなど工夫されている小川さん。一人広報でも、社内から情報を集めてしっかりネタ作りをされている姿が印象的でした!
株式会社Works Human Intelligence:BtoBの無形商材 お客様主語のストーリーでメディアに届ける
次の発表者は、大手企業や公共公益法人向けの総合人事システム「COMPANY」の開発・運営している株式会社Works Human Intelligenceの広報担当・斎藤七彩さんです。
サービスと広報の課題
「COMPANY」は入社から退職までの人事手続きや、はたらく人をサポートするシステムで、大手企業で広く利用されています。ただ、無形商材であることから、広報での認知拡大が難しいと感じているそうです。そこで、利用企業さんを主役とする企画作りをするべく、利用企業さんとともに「共同広報」を行っているとのこと。
事例1:食品会社さん
ただシステムを導入したというだけではニュースになりづらいです。そこで、創業から何十年と経つ企業がDXを経営戦略に位置づけておられ、これまでにどのようなDXを進めてきたのかをお話できるということでメディアに紹介。「COMPANY」を活用しての展望を語ってもらい、ビジネス系メディアで記事化されたそうです。
事例2:スポーツジムを運営する企業さん
その企業さんでは定年退職された方が再雇用制度を活用して新規事業を立ち上げました。そのきっかけは50歳以上の従業員対象の研修だったそう。この方のように、従業員一人ひとりが活躍できるよう「COMPANY」を使っていきたいという話を伺いました。
これに「COMPANY」を絡め、シニアの働き方やリスキングが注目される時流と合わせてメディアに紹介したところ、ビジネス系媒体で取材獲得。取材では今後の会社の目指す姿とともに「COMPANY」についても触れていただきました。記者が読者層の共感を得られる内容と感じた点も、取材につながったポイントだそうです。
まとめ
BtoBの無形サービスでは、「お客様主語」の事例紹介が読者やメディアに刺さりやすいと感じたとのこと。
一方、テレビや新聞などのマスメディアで社会性・時事性を絡めた広報をするには、また別の工夫が必要だと感じているそうです。
共同広報を進める際、斎藤さんは「まずはお話を聞かせてください!」と積極的に飛び込んでいくスタイル。その姿勢がとても印象的でした!
Zen Group株式会社:広報企画の練り方、作り方
最後の発表者は、越境ECに様々なソリューションをワンストップで提供しているZen Group株式会社の広報担当・鈴木未紗さんです。
事業と広報の課題
Zen Group株式会社は、日本の商品を世界175カ国に届ける越境EC支援を行っています。2025年は物流事業を本格展開する予定で、これが今後の成長の重要の柱となるそうです。一方で、物流メディアとのつながりがほとんどないことが課題で、メディアとの関係構築のためにも企画書を作成しての提案に取り組んでいるとのことでした。
ラジオ出演につなげる
物流メディアとの接点がない中、アプローチする媒体を探していた鈴木さん。物流メディアを読んでいると、物流業界関連企業が出演するラジオ番組を発見。番組でこれまで「世界に商品を届ける」という内容は扱われていないことを知り、ターゲットに決定しアプローチを仕掛けたそうです。
成果と学び
提案から1か月足らずで制作会社から連絡があり、代表がラジオに出演!2024年2月には2週にわたって2回放送され、新サービスや越境EC業界の課題、今後の展望について詳しく話す機会を得られたそうです。
広報で意識しているポイント
企画設計:独自性、ニュース性、ターゲット、タイムリー性を意識し、メディアや読者にとって価値のある企画を作ること。
ストーリー性:単なる事実ではなく、人間味やエピソードを取り入れることの大切さ。
提案方法:普段からメディアリサーチを行い、記者さんの関心やテーマに合わせた提案を心がけていること。
鈴木さんは、同業他社の掲載事例を参考にしつつ、新たな角度から提案をするというスタイルで広報活動を進めています。その柔軟な発想と積極性がとても印象的でした!
メディアゲスト企画~登壇者事例をメディア目線で分析・解説~
このコーナーではコメンテーターとして、株式会社毎日放送 報道情報局局長補佐・池﨑 光恭さんと関西広報100研究会代表・西山裕子さんが登場。発表者の事例をメディアの視点で鋭く分析してくださいました。
小川 真生さん/中野BC(株)の活動について
池﨑さん:「普段は見られない」というキーワードに注目。「記者にリリースが届いたとき、この言葉に引き込まれるのは間違いない」とコメントされました。また、成功事例と失敗事例を比較しながら、「採用されるかどうかは記者の好みや興味に左右される部分がある」との見解を示され、記者の属性や趣味を知る重要性について触れました。
斎藤 七彩さん/(株)Works Human Intelligenceの活動について
西山さん:「BtoBのメディア露出は難しい」としつつも、共同広報を積極的に行う点を評価。特に、採用された企業が有名であれば信頼性が高まり、さらに良い効果が期待できるとコメント。また、リリースにサービスの開発背景や導入企業のコメントを盛り込むことで、より魅力的になるとアドバイスされました。さらに、「統計情報を活用してリリースを作成するアイデアも面白い」と提案がありました。
鈴木 未紗さん/Zen Group(株)の活動について
池﨑さん:鈴木さんの「企画設計」「ストーリー性」「提案方法」のポイントを絶賛。「独自性や開発秘話を含むストーリー性、記者の趣味嗜好を狙った提案がしっかり抑えられている」と高く評価されました。
さらに、社長紹介シートについては「文字数を減らし、幼少期や留学時代などの写真をもっと充実させると良い」とのコメントが。メディア視点からの具体的な解説が盛りだくさんの内容で、参加者にとっても新たな発見が多いコーナーになりました。
【第二部】懇親会
第二部の懇親会の会場は、研究会会場の近くにある、野菜を中心としたビュッフェスタイルが魅力の「Dining cafe&bar GAGA」さん。ヘルシーでおいしいお料理が楽しめる素敵なお店でした!
懇親会では、「今年1年を振り返り、ベストネタのリリースタイトルを作成しよう」というテーマでプチイベントを開催しました。会場は大盛り上がりで、参加者同士の意外な一面が垣間見えたりして、とても和やかな雰囲気でした。
さらに、お店からのクリスマスソングの弾き語り演奏という粋なサービスもあり、会場はほっこりムードに。健康的でおいしいお料理とともに、心もお腹も満たされる時間を過ごしました!
学びと楽しさが詰まった素敵な忘年会となり、参加者の皆さんも大満足の様子。運営メンバーの皆さん、そしてご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました!
次回の研究会は2025年3月3日(月)16:00~18:30に開催いたします。どうぞお楽しみに!