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入試は1回でいいのだ

今週は大阪府立高校入試選抜期間なので、在校生は学校へ来て部活動することは禁止です。
 外部部活動指導員としては普段にも増してヒマになる1週間です。

 現場の教員にとっては、入試願書受付、会場準備、監督業務、採点業務、発表の準備、合格者説明会の準備 と気の抜けない仕事が続く10日間です。本当にご苦労様です。

 大阪府立高校の入学選抜試験は、その時期の知事や教育委員会の「思いつき」としか表現できないような小手先の「改革」を積み重ね積み重ね、その都度の反省もなくひたすら愚策を上塗りしてきました。

 私はもう2年前に現職を引退した身ですから気楽なもんですが、現職教員のころ、教員としての年間の業務の中で、何の仕事が一番やりがいが感じられなかったかと問われると、、やっぱり「入試業務」がダントツですな。

 コロナ禍の時は「トイレ消毒作業」なんてのも教師の業務として追加されたことがありましたが、あれはあれで期間限定だとわかってたし、「生徒のためだ」と思えばそれなりに頑張れましたよ。

 でも「入試業務」はストレスでしかなかったです。

 一般の人は「入試」というと試験当日だけをイメージされるでしょうが、現場教員にとっては1週間くらい閉塞的な環境での業務が続きます。
 「入試業務はやりがいあるから大好き」という教員を私は知りません。
 
 10年ほど前、当時の橋下府知事が「チャンスは2回あったほうがいい」とか急に言いだして、前期後期2回入試が導入された時は、そりゃあ現場は地獄絵図でしたな。

 前期入試> 国数英の3教科、 2月中旬に学力試験  定員の2割募集
 後期入試> 国数英理社の5教科、3月中旬に学力試験 定員の8割募集

 これだと、前期入試をパスする理由は全くないわけですから、受験生は第1志望の高校の前期入試に願書を出します。
 結果、私の当時の勤務校(1学年400人)では、前期定員80名募集に600名くらいが受験して、現場は大混乱であった。
 まだ2月だから3学期の授業をやりながら入試業務も並行してやるわけで、おまけに私立大学の一般入試もたけなわの頃だからね。
 「入試業務はミスの無いように集中して取り組め」というお達しがあるから、在校生がほったらかしにされてしまいます。部活動も休止になってしまいますし。

 それで、前期入試の受験生の大半が不合格になりますわね。そしたらどうなったでしょうか。
 前期不合格になった受験生の大半が、私学に乗り換えるか、後期入試では偏差値ランクが一つ落ちる高校に願書を出すわけです。「不合格」という事実に直面して自信喪失するわけですよ。

 結果、多くの高校で「入学者のうち、不本意入学の生徒の割合が大きい」ということになりました。
 教師にとっては入学後の1学年の指導がすごくやりにくくなりました。
前期合格の生徒群と後期合格の生徒群との気質の違い、モチベーションの違いみたいなのが顕著でしたね。

 悪夢の前期後期入試制度は3年で実質的に廃止になりました。その失敗の責任を誰がとるわけでもなく時は流れ、今また「入試の実施時期や教科数の検討」をするらしい。
 働き方改革を言うなら、入試をセンターが統括して完全マークシート方式で実施しなさい。万博に予算つぎこむよりも、こっちが優先。

 どこかの県で今年から前期後期2回入試がはじまるそうです。大阪府の失敗事例をちゃんと研究した方がいいですよ。現場の教員にとっては百害あって一利なしでございます。

 


 

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