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太陽が呉れた季節?太陽が暮れた季節?

大阪府高校軽音楽部連盟の年間スケジュール(公式演奏会)のなかに、「昭和ヒットコンサート」というものがあります。

 「温故知新」というキーワードで、今の高校生に昭和時代の楽曲を知るきっかけにしてもらいたい、という狙いがあって、私が初代連盟長だった頃から30年近くも途切れずに続けられている企画です。

 今回は1月10日、11日の2日間にわたって、大阪放送芸術専門学校のホールにて実施され、多くの高校のバンドが参加しました。

 普段から部活動のメニューのなかで昭和楽曲演奏を取り入れているA高校軽音楽部としては当然、参加申し込みをしました。
 
今回は11月の地域の訪問コンサートで好評だった「冬の稲妻(アリス)」と「太陽がくれた季節(青い三角定規)」の2曲(2バンド)で出演させていただきました。

「太陽がくれた季節」は昭和47年のヒット曲で、「飛び出せ!青春」というテレビドラマの主題歌です。

 中学1年の時、音楽室にクラシックギターが何本か置いてあって、授業の前に陸上部の矢野君という、かっこいい奴がギターを手に取って、この曲をジャカジャカ弾きだしたのです。

 するとだな、たちまち女子たちが彼を囲んで「君はー何をいーまーみつーめているの」って一緒に歌いだすわけです。

「おお、ギターが弾けるとこんな風に女子に囲まれるんだ!」と、サル少年は衝撃を受け、フォークギターという楽器に俄然、興味を持ったのでした。

 つまり、「太陽がくれた季節」という曲は、私が自発的に音楽演奏に関わりだしたモチベーションの原点なのです。

 もちろん、それまでにクラシックピアノを6年間習わされておりましたが、それはもういやいややらされていた事で、楽しいと思ったことは一度もなかったんです。
 だって、ソナチネとかピアノで弾けても、女子たちは寄ってこないですもん。

 「飛び出せ!青春」というドラマは、毎週日曜日午後8時からの放映だったから(当時はビデオ録画しておくという概念は存在しません)、NHKの大河ドラマを両親が当然のごとく観る習慣の我が家では視聴不能でした。

 だからドラマの内容自体はそれほど記憶にはないのですが、月刊明星とか月刊平凡といった芸能雑誌では毎月大きく取り上げられておったので、なんとなく知っていました。

 サッカー部という部活動を通して、道をはずれた生き方をしていた若者たちが熱血教師の鉄拳制裁だらけの指導の下で成長していく、といったものです。そりゃあもう、令和時代ではありえないシーンの連続です。

 CS放送で探したら、今でも再放送で観ることができるのでしょうけど、突っ込みどころだらけでしょうね。

 軽音楽部女子5人の編成(ボーカル、ギター、ドラム、ベース、キーボード)による「太陽がくれた季節」ライブ演奏を鑑賞して、時空を超えた感覚に酔いしれたのでした。

軽音楽部の女子部員5人がロック調のアレンジで「太陽がくれた季節」を演奏してくれました。
令和の高校生にとっては、昭和楽曲は古臭い、というよりも逆に新鮮なようです。

 ところで、自分がフォークギターにのめりこむきっかけになったこの曲、当時は歌詞の意味なんて掘り下げて考えてなかったですが、サビの箇所で「青春はー太陽がーくれたきーせーつー」というフレーズが出てきます。

 自分の心のなかでは勝手に「太陽がくれた季節」を「太陽が暮れた季節」だと、最近まで思い込んでおりました。

 しかし、冷静に考えてみると「太陽が暮れた」ということはこれから暗い夜がやってくるわけで、それだと年金生活が始まる晩年の比喩になるのではないか。

 ああそうか、これは「太陽が(私たちに)呉れた季節」という意味なのか。

 50年近くが経過して初めて気づきました。がーん!

 いや、でもですね。言い訳させてください。

 この手の青春ドラマの各話のエンディングは必ずと言っていいほど、海岸の砂浜で教師と生徒の殴り合いシーンがあって、その後急に和解して、一緒に水平線に暮れていく太陽を眺めるんです。

 テレビ画面にはオレンジ色の夕日のアップが映し出されます。

 だから「青春というものは、太陽が暮れていく夕方の時間帯にいろんな出来事が発生するんだな」とサル中学生が刷り込まれても、それは仕方ないのではないでしょうか。

 当時、クラスの中で「太陽が暮れた季節」なのか「太陽が呉れた季節」なのか、どっちの意味が正解なんだ、という話題は出なかったと思うので、
たぶん私だけが勝手に誤解していただけなのでしょう。

 漢字の読み方なんかでも、大人になるまで間違った読み方で覚えていて、ある時誰かから指摘を受けて恥ずかしい思いをする、といったことは誰でも一度は経験があるのではないでしょうか。

 自分はそういうのはいっぱいあります。

社会人になるまで「出納(すいとう)」というのを「しゅつのう」と読んでいて、ある時すごく恥ずかしい思いをしましたし、「不審火」を「ふしんか」「ふしんか」と言ってたら同僚の国語の先生に「それは ふしんび よ」と正されてショックを受けたことがあります。

 今の時代は、気になったらスマホで即刻調べることができるので、本当にありがたいですね。

この話は恥を忍んでまた別の機会に書きます。

 

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