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高校軽音楽部の二刀流とは(2)
K高校軽音楽部の部員達に常々私が言っていることですが、
「君たちがやりたいのは、クラシック音楽じゃなくてロックバンドなんだから、見様見真似の自己流で大丈夫。好きなように楽しくバンド練習したらいい。下手でも何でも、楽しかったらいいんだよ!」
エドワードバンヘイレンが例えば幼少のころにギタースクールに通わされていたとしたら、講師の先生から正しいギターの持ち方、正しい運指、正しいピッキングなどを教えてもらえる半面、遊びでライトハンド奏法なんてやったら、先生は「ちゃんと弾け!」と激怒して、闇に葬られてしまったのではないかな。
私は外部指導顧問ですから、平日の放課後だけA高校に出向きます。
その日の出席状況を確認してから、まずは部員全員で視聴覚室の3か所にアンサンブル練習場所を設営。設営は3か所ですが、10人ずつに分かれて一気に作業しますので5分程度で完了します。
そのあと各バンドの自由練習が始まります。
3つのバンドが同時に30分の持ち時間で好きなように練習をするわけですが、その間の私は、部員につきっきりで熱血アドバイスをする、なんてことはなく、ちょっと離れたところにすわって眺めているだけです。
練習しているバンドの様子だけじゃなくて、練習の待機時間の部員がどんな風に過ごしているかも観察してます。
スマホで好きなアーチストの動画を観てる者。
渡り廊下に出て、ベンチでギターを弾く者。
数学の追認課題をやってる者。
先輩のバンドの練習を観察している者。
ふざけあってる者。
バンド練習の待機時間帯をどう過ごすかは自由です。ただ、部活動の最後には機材片付けの作業を再び全員でやるので、自分のバンド練習が済んでも途中で勝手に帰宅することは認めていません。
バンドの練習の様子や、待機時間の部員個人の観察を続けているうちに、「お、彼は意外にリズム感があるんじゃないか」とか「彼女は鍵盤初心者だけど向上心が強いようだな」とか「彼女は性格的にちょっとルーズな部分があるから他のメンバーが苦労してるな」「〇〇君はギター上手だけど、よく欠席するな」
等、それぞれの部員の適性みたいなのがぼんやりと見えてきます。
それで、来るべき次なる対外活動のイベントに出す楽曲とそのメンバーをどうするか、をあれこれ考えてるわけです。この時が一番楽しいですね。
メンバー選定の基準なんですが、技術面だけじゃなくて、普段のクラブ活動への取り組みの様子、出席状況などを重視します。
いくら上手くても、しょっちゅう休む奴 はアウトです。
しかるべきタイミングで、部活動の最後のミーティングで楽曲とメンバーを顧問から発表します。
「冬休み明けに、昭和楽曲を披露するイベントがあるので、参加したいと思います。
曲はヘドバとダビデのナオミの夢。ツインボーカルはA君とBさん、ギターCさん、ベースD君、ドラムEさん、キーボードFさん。以上の人を推薦します。辞退するのもOKなので、その場合は早めに顧問に伝えてください。」
さて、期間限定とはいえ、メンバーは突然指名された部員の寄せ集めだし、演奏する楽曲は全く知らないし。
だから辞退する権利も与えています。
指導者としては、選曲とメンバー選定に関して責任ありますから、練習回数は多くは確保できないのですが、練習の際は付き添って、細かい部分までアドバイスを入れていきます。
オールディーズ楽曲のメンバーに選ばれることが「罰ゲーム」になってしまっているのならば悲しいですが、うちのクラブの部員達にとってはこれが一種のステータスになっているようです。
部員からしたら、部活動のメインである自由なバンド活動がある上で、そのほかに、「クラブ内で課外活動が存在する」、といった感覚なのでしょう。
これがK高校軽音楽部の二刀流路線。
もちろん絶対的正解ではないんですが、部活動の存続意義が問われている今の時代、35年現場で指導してきた私なりの回答です。