分譲マンションの嫌煙権行使について
マンションのような集合住宅では、壁ひとつ、床1枚で他人の領域と接しているため、そのことに由来するさまざまなトラブルが発生します。
喫煙マナーがどんどん厳しくなったこの30年ほどで、自分が所有するマンションであっても、それまでのように自由な喫煙が許される状況ではなくなりました。
分譲マンションは、原則として個人(個別の法人を含む)の所有物である専有部と、そのマンションに専有部を持っている人全員の共有物である共用部に分かれています。
制限はあるものの、専有部は基本的に所有者の権限でいろいろなことが決められるのに対して、共用部はそのマンションの権利者の合議制による決済を経なければいろいろなことを決めることができません。
喫煙に関して、路上でも自由にできた時代はマンション内のどこでも吸えましたが、路上喫煙が規制されると敷地内(私有地)での喫煙も制限されるようになり、いまではほとんど共用部での喫煙は許可されていないのではないかと思います。
では、所有者の判断でなんでも決められる専有部でだったら喫煙は許されるのかというと、そのあたりも怪しくなってきているのが現状です。
賃貸業をしていると、室内喫煙がいかに物件価値を毀損するかが身にしみるようになりますが、自分の持ち物であるマンションの部屋でも、同じような認識が広まっているようです。
しかし、喫煙者はたばこを吸いたいわけですから、いろいろと知恵を絞ります。
キッチンの換気扇の下で吸ったり、近所の喫煙所まで散歩に行ったり。。。
ベランダで一服、というのもよくありがちな選択肢でしょう。
ベランダは原則として専有部ではないものの、専有使用権が認められた場所になります。専有使用権とは、専有部を所有する人にその使用権限を与えるというもの。
だから、部屋のなかと同じように、自分の部屋のベランダでたばこを吸うのは自由でしょ? と思いがちなのです。
ところがこの専有使用権、専有部ほどなんでも部屋の所有者の勝手にはできないという制限付きの権利なのです。
嫌煙権の広がりから、副流煙への関心も高まり、べランタでの喫煙にも厳しい目か向けられています。
迷惑だと思う人がいれば、その行為が禁止される流れになるのは必定。
とはいえ、お隣さんが文句を言えば、すぐにベランダ喫煙は全面禁止、とはならないのも分譲マンションの合議制が発動する部分です。
こうした苦情はマンション管理会社からマンション管理組合に伝えられ、管理組合理事会で話し合いがもたれたうえで、禁止をするのであればその旨を反映した規約などで対応する必要があります。
規約を改定する場合は、管理組合総会に議案を上程して、決議されなければなりません。
ともあれ、かつては「蛍族」などと悲哀のこもった呼ばれ方をしていたベランダ喫煙ですが、趨勢としては消えゆく運命にあるといえるのでしょうね。