漢方のススメ②(気・血・水)
前回の漢方のススメ①で、お悩みの症状がどういった原因で起きているのか、どこでバランスを崩しているのかを見つけていくというお話をしました。
今回は気・血・水のお話しです。
東洋医学では、病院でのレントゲンや血液検査などによる数値などによる診断ではなく、症状の出方や体質などを問診し、「証(しょう)」を見極めていきます。
「証」とは、簡単に言うと個々の状態や症状の原因を探るための診断基準となります。
① 望診 顔色や目、舌、皮膚の色、体型や座り方、動作など見て確認
② 切診 お腹や脈に触れて確認したり、皮膚の状態、腫れなど触れて確認
③ 問診 自覚症状や既往歴、病歴や家族の健康状態、生活習慣など聞き取りをして確認
④ 聞診 声の大きさや話すスピード、呼吸の仕方、話し方の特徴などから確認
このほかにも、八綱弁証(8つの要素)で分析したり、気血水、陰陽など様々な分析方法で証を立てて見極めていきます。
「気・血・水」のどこが乱れているのかも上記の方法で探りますが、東洋医学では当たり前の表現でも、お客様に話すと「?」となる方の方が多いので簡単に説明します。
★気は、生命活動に重要な役割を持つエネルギー
気は目に見えないもので具体的にイメージするのは難しいのですが、東洋医学ではこの気は生命エネルギーそのものでとても重要な役割をもつと考えられています。
この世を構成するあらゆるもの、宇宙も人も、気で出来ていて、常に流れて動いています。
病は気から、というように、気というのは人の体にも大きく影響しています。
血や水も、気に大きく影響されるので、一番大事な要素といえます。
からだと心を切りはなして考えるのではなく、からだも心もひとつのものとして捉えます。
気が不足すると「気虚」といい、生命エネルギーが低下している状態になり、疲労を感じたり、無気力になったり、食欲も低下していきます。
気が停滞しているのは「気滞」といい、不足してはいないけれど、流れが滞ってしまっている状態です。のどの奥で何か詰まっている感覚がしたり、膨満感を感じたりします。
気の流れが逆流してしまう「気逆」という状態は、気の循環に支障があるため、下から突き上げてくるような不安感や、げっぷ、お腹の張りなどを感じたりします。
★血は、全身に栄養を運ぶ役割で、血液の循環やホルモンなどの内分泌系
血液自体をしめすものではなく、血の循環(血のめぐり)、全身に酸素と栄養の運搬、ホルモンの調節など血液の循環や働きによって出るものをあらわします。
血液は精神状態にも影響します。
血液が不足する「血虚」は、めまいや立ちくらみが起きやすく、顔色も青白く、生理周期も安定しません。疲れやすく、肌や髪もパサついたり、冷え性で風邪をひきやすく、精神的にも落ち着かず、不安感が強かったり動悸や息切れが起きることもあります。
血液は不足してはいないもののきちんと巡っておらず、体内で滞っている状態を「瘀血」といいます。流れが悪いために新陳代謝が悪くなり、肌もくすみが出たり、眼の下のクマが濃く出たりします。川の流れが滞ると、濁って汚れてしまうのと同じように血液の流れが悪くなると皮膚がどす黒くなりやすく、また紫の血管が浮き出てきたり、痣ができやすくなることも。精神的にもイライラしやすく、慢性的にどこか痛みを感じていたりします。
血液に熱がこもる「血熱」というのもあり、血管を破いて出血することもあります。どこか打ったわけでもないのにやたら鼻血が出る、便に血が混ざる、血尿がでる人もいます。
熱がこもって熱くなった血は、「瘀血」に繋がります。
★水は、血液以外の水分やリンパ液で全身を潤す役割
全身を潤してくれる水は、肺を経由して流れています。
血液以外の水をさします。
津(体の表面を潤し、各所の養分となるもの)と液(体の内部を潤し、脳や臓腑を満たし関節の動きをスムーズにするもの)の2つに分かれます。
体内の水分が不足した状態を「陰虚」といい、さまざまな部分が乾燥した状態になります。口やのどの渇き、おしっこの減少、さらに水分が不足すると体内の余計な熱をさげることができなくなるため、ほてりを感じたり、関節に痛みが出たり、夏は熱中症の危険が高まります。
体内の余分な水が停滞し、溜まった状態を「水毒」「痰湿」といい、水毒の場合は水の排泄、代謝が滞って溜まる状態で、特に下半身のむくみが出たり、冷えやだるさを感じたり、停滞した水分が鼻水や痰となって出たりします。関節や皮膚に出ることが多く、ひざが痛くなったり、まぶたが腫れぼったくなったりもすることも。
痰湿も余分な水分が溜まった状態ですが、胃腸を中心に溜まりやすく、食欲不振になったり胃もたれ、下痢、むくみ、めまい、吐き気など消化器や呼吸器系に症状が出ることが多いです。痰を出そうとして咳が出て胸が苦しくなったりすることも。
これらの気・血・水はおたがいに影響しあっていて、どれか1つでも崩れてしまうと他の2つにも影響を及ぼします。例えば気の乱れから始まった不調は、そのままにしておくとやがて血や水にも影響を及ぼし、連鎖反応を起こして全体的にバランスが崩れていきます。
程度の差はありますが、どれか1つだけを治そうとしてもあまり効果的ではなく、全体的に見て改善していくことが重要になってきます。
さて、どうしてこれらの「気・血・水」が乱れてしまうのでしょうか?
いろんな要素があっ乱れるのですが、原因は主に3つあります。
① 外因(環境によるものなど、外的な要因からくるもの)
② 内因(精神的ストレスなど、内からくる感情によるもの)
③ 不内外因(生活習慣によるもの、暴飲暴食や過労など)
外因は、気候の変化による六淫(風・寒・暑・湿・燥・火)があり、これらが過剰になると六淫の邪気となって悪影響を及ぼします。気候変動や自然環境、住環境など環境的な要因が原因のため、なかなかコントロールすることは難しいですが、暑さ寒さ、乾燥などの対策、皮膚を清潔にする、呼吸器系からの病原菌の侵入を防ぐなど、対応することは出来ます。
内因は、喜・怒・思・憂・悲・恐・驚といった七つの感情による「七情」が原因と考えられています。喜怒哀楽は人間として必要な感情ですが、あまりに過剰に反応してしまうと臓腑を傷つける原因になります。個人の感情や気質をコントロールすることもこれまた難しく、特に現代人はストレス環境に長期間さらされており、病気の原因となるほどの影響を受けてしまうことも少なくありません。
最後、不内外因ですが、外因や内因以外の原因のことで、生活習慣や食習慣、性に対する乱れ、その他は事故やケガなど外部的な損傷、先天的な体質や遺伝的要素も含まれますが、暴飲暴食など生活状況によるところがほとんどで、改善しようと思えばできる部分でもあります。
これらが主な要因となって、気・血・水のバランスが崩れてしまい、不調となってあらわれてきます。今はまだ検査しても病気ではない、と診断される状態でも、不調をそのまま放置して過ごしていけばいずれ病気となってしまう「未病」の状態です。
必ず不調の原因はありますので、それがどうして起きているのかを見つけて治療していくのが東洋医学の考え方です。
漢方の良いところは、数値的に異常が見つからなくても、病名がつかなくても、自覚的に症状があれば、それを治療の方向で漢方薬を処方することができますし、また、改善した後も予防効果として自分に合った漢方薬であれば安心して飲み続けることができます。
そして突発的に何か異変が起きた時も、こういう時にはこの漢方!というように、自分だけの組み合わせを覚えて、そんな時だけに飲む漢方薬を揃えておけば、休日でも夜中でもとても役に立ちます。
あくまで主体は、治そうとする自分自身のカラダ。
漢方薬はそれを最適に素早く、サポートして本来の状態に戻し、崩れかけても支えてまっすぐに保とうと働いてくれます。
慢性的な症状は少し時間がかかったとしても、自分の治そうとする力と、それをサポートする漢方薬の組み合わせで、必ず改善の方向へ向かっていきます。
たまにお電話で質問されることがありますが、お電話だけだと入ってくる情報が限られてしまうので、きちんと見極めるには到底足りてなく、不確かなことをお伝えするのは逆にお客様にとって不利益となるので、そのことをお伝えし、きちんとカウンセリングを受けられることをお勧めしています。
初回以降のお客様であれば、すでにいろんな情報をお聞きして分析できている状態ですので、何かあった時にお電話またはLINEなどで対応することは可能です。
ご理解していただけるとありがたいです。
ブログを読んで少しでも漢方に興味を持ってもらえたら嬉しいです!
応援してくださるとすごく励みになります。
皆さんの人生が少しでもより良いものになるよう、漢方の良さを発信していきます。