川上憲伸を観に行った少年の話。~初めてのプロ野球~
最近プロ野球が話題ですね。
いやずっと話題か。
僕は野球が好きです。
実際に野球を8年くらいやってました。
大体、大谷翔平がプロになってから現在に至るまでの年数に匹敵します。8年。
8年でメジャーのMVPにまで昇りつめたのか。凄いな、大谷さん。
もともとキャッチボールとかが好きだったんですけど
より一層野球が好きになるイベントがありました。
それはプロ野球観戦です。
あれは中毒性凄いです。
これは人生で初めてプロ野球を観に行った時の話です。
小学三年生の時、僕は中日ドラゴンズに恋をした。
ユニフォーム青いし、ドラゴンってかっこいいし。
そんなTHE KIDSな理由。
運がいいことに丁度落合監督が就任したあたり。
なんかめちゃくちゃ強くて応援し甲斐があった。
親からは反対された。
父親が巨人ファンなわけだから、一緒に巨人を応援してくれ。とか。
でも僕が中日を応援することに対して反対する一番の理由としては
「観戦しに行くのに名古屋まで行かなきゃいけないこと」
だった。
僕の地元は静岡県。(東部寄り)
県としては隣ではあるが
東京ドームとナゴヤドームでは
観戦しにいくのに時間もお金もダブルスコアかかる。
中日を応援してしまうと、巨人を応援するよりも
家計を2倍圧迫するのだ。
しかし。
僕の中日を応援する気持ちはもう止められなかった。
異常な勝率、ホームでもアウェーでもかっこいいユニフォーム。
そして何よりも川上憲伸という圧倒的カリスマエース。
僕は毎日のように新聞のスポーツ面にかじりつき
ニュース9のスポーツの時間になったら(21時50分頃)
テレビのチャンネル権を強奪していた。
上記3行だけ見れば到底小学3年生の日常とは思えない所業だ。
その熱心に中日を応援する姿に胸を打たれた両親はついに!!
僕をプロ野球観戦に連れて行くことを決意してくれた!!
父親は土日休みのサラリーマン。
行くとしたら土日開催の試合である。
しかし!!
それではダメなんだ!!
僕は川上憲伸が見たいんだ!!
川上は3連戦の初日に投げる。エースだから。
プロ野球の試合は火水木・金土日で3連戦が組まれる。
つまり川上は一年を通して火曜日か金曜日に投げるのだ。
父親が僕を観戦に連れていくという条件がある限り
僕が川上憲伸を拝むことができない。
僕と川上憲伸は・・・・
もとい!川上憲伸と僕の父親は太陽と月。
決して顔を合わせることができない関係なのだ。
僕は考えた。小さい脳みそを使って。(やかましいわ)
なんとしてでも川上を見たい!!
しかし、父親の定時から計算するに平日のナイターだとどの球場をセレクトしても試合に間に合わない。
何試合も見に行くことができたらここまで川上にこだわることはないが
1年で1回あるかないかの激熱イベントであるプロ野球観戦。
絶対に一番好きなピッチャーが投げているところを見たいのだ!!
どうすれば・・・
そして、天啓は降ってきた。
「お爺ちゃんに連れて行ってもらえばいいのか・・・」
私の祖父母は千葉県の東京寄りに居を構えている。
つまり祖父母の家に遊びに行き、祖父に同行してもらえば・・・
祖父は既に退職済み。孫が遊びに行くとなればいつだって予定をあけてくれる。
金曜に野球を観に行ける!!
祖父母の家からのアクセスも考えて球場は東京ドームに決定!!
そしてうまいこと夏休み中に東京ドームでの中日対巨人のカードが!!
いつの時代だって巨人戦の初戦にはエースを持ってくるのがセリーグを生きるものたちのセオリー。
チケットを購入し7月下旬の後半戦スタートの東京ドーム決戦を観に行くことが決まった。
もう天にも昇る気持ちだった。
私は前日に千葉入りを果たした。
祖母と一緒に画用紙を買って応援メッセージを書き込んだ。
「川上!!頑張って!!」的なことを書き込んだ。
3枚くらい買ったから野手の応援メッセージも書いた。
なぜならここまで来といてなんだけど
明日、川上が投げない可能性もあるのだ。
今みたいに予告先発がない時代。
奇をてらってデータの少ない若手投手が先発する可能性だってある。
川上が調子悪くて先発を見送る可能性もある。
小学三年生リスク管理能力をなめてはいけない。
川上が先発じゃなかったとき用に
スタメンがほぼ確定している野手の応援ボードも用意したのだ。
当時で言うと
井端、荒木、立浪、T.ウッズ、福留
泣く子も黙る黄金打線。
この5人に向かって応援ボードを描いた。
その横で祖母は頻りに
「ウッズはタイガー・ウッズのことか?」
「福留は福留功男のことか??」
と聞いてきた。
小学三年生の自分が気づくには余りにも難易度が高いボケだった。
かなり時間が経って福留功男の存在に気付いて祖母が笑いながらボケてきたことに気づいた。
いや、「ズームイン朝!のアナウンサーが巨人相手にクリーンアップ打たないだろ!!」とかツッコむ小学3年生、嫌だろ。
関西出身の祖父母からスパルタお笑い教育を受けてきたことに気づいたのは大学生になったあたりであった。
応援メッセージを描いたボードを握りしめて東京ドームに向かった。
席は下を見たら股間がヒュンッてなるくらい高い席。
内野席だった。
「ここまで飛ばして!福留!」と書いたボードは、ファールを求めるものになってしまっていた。
外野席の応援がとにかく怖かった。
大人の大合唱、ドーム内に響き渡る鳴り物。
小学3年生の僕はその迫力に「恐怖」を覚えていた。
程なくしてスタメンが発表された。
ピッチャーは・・・・
川上憲伸!!!!
きた!!
スポーツ面と睨めっこして川上のローテーションを研究した成果が出た!!
ドンピシャで川上の先発を読めた!!!嬉しかった!!
相手の先発は工藤公康。
まさかこの時から数年後も現役を続けるとはこの時思いもしなかった。
試合は川上と工藤の投げ合い。
試合の中盤に中日打線が工藤を攻略。
2点先制したリードを川上が守り抜く。
かっこいい・・・
あの時は表現のしようがなかった感情だったけど
今なら言える。
あの感情は「抱かれたい」ってやつだ。
プロ野球選手がモテるのは至極当然であると思い知らされた。
かっこよすぎる・・・
川上はマウンドを譲らなかった。
試合は終盤。
ここで川上から僕にとんでもないプレゼントが・・・・
なんと・・・
川上がホームランを打ったのだ。
もう泣いていたと思う。
興奮しすぎて。
大人たちの狂気じみた歓声に押し潰されそうになった。
9回完封。1ホームラン。
巨人相手に。
川上の人生でもきっとトップクラスに入る試合を見ることができた。
試合終わり駅を歩いていると
川上のユニフォームを着ている僕にサラリーマンが話しかけてきた。
「憲伸、ナイスピッチだったな」
って言いながら頭をポンポンしてくれた。
照れて顔は見れなかった。
なぜ照れたのだろう。自分自身のことを褒めてもらったわけでもないのに。
きっとあの時の感情もまた「抱かれたい」だったんだと思う。
抱かれすぎだろ、俺。
でも今こうやって書き起こしていても、あの時のお兄さんに川上を褒めてもらったことが本当に嬉しくて少し泣きそうになる。
あの日のことは今生きていても時々思い出すくらいにいい思い出だ。
連れて行ってくれた祖父には本当に感謝している。
川上、中日、東京ドーム。本当にありがとう。
プロ野球は。。。エンターテインメントはこんなにも人の心に残り続ける。
川上さんにこの記事が届くように。
今日もまた、がんばるぞ!!!